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アマゾン「無料配送」ビジネスの功罪

■「フリービジネス」の前提とは?

 先月、「アマゾン配送料は値上げに向かう」という記事を書いてみたところ、奇しくも今月、ヤマト運輸が「27年ぶりに送料値上げする」との報道が為された。その時点では、アマゾンとの交渉にも入ったと伝えられていたが、現状では、アマゾン側は「無料配送サービス」を維持したいとの意向らしい。

 一頃、騒がれた「フリービジネス」とは、ことわざ的に言うなら「損して得を取れビジネス」のことであり、サービスを無料(又は激安)にすることによって顧客を大量に獲得するビジネスモデルのことを意味する。しかし、フリービジネスが成り立つためには、基本的に以下の2つの内のどちらか一方を満たしていなければいけない。

 1、集客することによって別の方法(広告収入など)で利益が生まれる。

 2、ある程度の顧客数に達すると料金を値上げする。

 大抵のネット通販企業は広告収入ビジネスにも手を出しているとはいえ、その収入の一部が配送業者に行き渡るわけではないので、基本的には「」の、ある程度の顧客数に達すれば有料(値上げ)に切り換えるしかない。そうしない限り、旺盛なフリービジネス需要に呑み込まれて、配送業者はジリ貧になっていかざるを得なくなる。「フリービジネス需要」と言えば聞こえは良いが、その実は「他者の利益を奪う欲望」のことである。

■「無料配送サービス」は「フリービジネス」

 アマゾンの「無料配送サービス」も元々は「フリービジネス」の一環であり、ある程度の顧客数に達すれば有料化するのは当然のことであると思われるのだが、一度下げた料金を上げる(元に戻す)という芸当は、デフレ思考が蔓延した日本社会では、外資系のアマゾンですら抵抗があるのかもしれない。

 大盤振る舞いの「プライム会員制度」が値上げの足枷になっているとも考えられるが、無料配送を止めるとなると、根本的なシステム自体を見直す必要に迫られるため、おいそれとは変更できなくなっているのかもしれない。

 プライム会員の年会費は3,900円であり、固定収入が入ることを目的として生まれたシステムだと思われるが、実際にプライム会員になっているような人は、3,900円分以上のサービスを要求(活用)しているわけで、例えば、2,000円分のサービスを利用するために3,900円も支払うような人はまずいない。

 プライム会員システムというものも、3,900円を超えたサービスは全て無料になるというシステムであり、食べ放題のような物理的な上限のあるシステムではなく、青天井システムであるという点ではフリービジネスだと言えるかもしれない。

■完璧な物流システムの盲点

 現状では、書籍を含まない買い物は2000円分以上購入しないと無料にならないということになっているが、漫画コミック1冊を無料で配送するというようなシステムが、本当にいつまでも維持できるものだろうか? そもそも「無料配送」というようなものは期間限定のキャンペーン価格として用意されたものであるはずだが、いつの間にか、そのシステムが常態化してしまったとも言える。スーパーのチラシでよく見かける客寄せを目的とした赤字覚悟の激安キャンペーンが年がら年中行われているようなものとも言えるわけで、そんな無茶なシステムがいつまでも維持できるとは思えない。

 傍からは、完璧な物流システムを構築したかに見えたアマゾンだが、デジタル化できるシステムとデジタル化できないシステムの狭間で行き詰まることになってしまった感がある。ネット通販システムはデジタル化されて効率化が進んだものの、取り扱う商品はリアルな物であるため、配送システムがパンクするとか、アスクルのように物理的な障害(火事)で一瞬で大きな損失を被るリスクも生じる。数百年後か数千年後にテレポーテーション技術でも発明されれば、全て解決するかもしれないが、現状では、その隙間に新たなビジネスが生まれる余地が有るという程度で、当分の間は、右往左往することになるのだろうと思う。

 アマゾンが無料配送サービスを止めれば、顧客が一時的に減少することは避けられないが、それでもネット通販を利用する人々は増加を一途を辿っていることは間違いないのだから、ジリ貧になるわけでもない。

 しかし、無料配送を請け負う宅配業者がいなくなれば、巨大なネット通販システム自体が崩壊してしまうというリスクが有るということも考えるべき時期を迎えている。「安ければ良い」というミクロ経済論者達も、その考えを改める時期に来ているのかもしれない。

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