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情で繋がり、情でつまずく保守の世界~森友学園以外にも繰り返されてきた保守の寄付手法~

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・森友学園は保守の恥

一連の森友疑惑で慙愧に耐えないのは、「保守」或いは「愛国」を真面目に求道する者たちが、籠池氏のせいであらぬイメージ低下の誹りを受けた事である。国や府を欺罔せんとし、府から刑事告訴を検討され、また香川県在住の私人からすでに刑事告発までなされた籠池氏は、口では「愛国心」「教育勅語による高い道徳の涵養」などと謳うが、その実、あらゆる意味で不誠実極まりないと批判されるのは、読者諸賢の知るところであろう。

このままでは「愛国者」「保守」と名乗れば、すわ籠池氏の姿とシンクロして、おかしな目で見られかねないではないか。「愛国」を汚した罪深さとはこのことである。

当初、森友学園疑惑が勃発した当初、ネットの保守世論は籠池氏に同情的だったが、くだんの「安倍総理から100万円(現在のところ真偽不明)」発言が籠池氏等から飛び出すと、安倍総理と籠池氏を天秤にかけると安倍総理の方が明らかに「重い」ので、ネット世論もたちまち籠池批判へと態度を硬化させる傾向が顕著だ。いわく「森友学園(籠池)は保守の恥」という。普段、ネット保守の論調に辛辣な筆者も、流石にこの感情には満腔の思いで同意する。

・繰り返されてきた保守の「寄付手法」

しかし、森友学園の一連の狡猾さは、筆者にある種のデジャブ(既視感)とでもいうべき感情を想起させた。保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める…。大阪府豊中市に建設された「瑞穂の国記念小学院」(取り下げ)は、問題の端緒となった安倍昭恵氏の名誉校長就任をはじめ、数々の保守系言論人・文化人を広告塔として前面に押し出すことによって、4億円(公称)ともいえる寄付金を全国から集めた結果である。

この「寄付手法」とでもういうべき事例は、しかし保守界隈でもう何度も目にしてきた光景なのだ。「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」という今回の森友学園の手法は、この狭い、閉鎖的な「保守ムラ」ともいうべき界隈で、ずっと前から恒常的に繰り返されてきた。そしてそこには、狭く閉鎖的な世界が故の「情」を土台としたムラ的な人間関係が浮かび上がってくる。

・「情」で繋がる保守ムラの世界

森友学園の広告塔として無断でパンフレットに写真を掲載されたと主張する作家の竹田恒泰氏は、同学園(塚本幼稚園)で2度講演会を行った際、「ギャラは安かった」などと関西ローカル放送のテレビ番組中に証言した。この言は本当であろう。小学校建設のために自力資金ではなく全国から寄付を集めなければならない法人が、著名な保守系作家とはいえ一回の講演に破格のギャラを出す、とは思えない。

同学園で講演会を行った人々は、上記竹田氏をはじめ、櫻井よしこ氏、平沼赳夫氏、百田尚樹氏、中西輝政氏、渡部昇一氏、田母神俊雄氏、など保守界隈のそうそうたるメンツが登場する。しかし彼らへのギャラは竹田氏の証言の様に大した額ではないだろう。ではなぜ、これら保守界隈の重鎮たちはこぞって塚本幼稚園で講演を行ったのか。

そこには、保守界隈という、狭く閉鎖的な世界の中で、「情」が支配する粘着的で複雑な人間関係が構造的に横たわっているからだ。狭い世界の中で「あの人も出たんだから」と言われれば、「情」の論理が優先して断り切れなくなる。そして幼稚園・小学校(院)建設の大義として、「真の愛国教育」などと、保守界隈の誰もが得心し、反対しにくい理由を掲げられると、「情」が先行して断りづらくなる。この界隈は、とことん「理論」よりも「情」が先行する世界だ。

実は森友学園の「寄付手法」から発展して「寄付商法」ともういべきスタイルは、籠池氏がはじめて実践したわけではない。これは保守界隈に伝統的に存在する「情」に基づいた「構造的悪弊」とみなさなければならないのである。

以下、保守界隈=保守ムラが全精力を傾けて「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」という過去の事例を、森友学園疑惑と併せて3例紹介する。そしてそれらがどのように失敗・挫折していったのかも端的に述べる。保守界隈がいかに「情」に支配された特殊で閉鎖的な世界かがお分かりいただけるのではないか。

☆保守言論人・文化人を「広告塔」に寄付を集めた三つの事例☆

1)映画『南京の真実』製作のために寄付金 約3億5000万円 2007年の事例

2007年、旧日本軍が日中戦争時の南京攻略(1937年)の際、多数の非戦闘員を虐殺したとされる事件、所謂「南京事件」は、中国共産党などのでっち上げであり、日本側は潔白だとする趣旨の映画『南京の真実』(監督・水島総)の制作発表会が、同年1月、東京都のホテルニューオータニを貸し切って大々的に行われた。

