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日本異質論 ~25年の今昔~

 経済産業省が、「世界が驚くニッポン!( http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170308001/20170308001-1.pdf )」と題する小冊子を発表し、話題を呼んでいます。 この小冊の中のコピーを並べると、「あなたは日本がこんなにも注目されていることを知っていますか?」「世界は日本に驚いている!」「日本人独特の自然感」「2020年に向けてWonder NIPPON探しの旅へ!」となります。

 本当に日本が注目されているのか(本当に注目されていたらそんな事アピールする必要はないのでは?)、本当に世界が日本に驚いているのか(こちらも本当に驚いているならとっくに報道されてアピールの必要はないのでは?)はさておき、全編に「日本人は独特だ」という主張があふれていることに、私は感慨深いものを感じます。それは、私が25年前に行った主張と全く逆のものだからです。

 もう25年も前の1990年、大学5年(医学部は6年制)の私は、日本経済新聞の学生論文コンテストで入賞し、副賞としてアメリカ視察旅行に行かせてもらいました。その時の論文の題目は当時欧米で流行していた「日本異質論」(「日本は欧米とは異質な文化や経済制度によって経済的成功を収めており、日本に対しては独自の対応―貿易自主規制等―を行って、日本経済一人勝ちを防ぐべきである。」、などとする論調)であり、私はこれに対して、「日本の文化・経済は何ら特殊なものではなく、普遍となりうるものだ。日本異質論は欧米の負け惜しみ的批判にすぎない。各国は互いの違いを非難しあうのではなく、自由主義経済という共通の土台の下で、互いの普遍的価値を学び合うべきである。」と言うものでした。  1990年、バブル崩壊直前の日本は、一人当たりのGDPで前年の4位からは順位を落として7位でしたが、その圧倒的な経済的成功に対して欧米各国から「日本は特殊だ」と批判され、私をはじめ多くの日本人がこれに対して「日本は特殊ではない。日本の制度は普遍的に世界に広がりうるものだ。」と反論していました。 そして25年を経て今日本は、一人当たりのGDPで26位まで落ち込んだ中で、日本は世界から讃えられていると信じ、自ら進んで日本は特殊だと主張しているのです。 日本は特殊なのか普遍なのか、どちらが事実でしょうか?

 中途半端な答えで恐縮ですが、私は、どちらも事実だと思います。日本に限らず、どの国の文化にも、その国でしか通じない特殊な部分と、広く世界で通用する普遍の部分があります。日本が経済的に成功を収めていた25年前、欧米各国は日本の成功を認めたくないから日本は特殊だといい、日本は自らの成功から普遍を作りだし世界に広める自信があるから日本は普遍だと主張したのだと思います。そして25年を経た今、日本は世界におけるプレゼンスの低下と経済的停滞を認めたくないから、普遍から目をそらし、日本特殊論の安逸の中に自らの価値を見出そうとしている様に、私には見えます。

 しかし私は、本当に日本が世界から注目され、本当に日本が世界から驚かれるためには、普遍を目指さなければならないと思います。 特殊は、世界中にあまたあります。世界の人々は、一度は日本の特殊な自然感に驚くかもしれません。しかし、特殊な自然感なら、バリにもありますし、アマゾンにもあります。アメリカ人の自然感も、ある意味特殊でしょう。世界各国に、国の数だけある特殊な価値は、それはそれで尊重すべきものですが、しかし、大きな価値を生むものではありません。 大きな価値を生むのは、世界中で受け入れられる、例えばインターネットであり、例えばスマートフォンであり、世界中の人が共有できる普遍的価値なのです。それぞれの分野において、新たに作られた、世界唯一の普遍に対してこそ、世界は驚き、注目するのです。

 自画自賛的日本特殊論の安逸の先に待っているのは、緩やかな衰退でしかありません。私は今日本に必要なのは、自らの力で世界に受け入れられる普遍的価値を作りだすという気概と、それができるという自信、そしてそれを実現する為の真摯な努力であると思います。

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