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追悼・佐藤大輔

征途〈1〉衰亡の国 (トクマ・ノベルズ)
佐藤 大輔
徳間書店
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 中高校生の頃、架空戦記を読みまくっていた。その多くが、どこか荒唐無稽で現実感のないものだとは、子どもながらに分かっていた。そんな中で手にして読んでみてショックを受けたのが、佐藤大輔氏の『征途』だった。

 捷一号作戦〜レイテ沖でもし連合艦隊が作戦に成功していれば、というIFから始まるこの物語は、それが太平洋戦争の趨勢に影響を与えず、むしろ北海道の半分までがソビエト連邦に占領されるという「分断国家」になるという帰結を生む。そして、朝鮮戦争と同時に「北海道戦争」が勃発し、ベトナム戦争に自衛隊が参戦し、「統一戦争」で「北日本」の戦術核が米海軍を壊滅させる。そして、その戦争の最中にクーデターが起き、樺太の核サイロを無力化させる作戦が敢行される……。その最中には、常に戦艦(戦後は護衛艦だが)『大和』がいた。

 佐藤氏の架空戦記は、歴史上のある転換点を、僅かに変えるところから物語がスタートする。『レッドサン・ブラッククロス』や『侵攻作戦パシフィック・ストーム』ならば日露戦争だし、『覇王信長伝』ならば本能寺の変、『遥かなる星』ならばパナマ危機……。その「IF」が精緻な、あり得たかもしれない「もうひとつの歴史」を紡ぎ出すという作業において、佐藤氏ほどのリアリティをもって成し遂げた作家を、私は他に知らない。

 佐藤氏の多くの作品は徳間書店から新書・文庫で発売されたが、90年代後半に架空戦記から撤退してしまったため、その遅筆さもあり、発表されていたほとんど作品にミッシングリンクが残されてしまったのは多くのファンにとっては残念に思うところだろう。『地球連邦の興亡』もこれからというところで途切れているし、『皇国の守護者』もあれでお開きというのは「そりゃないぜ」という感想をどうしても抱いてしまう。それらすべては読者の想像に委ねられてしまった。

 敢えて佐藤氏の功績をひとつ挙げるならば、架空戦記という児戯とも揶揄されるジャンルで、圧倒的な「現実主義」を貫いたということだろう。私は彼の作品で「仕事をする大人の流儀」というものを学ばされたし、無名有名関わらず人生というものがささやかな「一撃」によって劇的に変わる可能性があるということを教えられた。

 21世紀も十数年を経て、『スケルトニクス』のような動作拡大型スーツが開発されるようになっている。『遥かなる星』での硬式宇宙服が実現しようとしている時代に、ある意味でひっそりと亡くなってしまうなんて、「そりゃないぜ」と言いたくなる。ああ二度目だな、この言葉。

 いくら言葉を紡いでも、もう未完作は未完作のままに終わった。これは動かしようがない。『シン・ゴジラ』的に言えば「あとは好きにしろ」ということなのかもしれない。それでも、貴方の書く「未来」を、私は読みたかった。

 今はひとまず献杯を。その魂の安らかんことを。

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