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証人喚問の次は、森友問題特別委員会による徹底調査を - 南部義典

憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。
民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。
憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。
「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」
そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、
「憲法」の観点から検証していきます。

政治ショーで終わらせないために

 日本中が注目した、今月23日の証人喚問。大相撲、高校野球、WBCを横において、TVに釘付けになった方も多いことと思います。衆議院、参議院が、同一人物を同日に証人喚問することは、憲政史上初めてのことであり、どんな展開になるのか、私も固唾を呑んで見守っていました。証言に対する評価は様々ですが、森友問題の真相究明に向けて、国会が果たすべき役割(責任)が、より明確になったのではないでしょうか。単なる政治ショーで終わらせないために、衆議院、参議院は次の二点に取り組むべきと考えます。

 まず、森友問題の調査を継続して行うことです。今回は、籠池氏一人をめぐって、衆議院、参議院がその身柄を奪い合うような形で、証人喚問の日程が窮屈に設定されてしまいました。しかし、事案の性格上、籠池氏だけの証言を聴取しても仕方ないことは、当初から指摘されていたことです。加えて、今回の証人喚問で、複数の新たな固有名詞が出てきたことによって、事実関係の確認、照合を追加して行わなければならなくなりました。政府・与党は、森友問題の幕引きを模索し、社会の関心を逸らそうと必死ですが、決して収束の流れにはなっていません。

 次に、森友問題の調査を行う場をしっかりと設けることです。森友問題はちょうど2月中旬、衆議院予算委員会で2017年度政府予算案の審査が進められていた頃にスポットが当たり、2月下旬以降きょうまでの1カ月間、参議院予算委員会の場をメインに、事実の究明ないし追及が行われてきました。しかし、2017年度政府予算案は27日、参議院で可決・成立したため、今後、衆議院、参議院のいずれにおいても、基本的には予算委員会は開かれません。この点、今回の事案は、内閣官房(政府による昭恵夫人の活動支援)、財務省(国有地売却の手続き)、国土交通省(国有地売却価格の見積り)、文部科学省(幼稚園教育における政治的中立性)、環境省(工事現場における産業廃棄物の管理、処分)と、複数の府省が関わっています。森友問題の調査を継続して行おうとすると、内閣委員会、財務金融委員会(参議院は財政金融委員会)、国土交通委員会といった具合に、それぞれの所管で質疑の場が分かれてしまいます。さらに、森友学園との間の、稲田防衛相の弁護士としての活動の関わりは、衆議院安全保障委員会、参議院外交防衛委員会が追及の場となります。追及の場が分かれてしまうのは、その側からすれば、政治的にかなり非効率になってしまいます。また、各委員会では今後、内閣が提出した法律案の審査が進められていくので、現在のように「朝から晩まで森友問題」という訳にはいかなくなってしまうのです。問題がうやむやになってしまっては、政府・与党の思うツボです。

特別委員会を設置し、『調査報告書』を作成すべき

 結論になりますが、委員会の「選択と集中」が必要です。専ら森友問題を扱い、継続して調査を行う場として、衆議院、参議院それぞれに「学校法人森友学園に対する国有地売却問題等に関する調査特別委員会」を設置すべきです。最近、特定の事件、事案を扱う特別委員会があまり設置されなくなっており、その意義、必要性があまり論じられていないようですが、民進党、日本共産党を中心に、積極的に設置の提案をすべきです。何より証人喚問、参考人招致の続きは、特別委員会で一元的に行うべきです。会期を2つ、3つ跨ぐようにして、時間をかけて調査を進める必要があります。

 過去、衆議院では「ロッキード問題に関する調査特別委員会」が、第77回通常国会(1975年12月27日召集)から第87回通常国会(1979年6月14日会期末)まで、約3年半設置されていた例があります。このほか、「リクルート問題に関する調査特別委員会」が、第113回臨時国会(1988年7月19日召集)から第114回通常国会(1989年6月22日)まで約11カ月間、設置されていました。期間は短いものの、証券・金融スキャンダル問題を受けて設置された「証券及び金融問題に関する特別委員会」は、第121回国会の会期中、1カ月半ほど活動していました。森友問題が、過去の設置例と類似性がどれほどあるのか、どちらがより重大な問題なのかは、単純な比較はできません。しかし、複雑な事案であることは間違いなく、調査に相当な期間を要することに異論はないでしょう。特別委員会の場に、あらゆる関係者を招致し、事実の真偽を突き詰めていく姿勢を明確にする必要があります。

 さらに、特別委員会を設けさえすれば、それで済む話ではありません。特別委員会が調査を終えたときは、『調査報告書』を作成し、公表することが必要です。報告書の作成は当然、与野党の共同作業になりますが、事実の経緯、問題点を明確に指摘することが不可欠です。報告書を作成することを念頭に置かない限り、これまでのような水掛け論が続くばかりです。結局、何が真相だったのか究明することができず、消化不良に終わってしまいます。

後半国会では、「知る権利」を守る戦いを

 森友学園小学校の設置が不許可になったことで、「入学できずに困る」という具体的不利益を被る方もいると思いますが、元々は、鑑定価格より大幅に値引きした価格で国有地が売却されたという一点の事実を以て、森友問題はすべての国民の関心事となっています。国会、政府は、国民の知る権利に応える責任があります。

 財務省近畿財務局の担当者は、「財務省行政文書管理規則」を盾に取って、当時の取引交渉記録、面会記録等をすべて廃棄した、と述べています。また、森友問題とほぼ時期を同じくして、南スーダンPKOの日報隠ぺい問題が明らかになりました(=廃棄したはずの資料が、後日、その存在が明らかになりました)。さらに、もう間もなくですが、政府の特定秘密の管理等を監視する衆議院、参議院の情報監視審査会が2016年度の『年次報告』を公表する予定であるところ、この1年間、どれほど有効なチェックを行ってきたのか、私は甚だ疑問に感じています。これらの問題の根底には、特定秘密であれ、通常の行政事務に係る事項であれ、行政側に都合の悪いことはすべて、ブラックボックスに入れられてしまうという、一つの真理があります。前々回、森友問題に関して、衆議院の予備的調査権を発動すべきと提案したところですが、後半国会では国民の知る権利を守る抜くため、野党は、使える手段をすべて利用し、戦ってほしいところです。私は、公文書管理法を改正し、行政文書の管理に関し、個々の行政機関、職員の裁量を狭めることが必要だと考えます。この点については、別稿で述べます。

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