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嫌われることを恐れない勇気をもつということ

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日経ビジネスオンラインの小田嶋隆さんのコラム、『「教育勅語」を愛する人々』を読みました。

この中で紹介されていた小田嶋さんのツイート、

教育勅語が若い世代を含む多くの日本人を未だに魅了してやまないのは、並列された文言の背景に一貫している「個々の人間の個別の価値よりもひとまとまりの日本人という集団としての公の価値や伝統に根ざした心情のほうがずっと大切だぞ」という思想が、根本的にヤンキーの美学だからだよ。

より大きな集合の一員であることの陶酔に挺身するのがヤンキーの集団主義道徳で、その彼らを結びつけている文化が友情・努力・勝利の少年ジャンプ的なホモソーシャルである以上、教育勅語はど真ん中の思想ですよ。

を読み、現在の日本に蔓延する閉塞感について改めて考えさせられました。

■シンガポールのNational Pledge

教育勅語は戦前・戦中の学校教育で重要視され、生徒全員が暗唱させられていたそうですが、実はシンガポールにも似たような「Pledege(誓約)」があります。

子どもたちは小学校に上がるとすぐに(娘の通っていた幼稚園では年長クラスから始めました)これを暗記させられ、毎日朝礼で唱和します。 そのためシンガポール建国後に教育を受けた国民であれば、全員これを暗唱できます。(この思想に基づいた「公民」教育も行われますので、ごく少数の例外を除きシンガポール国民は全員文部省管轄のローカル小学校に通うことが義務づけられており、インターナショナルスクールには入学できません)

また、このPledgeは軍隊や建国記念日の行事などでも必ず唱和されるため、首相や議員たちが子どもと並んで唱和している様子なども目にすることがあります。

内容はといえば、いたってシンプル。

We, the citizens of Singapore, pledge ourselves as one united people, regardless of race, language or religion. To build a democratic society, based on justice and equality, so as to achieve happiness, prosperity and progress for our nation. 私たち、シンガポール市民は、人種、言語、宗教にかかわらず、一つの団結した国民であることを誓います。正義と平等に基づき民主主義社会を構築し、私たちの国家のために幸福、繁栄、進歩を達成します。

※これは英語バージョンですが、中国語、マレー語、タミル語バージョンもあります。

簡潔さ、わかりやすさという点では教育勅語とは大きく違いますが、「心を一にして」は「一つの団結した国民」に似ていますし、「進んで公益を廣め」も「私たちの国家のために幸福、繁栄、進歩を達成します」に通じます。「徳」とされているところは「正義と平等に基づき」に近い概念ともとれます。

ぱっと見では、さすが「独裁国家」と揶揄されることもあるシンガポールならではの文言で、国家のために専ら精進して尽くしましょう、という大枠では教育勅語と大差ないように見えるかもしれません。 しかし、いっぽうで、二者の内容をよく吟味すると、主語と国民の定義が正反対であることがわかります。

■主語が「私」ではない教育勅語

企業理念や校歌など、日頃から私たちが唱和したり歌ったりするものには通常、「私はこうします」という決意表明ととれる主題があるのが普通です。教育勅語も似た側面はあるものの、主語はあくまでも明治天皇であり、「主」である明治天皇の「お言葉」を「従」である一般の国民が唱和するというところが非常に屈折しています。

例えば、会社の社長の訓示を毎朝、社員が聞くことはあっても、自分が社長に成り代わって話すという形態はいかにも不自然ですし私は聞いたことがありません。理念や会社方針など、たとえ社長が決めたことであっても、あくまでも主語は「私」や「私たち」であって、それを実行する主体として「私たち」が唱和するのです。

私は教育勅語を唱和した経験がないのでわかりませんが、主語が天皇のまま唱和されることにより、ひょっとしたら天皇が自分に憑依しているような、一体感、全能感が感じられるのでしょうか? もしそうだとしたら、教育勅語の主語である「天皇」は、あくまでも特定の「明治天皇」という個人ではなく、自分が一体化できる絶対者であり、一面では宗教的な受容者なのかもしれません。

いずれにせよ、「私」という自覚的な主体が存在しえないことは間違いありません。

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