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開業医の月収231万円 国立病院勤務医の2.3倍に

11月2日の時事通信は、標記の見出しで、厚生労働省による今年度の医療経済実態調査の結果を報じた。

このご時世に、月収231万円とは、世間の注目を集めるには十分な数字だ。

だが、弁護士たるもの、こういった報道を、眉につば付けずに聞いてはいけない。この種の報道には、必ずと言っていいほど、誰かによる何かの目的がある。以前、「登録5年目弁護士の平均年収2000万円」と報じられたとき、アンケートの回答率が低くて信用できないとか、それは所得じゃなくて収入だろうとか、平均はそうでも中央値ではないだろう、とか騒ぎ立てた弁護士が、医師の収入に関する報道を鵜呑みにしてコメントするのは、不公平に思える。

神戸のしがない開業医」さんによれば、医療経済実態調査は「医師の間では実態を表していない実態調査として有名」だそうで、原典である機能別集計等の117頁以下にあたってみたところ、「国立大学勤務医」の平均月収データは直ちに発見できたが、開業医(個人経営の診療所)とあるのは、実は「医療法人の院長」の月収であり、この「医療法人」というのは、全国で約10万箇所ある診療所の約4割にあたり、その9割以上が「一人医療法人」であって、その収益は非医療法人と大差ないはずであるにもかかわらず、統計上約2倍の収益を上げているのは、ごく一部の「スーパー勝ち組」が平均収益を引き上げていると推測されるから、その「院長の平均月収が231万円」と言ったところで、実態を反映しているとはとてもいえない、とのことである。

「神戸のしがない開業医」さんの分析が当たっているのか否か、私には分からない。だが、報道が「開業医」を「個人経営の診療所」と記載したにもかかわらず、その実「医療法人の院長」であることは確からしいし、そうであるとすれば、報道の信憑性は相当疑われるべきだろう。

それでは、このニュースに現れた「誰かによる何かの目的」とは何か。11月2日の日本経済新聞によれば、厚労省は、2010年度の診療報酬改定で改定率を10年ぶりにプラスにして、「勤務医の待遇改善」を図ったところ、確かに勤務医の収入はアップしたが、開業医はそれ以上にアップしたため、格差が拡大したという。

この報道からすれば、厚労省の意図は明らかだ。それは、勤務医の比率を高めたいということにある。その背景には、地方の医師不足・あるいは医師偏在問題があるのだろう。医師に限ったことではないが、一度開業してしまうと、店をたたんで移動することは、困難だからだ。

勤務医の比率を高め、流動性を増して偏在を低減するという政策に、一定の合理性があることは否定できない。だが、その政策のために、痛くもない腹を探られる開業医は気の毒だし、毎度のことながら、国民の嫉妬心に訴えて政策遂行を図る政府のやり方は腹立たしい。朝霞公務員住宅問題でやられたお返しかもしれないが、そうだとすれば、レベルの低いお話である。

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