いわずもがな、「南京大虐殺でっち上げ論」は、保守派・右派とみなされる言論人や文化人らが口にする常套句で、「南京大虐殺でっち上げ」は、保守の言論空間に影響を受けたネット保守の世界でも常識化しており、同映画の理念はその保守派の掲げる思想を物語映像として具現化することにあった。

同映画の製作母体は、2004年に誕生したばかりの独立系保守CS放送局の日本文化チャンネル桜(のちに株式会社チャンネル桜エンタテインメントに引き継ぎ)。しかし自己資金に乏しかったので、同映画の製作費の大半を外部からの寄付に頼ることになり、「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」手法を展開した。

映画『南京の真実』への賛同人として公式サイトに掲載され、あるいは同ホテルで応援演説ならぬ決起集会にて激しく賛同の意を示したのは、以下に一部列挙する通りのこれまた保守界隈のそうそうたる面々であった。

石原慎太郎(東京都知事)、渡部昇一(上智大学教授)、稲田朋美(衆議院議員)、平沼赳夫(衆議院議員)、西村眞悟(衆議院議員)、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、高橋史朗(明星大学教授)、井尻千男(拓殖大学日本文化研究所所長)、椛島有三(日本会議事務総長)、田久保忠衛(杏林大学客員教授)、田中英道(東北大学名誉教授)、中西輝政(京都大学大学院教授)、藤井厳喜(拓殖大学客員教授)、藤岡信勝(拓殖大学教授)、古庄幸一(元海上幕僚長)、水間政憲(ジャーナリスト)…etc(肩書はいずれも当時)

まさに「保守言論人・文化人総動員」ともいうべき煌びやかな肩書を持つ賛同人の数々だ。この甲斐あってか、映画『南京の真実』には当初予想を大幅に上回る約3億5000万円以上(2017年1月時点)が集まり、記者発表からちょうど1年後の2008年1月に映画『南京の真実』は無事に公開され、支援者や好事家から一定の評価を得た。しかしながらこの『南京の真実』の構想は、記者発表時点で「三部作」と明示されており、2008年1月公開のものは第一部に過ぎなかった。

・「三部作」のはずが第一部しか完成せず…

では残りの第二部、第三部はどうなるのか。実は第一部の公開から約9年を経た現在でも、当初公約された「三部作」の製作は行われていないのである。これには一部の支援者からも相当の不満の声が上ったことは言うまでもない。2017年になって、唐突に「第四部」の製作発表が行われ、東京・渋谷区のユーロスペースで試写が行われたが、肝心の公約たる「第二部と三部」の公開は9年を経てもなお実現していない。

「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」手法を展開し、その条件として「三部作」の製作を確約しながら、9年を経てもなお3割強(1/3)しか約束を果たしえないのは、寄付者からの批判を受けても致しかたない事例であろう。

もっとも森友学園の様にこの案件は自治体から補助金を詐取しようという試みではないし、芸術作品の製作に長期の時間がかかるのはよくある事例(例:2015年に世界公開されて熱狂的な支持を得、興行的にも大成功したジョージ・ミラー監督の『マッドマックス4(怒りのデスロード)』は、なんと構想17年を要している)であるから、一抹の酌量の余地はあることは、彼らの名誉のためにも弁護しておかなければならない。

しかしながら、この時「賛同人」としてあたかも広告塔に使われた人々は、みなこの「公約違反の疑い」に一様に沈黙を守っている。

狭い保守界隈=保守ムラが故に、理論整然たる理詰めの反撃や論争より、「情」が勝って、「まあまあ、そんなに批判しては可哀想ではないか。まあまあ良いではないか。おなじ保守同士波風を立てない方がよいではないか」というムラ的馴れ合いが先行したからだ。

2007年度、あれだけ大々的に約束した「三部作制作の公約」が実現するめどは、具体的にいつになるのか判然としていない。そしてまた、寄付金が現在に至るまでどのような名目で支出されているのか、その具体的な内訳も、一部の支援者からの批判にもかかわらず、公にされていないのである。

2)田母神俊雄氏都知事選立候補のために寄付金 約1億3200万円 2014年の事例

猪瀬直樹都知事(当時)が医療法人・徳洲会から不正な献金(貸付)を受けたとされる疑惑で辞任した出直し都知事選に立候補したのは、2008年にホテルグループ・アパが主催する「真の近現代史観論文」の第一回最優秀賞を受賞し、一躍時の人となり保守界隈の寵児となった元航空幕僚長・田母神俊雄氏であった。

