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BMWとダイムラー、「打倒テスラ」で真逆の戦略

by STEPHEN WILMOT

 ドイツの自動車大手BMWとダイムラーの製品や生産台数は似通っているが、自動車の未来に賭ける両社の姿勢は極端に異なる。

 歴史的に両社の最優良顧客だった裕福かつステータスを求める米国人の間で、米電気自動車(EV)メーカー、テスラの製品が人気を博している。これを受け、BMWとダイムラーは昨年、新たなEV戦略の発表を促された。電池だけで走る純粋なEVであれ新旧の技術を組み合わせたプラグインハイブリッド車(PHV)であれ、両社は今や電気で動く自動車が2025年に販売台数の15〜25%を占めると予想している。こうした業界の技術的挑戦を、両社は頭文字を組み替えたフレーズで表現している。ダイムラーが掲げる「CASE」は「コネクテッド(connected=インターネットに接続した)、自律走行(autonomous)、共有とサービス(shared and service)、電気(electric)」の頭文字を組み合わせたもの。一方、BMWが掲げる「ACES」はこれらの入れ替えにすぎない。

 だが取締役会議室から、もうけや損失が出る工場に目を移すと、両社の戦略は異なっている。

 BMWが今月の年次記者会見で掲げた合言葉は、不確かな未来に直面する中での「柔軟性」だった。このアプローチにおける目玉の一つは、いわゆる「プラットフォーム」の開発だ。これは実質的にEVと従来型の自動車に共通する車台製造の青写真を指す。一方のダイムラーは、EV専用のプラットフォーム開発に投資を急いでいる。同社は2025年までにEVプロジェクトへ最大100億ユーロ(約1兆2000億円)を投資する方針を明らかにしているが、アナリストらはこの約半分が新製品開発、もう半分が共通プラットフォームに向けられると見込んでいる。

 技術にまつわる古い格言に「投資が早すぎれば資金を失う。投資が遅すぎれば市場を失う」というものがあるが、世界をけん引する高級車メーカー、BMWとダイムラーの立場はこの両端に位置する。ダイムラーは未来の成功を運命に託しており、EV需要が台頭しなければ過剰能力で利益率はむしばまれかねない。一方のBMWについて、UBSのアナリストらは、EVセクターに火が付けばダイムラーとテスラが専用プラットフォームを利用して低コストでより良い製品を生み出すリスクを指摘している。

 この議論について、歴史は2つの視点を提供する。過去30年にわたり、BMWはダイムラーの6倍以上の株主リターンを生み出してきた。その大きな理由の一つが厳しい資本管理だ。ダイムラーが米クライスラーなどの問題に資金を浪費する一方で、BMWはこれまで以上の製品カテゴリーに慎重に足を踏み入れてきた。

 しかし、2009年のリセッション(景気後退)以降、状況は一変したようだ。BMWは売れ行きが低調なコンパクトEV「i3」モデルの開発に数十億ユーロをつぎ込んだ。この傷跡は現在の経営陣の慎重姿勢に裏打ちされている。一方、ダイムラーの高級車ブランド「メルセデス・ベンツ」は息を吹き返してきた。昨年には過去10年以上で初めてメルセデスの世界販売台数がBMWを上回った。そして今やダイムラーの株主リターンは5年以上にわたってBMWを上回っている。

 アナリストの大半は最近のトレンドが継続するとみており、より新しく流行の先端を走るメルセデスのラインナップのおかげでダイムラーはBMWをしのぐと予想している。しかし、投資家は形勢が逆転する可能性を心に留めておくべきだ。明暗が鮮明になるまで長い年月がかかるだろうが、後になって振り返れば、ダイムラーのEVへの大きな賭けは自分の立場を過信した新たな事例のように見えるかもしれない。

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