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東芝、西田元社長直撃「WH買収は最適な判断。問題はマネジメントだ」 ~東芝の原発推進は「国策」だったのか~ - 大西 康之

 4月11日に控える四半期決算発表の3度目の延期もささやかれ、上場廃止、そして法的整理の可能性もでてきた東芝。

 1兆円を超える損失を計上し、危機の元凶となった海外原発事業の泥沼に同社がはまり込む過程で、何が起きていたのか。取材を進めると、二人の人物の存在が浮び上がった。

 元東芝電力システム社主席首監の田窪昭寛氏と、安倍晋三首相秘書官の今井尚哉氏だ。田窪氏は、当時原発事業担当役員だった佐々木則夫元東芝社長の右腕として、2006年の米ウエスチングハウス(WH)買収を取り仕切った人物。彼は2011年から12 年にかけて、当時経済産業省のエネルギー庁次長だった今井氏と、年に約30回も会っていた。

 詳しくは4月6日発売の週刊文春の拙稿「東芝〝原発大暴走〟を後押しした安倍首相秘書官 今井尚哉」をお読みいただきたいが、東芝の原発推進の舞台裏について、渦中の人物が口を開いた。

 佐々木氏の前、ウエスチングハウス買収時に社長を勤めた西田厚聡氏である。

西田元社長 ©getty

 3月30日の夜、横浜市にある西田氏の自宅を訪ねると、西田氏はインターホン越しに30分近くインタビューに応じた。 

会長になってからは会っていません

――ジャーナリストの大西と申します。会長いらっしゃいますか?

 私ですが。

――東芝の原発事業のことをいろいろ調べていまして、その中で田窪昭寛さんという人物に行きあたりまして。田窪さんと当時エネルギー庁次長だった今井尚哉さんの関係について調べております。

 田窪っていうのは東芝にいた田窪ですか? 僕は彼とはそんなに仕事したこともないから、それは知ってはいますけどね。何も言えませんよ(苦笑)。

――田窪さんが今井さんの意を受けて原発輸出という「国策」でかなり暴走したのではないかと言われています。そこに西田さんの後任社長である佐々木則夫さんが乗っかって、どんどん海外原発事業をエスカレートさせていったのではないかと。

 僕はね、申し訳ないですけど、会長になってからそんなに田窪には会ってませんから。彼が直接報告に来ることも何もありませんし。

――田窪さんと今井さんは2011年から2012年に、年間約30回という異常な頻度で会っています。安倍政権が産業政策として「原発輸出」を掲げた時期です。

 すいません、何もお力になれません(苦笑)。

GEは商務省に助けてもらっていた

――経産省と東芝の関係というのは、例えば06年にウエスチングハウスを買うとき、経産省からかなり強い後押しがあったと言われています。

 後押ししてもらったわけじゃないでしょ。何にも。

――ただ、国策として原発推進はしたい、という中で、東芝に核になってほしい、と。

 それはあったかもしれませんけど。アメリカのGEもウエスチングハウスを買いたくて、GEはずいぶん商務省に助けてもらっていたんですよね。商務大臣から向こうの産業貿易大臣(発言ママ)あたりに「GEをよろしく頼む」みたいな手紙も出してもらっていたんです。

 だけども、日本側は、東芝は経産省から何かやってもらったわけでもないですからね。

被害を被ったのは東芝

2006年、ウエスチングハウス買収時に満面の笑みを見せる西田氏 ©getty

――むしろ経産省の側から東芝に「頑張れ」みたいなことは?

 そのときに(ウエスチングハウス争奪戦に)入っていたのは東芝だけではなく、三菱重工もいたわけですから。東芝だけに頑張れ、とか何とかは…。

 ただ東芝は、2回目の入札で勝ったんですよ。国際商慣習では、1回目は参加者を振り落とすのが目的で、2回目というのが正式なんですよ。そこでうちは勝った。その時の値段は2700億円。

 非常に喜んで我々もね、それはもう「経産省にも伝えろ」と。それで伝えさせたことはありますよね。「良かったね」とみんなで喜んで。

 そしたら翌日に(ウエスチングハウスから)電話がかかってきて「日本の三菱重工が思い切った高い価格を出したい、と言っているから、3回目(の入札)をやりたい」と。

 でも、国際商慣習から言ったら、うちは勝ったんだから。やりたくないよ、と。何度もそう言ったにもかかわらず、重工からの押しが強くて3回目になってしまった。それで54億ドル(当時の為替レートで約6600億円)ですよ。

 重工は後に「高い価格で東芝が買った」と、西岡(喬元会長)さんが言っていましたよね。それで経産省に「あれ、やめさせてくれ」とお願いしました。事実じゃないんだから。つまり、値段を上げたのは重工なんですよ。被害(損害)を被ったのは東芝。

 それを、東芝がポンと値段をつり上げたかのごとく、6カ月くらいにわたって(西岡氏は)言い続けたんですよ。あまりにも酷いんでね(経産省に言った)。

 まぁそういうことはありましたけど、別に経産省と特に何かあったわけではありません。

 僕の知らないところであったかもしれませんが。せっかく来ていただいたのに申し訳ない。

僕はよく分からない

――佐々木さんは経産省に非常に近かった。今井さんとか柳瀬さん(唯夫元原子力政策課長)とか経産省の原発推進派と。その間を行ったり来たりしていたのが田窪さんですよね。

 そうなの?

