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戦後3番目の景気拡大を示す景気動向指数と実質賃金横ばいの毎月勤労統計をどう見るか?

本日、内閣府から2月の景気動向指数が、また、厚生労働省から1月の毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。

景気動向指数のうち、CI一致指数は前月比+0.4ポイント上昇の115.5を、CI先行指数は▲0.5ポイント下降の104.4を、それぞれ示し、他方、毎月勤労統計では、景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から+1.3%増を、また、現金給与指数のうちの所定内給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.2%の伸びを、それぞれ記録しています。

ただし、消費者物価が上昇局面に入っていますので、消費者物価でデフレートした実質賃金は横ばいとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の景気一致指数0.4ポイント上昇 3カ月ぶりプラス

内閣府が7日発表した2月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.4ポイント上昇の115.5と3カ月ぶりにプラスに転じた。生産指数(鉱工業)や耐久消費財出荷指数などが改善した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」で据え置いた。

前月から比較可能な7指標のうち、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数の3つがプラスに寄与した。生産指数(鉱工業)では北米向けの乗用車や国内電力向けの蒸気タービンなどが好調だった。投資財出荷指数(輸送機械を除く)や有効求人倍率(学卒を除く)など4つはマイナスに働いた。

数カ月先の景気を示す先行指数は0.5ポイント低下の104.4だった。下降は5カ月ぶり。新設住宅着工床面積などが悪化した。

景気循環について、内閣府は景気の拡大や後退を判断する景気動向指数研究会の開催は決めておらず「今のところ景気の山を判断するような状況ではない」との認識を示している。第2次安倍晋三政権発足の12年12月以降から17年3月まで景気回復局面が続いているとの判断になれば、バブル経済期を抜き戦後3番目の長さとなる見通しだ。
実質賃金、2月は前年同月比横ばい 毎月勤労統計

厚生労働省が7日発表した2月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べて横ばいだった。名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が上昇したことで実質的な賃金は変わらなかった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示している。

基本給や残業代など名目賃金にあたる現金給与総額は0.4%増の26万2869円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は0.2%増の23万9313円、残業代など所定外給与は0.6%増の1万9620円だった。ボーナスなど特別に支払われた給与は5.5%増と伸びた。
パートタイム労働者の時間当たり給与は2.1%増の1101円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、次の毎月勤労統計のグラフと同様、景気後退期を示しています。

景気動向指数のうちのCI一致指数は3か月振りの上昇とはいえ、昨年2016年10月に「足踏み」から「改善」に基調判断が1ノッチ上方改定されてから、2月指数まで据え置かれており、引用した記事にもある通り、現時点では景気の山を判定する必要はないことから、逆から見て、現在の安倍内閣発足から4年余り景気拡大が継続していることになり、戦後3番目の長期に渡る景気拡大局面ということになります。まあ、官庁エコノミストとしてはめでたいことではないかと受け止めています。

少し詳しくCI一致指数を見ると、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数がこの順でプラスに寄与しており、逆に、投資財出荷指数(除輸送機械)、有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(小売業)(前年同月比)がマイナスに寄与しています。企業部門が堅調な一方で、家計部門では、耐久消費財出荷がプラス寄与で、商業販売統計のうちの高地販売がマイナス寄与ですから、まだら模様というべき状態です。

後で少し詳しく見る毎月勤労統計でも、必ずしも賃金が増加しておらず、家計部門は一時の弱さは脱したものの、企業部門ほどの好調さではないと考えるべきです。また、CI先行指数が下降した点は、これも引用した記事にある通り、新設住宅着工床面積のマイナス寄与が大きく、1月統計で+0.54のプラス寄与があった反動で、2月統計では▲0.50のマイナス寄与となった影響が強く出ている気がします。それほど大きな懸念材料ではないと私は受け止めています。


次に、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

ということで、製造業の所定外労働時間は生産の堅調な増産に伴って、緩やかに伸びているのがグラフから見て取れます。賃金は名目上昇率をプロットしていますが、実質賃金は昨年2016年10月からほぼ横ばい状態となっており、消費者物価上昇率が今年2017年に入ってプラスに転じていますので、さらに大きな名目賃金の伸びがなければ消費を活性化させるには力不足の可能性があります。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。

現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、パートタイム雇用よりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると期待できます。



最後に、今月の統計発表では月次統計とともに昨年2016年冬季賞与の結果が特別集計されています。上のグラフの通りであり、調査産業の平均で2016年冬季賞与の平均は370,163円となり、前年比▲0.1%減を記録しています。

昨年から毎月勤労統計の賞与の統計結果については、多くのエコノミストから疑問が表明されたんですが、トピックを見る範囲では増加だったんではないか、と私は直観的に感じており、小幅ながらマイナスの統計にはやや疑問です。

なお、上のグラフの3枚目の一番下のパネルの産業別の前年比なんですが、実は、「鉱業,採石業等」では見ての通り、グラフを突き抜けて+57.9%増を記録していますので付け加えておきます。

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