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スマホ時代到来から10年、2強が迎える「天王山」

 今年は「スマートフォン戦争」にとって重要な年になりつつある。

 戦いの火ぶたを切ったのは韓国のサムスン電子。同社は先週、旗艦シリーズの最新モデル「ギャラクシーS8」を発表、今のところ評判は上々だ。約半年後には米アップルが「iPhone(アイフォーン)」の10周年記念モデルを発売するとみられる。アナリストの予想では、ここ数年で最も革新的なスマホになりそうだ。

 ところがスマホ業界はかつての勢いを失っている。ここ数年、メーカーはユーザーを驚かせるような新機能の開発に苦戦しており、消費者は同じ端末をこれまでより長く使うようになった。世界的に販売台数の伸びは鈍り、ほとんどのユーザーはなじみのあるブランドから離れなくなっている。つまり、アップルやサムスンなどのスマホメーカーはブランドにこだわらない比較的少数の消費者を奪い合っているという構図だ。

 ジャックダウ・リサーチのテクノロジーアナリスト、ジャン・ドーソン氏は「新規の顧客が少なくなり、メーカーはなんとかして既存の顧客に端末を買い替えてもらわなければならなくなっている」と指摘する。

またとない好機到来


 ただ今年はいくつかの要因から、他社から消費者を奪う――逆に失うこともあるが――またとない好機がもたらされつつある。

 サムスンはギャラクシーS8で昨年の「ギャラクシーノート7」バッテリー発火問題からの復活を果たそうとしている。この問題で同社は50億ドル(約5570億円)の費用をかけて300万台の端末を回収、消費者の信頼は損なわれた。サムスンの広報担当者は「ギャラクシーS8は安全対策を見直すことで消費者の信頼回復に取り組んだ証し。当社のスマホの歴史における新たな節目になる」と述べた。



 アップルもスランプを抜け出しつつある。2月には株価が2年ぶりの高値を付けた。昨年発売の「iPhone 7」が前モデルのマイナーチェンジにすぎなかったという批判も乗り越えようとしている。アナリストらはiPhoneの10周年モデルに重要な新機能が搭載されるとみている。予想価格は1000ドルと異例の高さで、そこにはリスクも伴う。サムスンのギャラクシーS8は約750ドルで販売される予定で、大きいサイズはそれより100ドル高い。

 アップルは次期iPhoneに関する臆測についてコメントを差し控えた。

 「今年は乗り換えがいつになく多い年になりそうだ」と話すのは、市場調査会社HISマークイットの主席アナリスト、ウェイン・ラム氏。ギャラクシーS8の印象的なデザインや次期iPhoneが秋まで発売されないことなどが理由だという。

 一方、その他のスマホメーカーは大手2社の隙を狙っている。市場調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、アップルとサムスンは世界のスマホ販売台数の3分の1以上を占め、利益では実に業界の95%を握る。この2社を2021年までに市場シェアで追い抜こうとしている中国の華為技術は2月、自社ブランドの高級モデルを発表した。アルファベット傘下のグーグルも昨年末に自社ブランドから「ピクセル」を発売、市場で勢力を増している。

硬直化する米国市場


 米国のスマホ市場はいくつかの点で硬直化している。市場調査の専門家らによると、スマホ時代の到来から10年がたち、消費者は自分のスマホにこだわりを持っている。消費者がここまでこだわった製品や購入品はほとんどないという。

 一方で他国の市場は米国より流動的だ。特に中国やインドでは、価格に敏感な消費者が頻繁にブランドを乗り換えている。ただメーカーにとっては、消費者が概して上位機種により多く支出する米国が主戦場だ。

 米国ではほとんどの消費者はiPhoneかアンドロイド端末――主力メーカーはサムスン――のどちらかを使い続けている。市場調査会社コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズによると、アンドロイド端末のユーザーのうち、昨年にiPhoneに乗り換えた人はたった11%。iPhoneユーザーでアンドロイド端末に乗り換えた人も15%にとどまった。

 乗り換えの障害は少なくなった。音楽や映画はアップルの「iTunes(アイチューンズ)」に頼らなくても、ネットフリックスやスポティファイなどのストリーミングサービスで楽しめるようになった。多くのスマホはハードのスペック面も外観も似たり寄ったりだ。しかし消費者は動かない。

 消費者がスマホで自動車や家電を操作できる時代に近づきつつある世界では、わずか数%でも市場シェアの変動は重要だ。ストラテジー・アナリティクスによると、米国のスマホ出荷台数では、2015年には35.3%あったアップルのシェアが16年には32.5%に低下し、サムスンのシェアは23.6%から25.7%に上昇した。そのあとには韓国のLGエレクトロニクスと中国の中興通訊(ZTE)が続く。

 サムスンはこれまでより長いスクリーンと仮想アシスタント機能「ビクスビー」が売りのギャラクシーS8で地歩を固めたい考えだ。

 ただこうした機能は一定の評価を得てはいるが、サムスンを取り巻く状況は厳しい。マーケティング企業フルエントが先月実施した調査によると、昨年のノート7のリコール後、米国のサムスンユーザーの約37%が次もサムスンのスマホを買う可能性は低いと回答しているのだ。

 フルエントの最高マーケティング責任者、ジョーダン・コーエン氏は「アップルにとっては非常に大きなチャンス」と語った。

 しかしグッゲンハイム・パートナーズのアナリスト、ロブ・シーラ氏によると、新しいiPhoneが高額になると予想されているため、一部の顧客でiPhone離れが起きるかもしれない。アナリストらによると、10周年モデルには新たなディスプレイ、ワイヤレス充電、顔認識機能などが搭載される可能性がある。アップルは引き続き安価なモデルの販売も続ける見通しだ。

 競争激化で各メーカーはサービス拡充を図っている。アップルは音楽ストリーミングサービス「アップル・ミュージック」に力を入れており、フランク・オーシャンなど人気アーティストと新作アルバムの配信で独占契約を結んだ。サムスンが多額の資金を投じて開発したビクスビーには、アップルのアシスタント機能「Siri(シリ)」に関わったクリエーターのうち2人が開発したディープラーニングソフトが採用されている。

 市場調査会社カンター・ワールドパネルのローレン・グーンバー氏は「ブランド以上に体験が重要になるだろう」と話した。

By TIMOTHY W. MARTIN and TRIPP MICKLE

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