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フットサルを通じた交流を!“障がい者就労支援のスポーツバー”が誕生

健常者と障がい者の間に横たわる“労働・雇用環境の差”

2016年4月、一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟が設立され、その発表会見が御茶ノ水のJFAハウスで行われた。筆者はその場に取材者として参加をしていたのだが、そこで聞いた1つの言葉が最も印象に残っている。

「僕に取って片足が無いということは、髪の毛が多い人とか少ない人がいるのと同じくらいのことだと思っているので」

なんともユーモラスなこの言葉を発したのは、アンプティサッカー日本代表で10番を背負い、同競技を代表して会見に参加したエンヒッキ・松茂良・ジアスである。ちなみにアンプティサッカーとは切断障がいを持った選手たちによるサッカーで、体を支えるためにクラッチと呼ばれる杖を使って移動をするのが特徴的なスポーツである。

この発言に筆者はハッとさせられた。誤解を恐れずに言えば片足がないということは少なからず同情の対象でもあり、それを「可哀想」だと思っている自分がいた。しかし、全員が全員ではないものの、本人達にとって “障がい”は単なる身体的特徴でしかなく、決してディスアドバンテージではないケースもあるのだ。そういった考えの乖離に良くも悪くもショックを受けたのである。

1人の人間として見れば健常者と障がい者に隔たりは無くてしかるべきである。これは当然の話だ。しかし、取り巻く環境は大きく異なり、その最たる例が労働・雇用環境であることは間違いない。

障がい者の働く場所は作業所や工場などが大半であり、単純作業による給与の安さが1つの課題として存在していた。2016年12月に厚生労働省から発表された就労継続支援A型(※1)の平均賃金は6万6,412円である(※2)。これに障害者年金が加わり、やっと健常者と同様の生活ができるというのが現状だ。文部科学省は障がい者が積極的に社会へ参加し、貢献する「共生社会の形成」(※3)を1つのテーマとして謳っているが、この雇用環境1つを取ってみても、その実現は容易でないことがわかる。

障がい者アスリートが競技と仕事を両立できる施設

撮影:竹中玲央奈

そんな中、この問題の解決を目指すある施設がオープンした。東京は多摩センターにある一般利用が可能なフットサルコート「フットサルステージ多摩」に併設された「E’s CAFE」だ。日本で初めての障がい者就労支援のスポーツバーであるこのカフェは雇用する障がい者へ“10万円以上の賃金”を提供し、全国の福祉事業所のロールモデルとなることを目標にしている。パラスポーツの普及振興と障がい者の社会生活の支援を目的に様々な支援や運動を行っている一般社団法人パラSCエスペランサと日本財団、そしてコートの運営元である㈱クリエティブヘッズの3社が手を取り合ったことで、この施設の誕生した。

オープン前日である2月27日には記者会見が行われ、パラSCエスペランサの神一世子氏、日本財団理事長である尾形武寿氏、株式会社クリエティブヘッズの山田崚資取締役がそれぞれ設立にあたっての思いや経緯を語った。加えて、カフェの従業員が身につけるユニフォームのデザインを担当した女優の奥山佳恵さんも参加した。奥山さんは二次の母であり、次男がダウン症であることを告白している。

彼女も障がい者がより社会へ溶け込めるような世界の実現を願う1人であり、「誰もが生きやすい世の中に、すべての人が自分のしたいことをできるようになる世の中になってほしい」と語気を強めて口にした。

そして、約20年間に渡り脳性まひ者7人制サッカー(通称)CPサッカーのサポートに携わってきた神氏は2013年にヨーロッパへ行った際に見た「街角のカフェで障がいがある人たちがいきいきと仕事をしている姿」(神氏)が忘れられず、この経験が今回のプロジェクトの発端になったと語る。

「“働く”ということが選手たちのテーマというか、課題です。サッカーと仕事の両立が出来て、そこでサッカーやスポーツを通じて交流ができる場所を作りたいと思っていました。E's Cafeではカフェを通じて障がい者サッカーや障がい者スポーツをより多くの人に知らせていくと同時に、障がい者の人たちが楽しくイキイキと働けるような場所をスポーツというテーマで広げていって、全国各地で笑顔が広がれば良いなと思っています」(神氏)

同様のコンセプトを持つ商業施設を、今後全国にも展開していきたい思いがあるようだ。また、CPサッカーの選手はこのカフェで働くと共に、併設されているフットサルコートで練習に励むという。サッカーに集中しながらも就労が可能という意味で、障がい者アスリートにとっても非常に魅力的な施設と言えるだろう。

各々が秘める思いを言葉にしていったが、その中で印象的だったのが日本財団・尾形武寿理事長の言葉だ。

「通常、目に見えている社会は実は偏っている。障がい者も健常者もみんなが普通に生活をして初めて普通の社会であるし、そういう社会でなければいけない」

確かに、普段に生活の中で、障がい者と接する機会というのはほとんど無いように思える。だからこそ、時折目にする彼らに対して、通常とは異なる目線を向けてしまうという現実は少なからず存在するのだろう。

「健常者と障がい者がお互いを理解していくためには、交流の機会を増やすことが重要です。サッカーにはそのための大きな力があると信じています。本連盟は、JFAと各障がい者サッカーとをつなぐ中間支援組織として、広くサッカーを通じて、障がいの有無に関わらず、誰もがスポーツの価値を享受し、一人ひとりの個性が尊重される活力ある共生社会の創造に貢献することを目指します」(※4)

これは冒頭に紹介した日本障がい者サッカー連盟の会長を務める元サッカー日本代表の北澤豪氏の言葉なのだが、言及されている“交流の機会”は今の日本では、絶望的に不足している。これはおそらく事実であり、だからこそ先の尾形理事長の言葉も生まれたと察する。

フットサルを通じて、自然に“交流の機会”が生まれる

“スポーツ”は障がい者と健常者を繋げるために最も有効的なコンテンツだ。だからこそ今回のような施設が増えていくことに大きな意味がある。  様々な性別、年齢の人々が集まるフットサルコートには、これまでの人生の中で障がい者を身近に感じたことがない人もいるに違いない。

彼ら彼女らがフットサルをするべく、この場へ足を運び、そのまま打ち上げという形でE’s Caféに向い、お酒を飲みながら語らうとしよう。その中で自然と障がい者と接する流れがあるだろうし、それまで無かった理解が生まれ、社会のあり方を考えるきっかけにも成り得る。北澤氏の言葉にあった“交流の機会”が自然と生まれるこの場所の意味は、非常に大きい。

個人的な話になるが、筆者はこのフットサルコートには学生時代から通っており、毎週末に行われるチーム単位で参加するワンデーの大会に幾度も足を運んできた。そんな馴染みのある施設が“スポーツ”というキーワードを持って健常者と障がい者を繋ぐ場所を作り上げた事実に、大きな喜びを感じざるを得ない。

ただ、当たり前だがこういった1つの施設がオープンして終わりというものではない。多くの人が自然と障がい者と接する場も、健常者と一緒に働き、それに見合った対価を得られる場所もまだまだ足りていない。これを皮切りに、断続的にこういった施設が全国各地に広がっていくことを、強く臨む。

その先に、本物の共生社会は実現されるのだろう。

※1就労継続支援どっとこむ
http://www.s-agata.com/category10/

※2厚生労働省 障害者の就労支援について(平成27年7月14日)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000091254.pdf

※3文部科学省 共生社会の実現に向けて
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884.htm

※4一般社団法人日本障がい者サッカー連盟
http://www.jiff.football/

[ PR企画 / 日本財団 ]

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