――田窪さん、今井さんに近いところでは、アラブのコンサルタントで、オマール・カンディール氏という人物がおりまして。

 知らない。

――この人が海外からいろんな案件を持ってくる。今井さん、田窪さんのラインが「これは国策だ」と言うと、東芝の中では反対できなくなって、採算度外視でどんどん投資する。そういうことが繰り返されていたようです。

 知りません。せっかく来ていただいたのに僕はよく分からない。

副社長が「やりたい」と言った

――佐々木さんの原子力事業に対するガバナンスというか、佐々木さんは原子力事業をグリップできていたのでしょうか。

 原子力を、ウエスチングハウスを買うときは佐々木の意見というより庭野(征夫元副社長)がいましたから。庭野とよくやっていたので、佐々木とやっていたわけではないですよ。

――庭野さんが「ウエスチングハウスはやる(買う)べきだ」と進言された?

 庭野は「やりたい」と言っていましたね。「是非やりたい、やったほうがいい」ということで。

 事業計画なんかも作って来たけど、12、3年くらいの計画だったんですよ。僕は「これじゃ判断できない」と。2050年までの計画を作らせた。

 そこまで長期だと、精度は落ちますよ。でもうちが買わなかったとき、日本の別の会社が買ったとき、あるいはアメリカの会社が買ったときで、いろいろと事情は違ってくる。それを45年、50年の単位で考えろと。

 もともと息の長い話で、2年~3年で判断する事業じゃなくて、20年~30年というタイムスパンで判断する事業だから。短い事業計画で判断できない。

 それで僕は「これだとウエスチングハウスを買収しないことには、原発事業は継続できない」と判断した。その頃は残念ながら福島(第一原発の事故)も予測できなかったので。

――(東芝が手がけていた)BWR(沸騰水型原子炉)だけでは厳しいと。

 厳しいと。ウエスチングハウスを買わないと海外展開はできないな、と。というので、まぁ先頭に立って動いたと。

綱川社長は何も知らない

――なるほど。

 だけど今の東芝の社長(綱川智氏)は「問題がある判断だったんじゃないか」と言っている。そうじゃなくて、こういうことにしてしまったというのは自分たちの経営能力の問題ですからね。

 経営判断力もずいぶんなくなっていますし、経営能力は著しく落ちているわけです。(買った後に)マネージできなかった。そこが問題で、買ったことが正しいのかどうかというのは、20年か30年経たないと分からない。長期的に見ないといけない事業だから。

 僕は最適な判断につとめたし、そうしたつもりです。後は(その後の経営者に)その経営をやっていくだけのマネジメント能力があるかどうかですよね。今の(綱川)社長はウエスチングハウスなんて行ったこともないだろうし、何も知らない。

 僕は原子力のことを結構勉強したんですよ。本も読んだし実際の現場にも何度もでかけたし、技術の勉強もずいぶんとしましたよ。それですべてが分かったわけではないですけど、結構努力をしたつもりです。その中で最適な判断を出したつもり。こういうことになってしまったのは、マネジメント能力の問題があるから、残念です。

左が西田氏。西田氏の後「マネジメント」した佐々木氏(右)、田中氏(中央)。©getty

マネジネント能力の問題

――西田さんの後任の佐々木さんは、原子力の専門ですが、にもかかわらずマネジメントができなかったと。

 技術的に分かっているとかね、彼はもともと配管をやってきた男だから、実際の原子力の主流派ではないです。まぁ技術は分かっていたかもしれないが、それとマネジメント能力は必ずしもイコールではない。事業を知ってれば事業を経営する能力があるかというと、そうじゃない人のほうが多くて。その問題が大きい。

 一概に買収が正しかったかどうかだけで片付けようとすると、日本のほかの企業にとっても学ぶことが何もなくなっちゃう。新聞なんかの論調は「買収が正しかったかどうか」というだけで。

――肝心なのはその後のマネジメントだと。

(マスコミは)経営というのが分からないものだから、結局そういうふうに話を持って行ってしまう。それだとやっぱり進歩がないですよね。そこはしっかり書いて下さいよ。

佐々木氏は間違っている

――佐々木さんの社長時代を見ていると「お国に褒められたい」みたいなところがありましたね。経済財政諮問会議の民間議員にもなっていますし。

 それは間違っていますよね。

――政治家や官僚の顔色を見て仕事をしてはダメだと。

 私はそんなつもりはないですから。官僚に対してもへーこらしないから、ズケズケと言うほうだったから。

――佐々木さんはむしろ非常に官僚の言うことを聞いた。

 それはいけないですよ。

 西田氏は最後にそう語り、インタビューは終った。

 繰り返すが、西田氏はウエスチングハウス買収時の社長であり、不正会計処理の問題で東芝に訴えられている当事者でもある。

 しかし、「買収は当時の適切な判断で、問題はマネジメントの能力の欠如だった――」。西田氏の主張は清清しいほど一貫していた。

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