田母神氏の支持母体は、前述で『南京の真実』を製作した母体、日本文化チャンネル桜が傘下に持つ政治団体『頑張れ日本!全国行動委員会』で、田母神都知事選出馬のために急遽、政治資金団体「東京を守り育てる都民の会(後、田母神としおの会)」が結成され、『南京の真実』の時と同様、保守界隈=保守ムラが全精力を傾けて持てる力のすべてを総動員した総力戦の様相を呈した。

強烈なタカ派としてネット世論を熱狂させ、「閣下」の愛称までついた田母神の都知事選立候補は、保守・右派、そしてそれを支持するネット保守層にとって悲願でもあった。実はこの時、都知事選勝利の暁には、田母神新都知事のイニシアチブの下、都が一部株主であるTOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)を間接支配する、という、いま考えれば到底実現不可能な、無茶苦茶な計画すらも、筆者はある選対幹部の一人から直接聞いたことがあるのだ。

ここでまたもや彼らは、「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」というくだんの手法を展開した。当然、自己資金が足らず政党交付金や助成金も受けられない「手作り選挙」が故に、畢竟、その資金源は寄付金に求るしか他になかったからである。

この時期、「都民の会」が製作した選挙用ポスターにある、田母神俊雄氏への賛同人・推薦人一覧には、これまた下記に一部列挙するように、保守界隈のそうそうたる面々が並んでいる。

石原慎太郎(衆議院議員、元東京都知事)、渡部昇一(上智大学教授)、平沼赳夫(衆議院議員)、西村眞悟(衆議院議員)、中山成彬(衆議院議員)、高橋史朗(明星大学教授)、デヴィ・スカルノ(元インドネシア大統領夫人)、井尻千男(拓殖大学日本文化研究所所長)、田中英道(東北大学名誉教授)、中西輝政(京都大学大学院教授)、藤岡信勝(拓殖大学教授)、水間政憲(ジャーナリスト)…etc(肩書はいずれも当時)

2007年の『南京の真実』の事例の時と実行母体が同じだから、ほぼすべての人々が重複しているのがわかるが、微細な違いもある。2007年時には賛同人の中に居なかったデヴィ・スカルノ氏がリスト入りし、櫻井よしこ氏・田久保忠衛氏らの『国家基本問題研究所(通称・国基研)』の役員メンバーが名を連ねていないことだ。恐らく櫻井・田久保両氏が自民党政権よりの言論を展開するうえで、非自民から立候補した田母神氏への推薦人になるのは得策ではないと考えたためとみられる。いずれにせよ微細な差はあれど、この面々は2007年とほぼ同じだ。

・異論や違和感は「情」で抹殺

田母神氏は2014年都知事選挙で得票総数60万票を獲得したが主要四候補のうち最下位に終わり、2015年に入ると選挙運動時に集めた寄付金の中に使途不明金がある疑いが濃厚となり、田母神自身も秘書による使い込みを認めたため、当時の選対幹事長らから刑事告発されるという事態に陥った。2016年4月、紆余曲折ののち田母神氏は公職選挙法違反の疑いで東京地検に逮捕され、現在も裁判中(検察側求刑2年)である。

「保守界隈で著名な言論人や文化人を広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」手法を展開しておきながら、その寄付金の一部が不正に使われた疑惑について、これら賛同人たちは一様に沈黙を貫いている。

いや、むしろ田母神氏が立候補する初期の段階から、「珍言」「極言」を繰り返す氏が、都知事にふさわしいのか否かについての疑問は、保守界隈の一部にはあった。筆者など、選対本部の幹部連中がいない酒席では「本当にタモさん(田母神俊雄氏の愛称)が都知事にふさわしい資質があるのか、と聞かれれば疑問」という感情を何人もの保守系言論人から聞いた記憶がある。しかし、「保守ムラの総動員・総力戦」という同調圧力は、そのわずかな猜疑の芽を摘み取り、異論を封じて、「保守ムラ翼賛選挙」へと向かわせたのだ。

そして結果としての選挙惨敗の責任は有耶無耶にされ、後日田母神氏による公職選挙法違反の疑いや寄付金の使途不明には、「まあまあ、そんなに批判しては可哀想ではないか。まあまあ良いではないか」というムラ的馴れ合いが先行した。ここにも保守ムラの「情」の理屈が理論を覆したのである。

現在、田母神氏に対する保守界隈からの批判は、同氏を刑事告発した元選対幹事長らの周辺以外、鋭敏には聞こえてこず、もっぱら保守外部からの批判・失笑のみが響き、ややもすると一部のネット保守界隈では「田母神氏は中国・韓国のスパイにはめられた可哀想な被害者」だとするトンデモ陰謀論・擁護論まで噴出する始末である。圧倒的な「情」の前に、正当な理屈は脆くも吹き飛んだのである。

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