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米在住の精神科医が語る「エリートが実践する最高の休息法」

谷本 有香 ,Forbes JAPAN 編集部
フォーブス ジャパン副編集長 兼 ウェブ編集長


アメリカ在住の精神科医 久賀谷亮氏

グーグルやフェイスブックなど世界の一流企業が取り入れているということでも話題になった「マインドフルネス」。マインドフルネスとは、科学的な脳の休息法であるといわれている。なぜここまでマインドフルネスがいま注目されるのか。また、効果的な脳の休め方はあるのか。

17万部のベストセラー「世界のエリートがやっている最高の休息法」の著者で、アメリカ在住の精神科医の久賀谷亮氏に聞いた。


私は本の中で「マインドフルネスは脳の休息法の総称」としていますが、世界中でマインドフルネスがブームとなっているのは、休みたくても休めない状態が続いているからでしょう。携帯文化も影響していると思います。

実際、脳を休めようと、意識的にぼんやりしていても、気づいたら雑念が頭の中を行き来していて心がさまよっていたりしませんか?私たちは、一日の大半をこの心がさまよった状態で過ごしていると言われています。

心がさまよっている時、脳はデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という脳回路が使われている状態で、DMNは脳のエネルギーの60~80%を消費するといわれます。これが脳が疲れる要因の1つになります。

休日に何もしないでいたのに、なんだか疲れがとれなかったという時も、このDMNの活動が活発だったからです。マインドフルネスは脳内のそうした活動を抑え、脳を休ませる手段なのです。

一方で、マインドフルネスは、疲れを取る「対症療法」ではなく、疲れに対する「予防」にもなります。マインドフルネスを継続すると自分で脳の「つくり」を変えていくことができるので、疲れづらい脳、ストレスに強い脳をつくれるようになると言われているのです。

しかし、マインドフルネスという言葉がブームになり、たくさんの方法が紹介されると、いったいどれがメインストリームなのかわからなくなりますよね。実際、どの方法がいいという優劣はなくて、大切なのは継続することです。

最初はマインドフルネス呼吸法だけをやり続けてもいい。その呼吸法も「こうでなければいけない」というものもありません。

マインドフルネスを実践した体感は人によって異なるようですが、私は、すごく頭がすっきりして、なんだか身体が心地良い感覚を感じました。それは実践してからすぐに体感したわけではなく、1か月程続けた時に、ふと、「そういえば、なんだか最近身体全体が軽いな」という感じでした。

自分はちゃんとできているのだろうか? と成果が気になるかもしれませんが、そうした「成否のジャッジをなしにしていく」ことがマインドフルネスなので、いつどんな効果が表れるかと楽しみにしながら続けていってほしいですね。

マインドフルネスでも瞑想の方法をいくつか使っていますが、いわゆる瞑想と違ってマインドフルネスがよりユニークなところは、とにかく「注意を向ける」ことです。それは、マインドフルネスの一番の本質でもあります。

私も初めてマインドフルネスに触れた時に、マインドフルネスの「注意を向ける」と、目の前の仕事に「注意を向ける」、つまり「集中する」ことの違いに疑問を持ったのですが、両者には明確な違いがあります。マインドフルネスはただ集中力を上げるものではなく、「集中をしているが同時にリラックスしている」というとても特殊な状態をつくります。スポーツ選手が世界記録を出す時などは、この状態にあるといわれています。

日本でもマインドフルネスが流行しているのは、脳が疲れていることとストレスを抱える人が多いからだと思いますが、日本人は感情をあまり出さず、ストレスをため込んでしまうような傾向がありますね。

まずは、感情を抑え込まずきちんと吐き出すことが大事です。そして、仕事以外に逃げ道を作ること、オンとオフをきっちりわける儀式を持つこともいいでしょう。駅前に温泉があるところに住んでいて、金曜日仕事が終わると一風呂浴びることが儀式だったという方もいましたよ。

また、日本人の若者の自尊心は世界一低いというデータもありますが、自尊心を育てることもとても大切です。

自尊心の育て方を教科書的にいえば、人から言われることをいかに額面通りに受け取るかです。何か言われたときに「そんなことないです」とへりくだるのではなく、「ありがとう」と受け取る。厳しいことを言われても、強く受け取りすぎないようにする。そのためには、自分を客観的に見る作業が必要になりますが、客観を大事にするマインドフルネスのアプローチは、自尊心を高めることにも繋がると思っています。

一流のアスリートですらコンプレックスを抱え、自分を誇示するためにお酒やドラッグでごまかそうとしてしまうことがあるくらいですから、ビジネスマンでもコンプレックスに悩む人は多いでしょう。コンプレックスに負けず自信を持つために大切なことは、「自分のコンプレックスを克服する努力をするか、コンプレックスのある自分を受け入れておおっぴらに出してしまう」ことです。

アスリートのプレッシャーと比べると小さなことでしたが、私は自分の本が出た時、否定的なコメントを気にしていたこともありました。しかし「何事にも賛否両論は必ずある。どちらかしかない社会は健全ではない」ということに気づいてから、気が楽になりました。賛成があれば反対があるのが自然なことなのだと俯瞰できるのも、客観的な目を持つように努めているからかもしれません。

最後に、私の本のタイトルは「世界のエリートがやっている」としましたが、実際やっていることはとても基本的で、難しいことは何もありません。
ぜひマインドフルネスを実践して、最高の休息を体感してみてください。
久賀谷 亮◎医師(日・米医師免許)/医学博士。イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ神経精神医学会認定医。アメリカ精神医学会会員。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、同大学で臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。そのほか、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医など。2010年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical(くがやこころのクリニック)」を開業。著作に「世界のエリートがやっている最高の休息法」(ダイヤモンド社)。

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