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「カミングアウトしても安全に働ける職場を」LGBTの就活を支援するNPO・ReBit代表 藥師実芳さんに聞く

3月1日の企業説明会解禁以降、徐々に本格化してきている2018年卒の就職活動。そんな中、一般の学生たちと同じように就職活動を進めることに難しさを感じている若者たちがいるのをご存じだろうか。

「約13人に1人がLGBTだと言われている世の中なのに、まだまだ就活でつらい思いをしているLGBTの学生たちがいます。ある学生は面接でトランスジェンダー(からだの性とこころの性が一致しない人)だと伝えたところ、その場で帰らされてしまったと言います」

そう話すのは、LGBTの就活を支援する特定非営利活動法人ReBit代表理事の藥師実芳さんだ。ReBitにはこうした相談が数多くの学生から寄せられているという。

ReBit代表理事・藥師実芳さん

「就活生の中に一定数LGBTがいるということを知って欲しい」

藥師さんは、企業が就活生の中にLGBTがいることを想定できていないと現在の採用活動の問題点を指摘する。

「企業にはまず、就活生の中にも一定数LGBTがいるということを知って欲しい。就活生は企業に対して立場が弱いので、セクシュアリティ(性のあり方)で困っていても相談しづらいという現状がある。会社説明会の資料に一行だけでもLGBTに対する取り組みを書いてもらえれば、それだけで事前に面接時の服装などの困りごとを相談出来るし、面接官もその場で驚かずに済むのではないでしょうか」

渋谷区など、行政の取り組みが企業にも好影響を与えている

一方で、LGBTの人が働きやすくなるために工夫をこらす企業もある。きっかけのひとつは、2015年10月に制定された渋谷区や世田谷区の同性パートナーへの取り組みだ。藥師さんは「社員向けの福利厚生の対象として、行政が認めた同性パートナーへの対応が議論にあがり、同性パートナーを家族として福利厚生に認める企業も増え、LGBTも働きやすくなってきている」と、企業の取り組みを評価する。また、オリンピック憲章に性的指向(だれを好きになるか)による差別禁止の文言が入ったことも、2020年に向けて取り組みの大きな要因になっているという。

今年1月には厚生労働省がセクハラ指針を改正し、LGBTに関する性的言動もセクハラと認め同指針の対象となることが明記された。ReBitにも、管理職や人事系の社員向けにLGBTについて知るための研修を行って欲しいという企業からの依頼が増えているそうだ。

自殺未遂、カミングアウト…「違いを持った子どもたちを支援したい」

藥師さんは1989年生まれの27歳。自身もトランスジェンダーとして生きづらさを感じた経験を持つ当事者だ。女性の体を持って生まれたが、子供の頃から自分のことを男性だと感じていた彼は、「女の子」として扱われることに抵抗を感じていたという。

藥師さんは自身の子供時代を振り返り「小6のときにドラマ『金八先生』で性同一性障害という言葉を知り、これだ!と思ったんです。ところが当時のネットには、"ホルモン剤を投与したら30歳で死んでしまう""日本は差別がひどいから働けない"など、嘘の情報ばかりが出回っていました」と話す。誤った情報に触れたことで、藥師さんは男性としての自分を隠して生きるようになった。

「中学、高校と女性として振舞ううちに、外向けの自分と本当の自分がどんどん乖離してきて、このままでは生きていけないんじゃないかと毎晩家で泣いていました」その後、高校2年生で自殺未遂を経験し、藥師さんは自身がトランスジェンダーであることを周囲にカミングアウトした。その際、友人の「藥師は藥師だからいいじゃん」という言葉に救われ、以降はトランスジェンダーであることを周囲に伝え生きることを決意した。

藥師さんが代表理事を務める特定非営利活動法人ReBitでは、約350人のメンバーが活動している。

藥師さんは大学在学中、「中学や高校の頃に、周りの大人に"誰かと違っても、自分のままで大人になれる"と言って欲しかった」という自身の経験を元に、LGBTの子ども達を支援するためのNPO・ReBitを立ち上げた。現在ReBitでは「違いを持った子どもたちがありのままで大人になれる社会になってほしい」という思いを持つメンバーが約350人活動している。

進まない職場でのカミングアウト その理由は

日本の人口の7.6%、「約13人に1人がLGBT」(※1)という割に、周囲に1人も該当する同僚がいないと不思議に思う読者も多いのではないだろうか。その理由のひとつに、職場でのカミングアウト率の低さがある。

「ある調査では、職場の上司・同僚・部下等が、レズビアンやゲイ、バイセクシュアルであった場、『嫌だ(計)』と答えた人は35%(※2)でした。そういった現状のなか、カミングアウトしない、できないという人は少なくありません。同僚にカミングアウトしている人はLGBT全体のわずか4.8%(※3)というデータもあります」

同僚へのカミングアウトにはまだまだ障壁が多い。

職場でのカミングアウトを妨げているのはそれだけではない。飲み会で同性愛者を笑いのネタにしたり、社員全員が異性愛者だと決めつけられているような環境では、カミングアウトは難しい。裏を返せば、「女性を紹介しようか」「もっと男らしくしろ」などという発言を控え、性別による”らしさ”の規定をしないことでLGBTの社員も働きやすくなるということだろう。藥師さんは「上司や人事の方がLGBTを知っているとか、研修を受けたということを言ってもらえるだけで、困りごとがあったときに相談しやすくなる」という。

話を聞いていく中で、LGBT全員がカミングアウトする必要があるのかという疑問が湧いた。失礼を承知で質問すると、藥師さんはつぎのように話してくれた。

「理想を言えば、カミングアウトをせずとも安心して暮らせる社会になってほしい。自分からLGBTだと言わなければ存在が想定されないのではなく、当たり前にいるものとして、人間関係や制度が作られていくほうがいい。マイノリティでもマジョリティでも、職場の中で言わないことは沢山ある。セクシュアリティ(性のあり方)を言わなくても安心して働ける職場が増えることが理想だと思います。そういった社会に向かう第一歩として、カミングアウトしても安全に働ける職場を目指すべきではないでしょうか」

※1:電通ダイバーシティ・ラボ LGBT調査(2015年4月)より
※2:日本労働組合総連合会 LGBTに関する職場の意識調査より
※3:電通ダイバーシティ・ラボ LGBT調査(2015年4月)より

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