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原発避難者訴訟(前橋地裁判決)と東電の(津波の高さに関する)予見可能性

全国で集団訴訟が展開されている原発避難者訴訟において、前橋地裁が最初の判決を下したそうで、多くのマスコミで報じられているとおり、原告(避難者の方々)の東電、国に対する賠償請求の一部を認容したそうです。

私も東日本大震災の3か月後、商事法務さんのNBL956号(2011年7月1日号 28頁以下)に「原発事故にみる東電の安全体制整備義務--有事の情報開示から考える」と題する論文を掲載いただき、そこで「津波の高さについては、東電は想定外と説明しているが、結局のところは想定したくなかったというだけではないか」との論調で平時の東電社の内部統制構築について考察したので、とても興味のある判決です。

前橋地裁の判決要旨が今朝(3月18日)の毎日新聞に掲載されていましたが、2002年7月に策定された国の地震調査研究所本部による「長期評価」が(東電社の予見可能性ありとする)根拠とされたのですね。そこから想定される津波の高さを東電自身が算定することは可能だったとのこと。私は2008年ころに研究者の方々が東電に想定される津波の高さに修正が必要との要望を出していたことの評価及びたとえ津波の高さが予見できるものではないとしても、最終的に電源を確保する対策の有無が争点だと書きましたので、ここでは私の主張どおり、というわけではありませんでした。

当時東電は、2002年にとりまとめられた「原子力発電所の津波評価技術」なる報告書(土木学会作成)に基づく「予想される津波の高さは5.7メートル」を根拠に安全対策を講じておられたと思います。経営判断としてはこれ以上の津波を想定して安全対策することも可能だったかもしれませんが、過失を基礎付ける「予見可能性」を認定することはできない、といった主張が東電側から出てきているのではないでしょうか。

ただ、2002年といえば東電による「原発ひび割れ事故」隠ぺい事件が発覚した時期です。安全対策工事に従事したGE子会社社員の内部告発によって発覚した事件であり、当時の東電の複数の経営陣が責任をとって辞任しました。原発の安全性に関わる情報を国民に隠していた東電が、この時期の経営判断から「津波の高さは予見できなかった」「想定外だった」と主張するとなると、別件の事故とはいえ、かなり信用性が乏しいように思います。裁判官の心証として、そのような東電社の不祥事も影響していたのではないでしょうか(あくまでも推測にすぎませんが)。

私も上記論文では原発事業の公共性(1955年11月以降「日米原子力協定」が締結されて日本の原子力発電が常に官民協力の下に推進されてきた歴史)をもとに、国の責任も問われる可能性があるとしていただけに、今回の判決はとくに違和感はありません(ただ、控訴審でどうなるかは不明ですが)。単純に世の中の流れに沿った判決ではなく、東電側と原告の主張の合理性を詳細に検討したうえでの判断だったのではないかと思います。

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