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徳川埋蔵金の再発掘は実現するか? 株式会社ほぼ日がついに上場。株価は急上昇中。 - 中嶋よしふみ(SCOL編集長・FP)

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3月16日、株式会社ほぼ日が上場した。コピーライターの糸井重里氏が社長を務める会社だ。

何の会社か?と問われるとウェブメディアを運営したりニットを作る会社に出資していたりと事業がいくつかあって回答に困ってしまうが、売上の7割は手帳販売が占める。一言で表すなら「手帳屋さん」ということになるだろう。

日経新聞では糸井氏の発言が以下のように報じられている。

「16日、ジャスダック市場に新規上場したほぼ日株は買い気配のまま上場初日を終えた。終日買い注文が優勢で、取引が成立しなかった。同日午後に東京証券取引所で記者会見した社長の糸井重里氏は上々のスタートに「高く評価してくれるのは、『美人だ、美人だ』と言ってくれるようなもの。でも自分で鏡を見れば、そんなに美人じゃない、って分かっている」と話した。

~中略~

上場初日の16日、気配値は公開価格(2350円)の2.3倍の5410円。きょうの気配値の上限まで切り上がったが、糸井氏が経営トップをつとめている企業への「著名人ボーナス」とみる向きも多い。DZHフィナンシャルリサーチの田中一実アナリストは「業績や株主還元といったファンダメンタルズとはかけ離れた株価」と評価する。

出典:ほぼ日、上場人気 糸井社長「そんなに美人じゃない」 日経新聞 2017/03/16 (太字は筆者による)

日経新聞の報道にあるように、16日の時点でついている5410円という株価はあまりに高い。そして本日17日以降、株価はさらに値上がりする様子だ。

なぜこれだけ株価が高いのか? 理由としてそもそもよく分からずに株を買っている人がいる、そしてそういう人がバカみたいな高値でも買うと他の投資家が予想している、という二つの要素が考えられる。

そもそも美人とか株価が高いとか、何の話をしているか分からない人もいるかもしれない。糸井氏も、ほぼ日刊イトイ新聞も、ほぼ日手帳も、そして徳川埋蔵金も知ってるけど株なんて知らない、そんな人もいるだろう。そこでほぼ日の上場とその株価について解説してみたい。

■上場によって変わること。


ほぼ日が上場して何が変わるのか。それは「誰でもほぼ日の株を買えるようになる」という事だ。大手企業の多くは上場しているが、例えば大手でも上場していない企業にサントリーがある。サントリーの株は買いたくても買うことは出来ない。どうしても欲しければ株の9割を保有しているという創業家の資産管理会社にお願いするしかないが、まず売ってくれることは無いだろう。

誰でも株を買えるということは多数の株を保有すれば経営者を変えてしまう、つまり糸井氏を社長から引きずりおろす事も出来てしまうという事だ(これは株主の権利である議決権による)。

もう一つが会社のあらゆる情報を公表しないといけない、ということも上場による変化だ。ほぼ日は売り上げの大半が手帳によるものと言われてきたが、それが具体的な数字として誰でも見られる形で公表される。しかも3カ月に1度という頻度だ。

これは四半期決算といって上場企業に義務付けられている。そして年に一回は有価証券報告書が公開され、そこには1年間の成績である売上・費用・利益、そして資産と負債などの情報がまとめてある決算書も掲載される。

■株主総会で徳川埋蔵金に関する質問は回答を貰えるか?


株主総会が開かれれば糸井氏は株主の質問に答えなければいけない。手帳の売上が7割なんて偏り過ぎじゃないんですか?といった質問にも当然答える必要がある。この程度の質問は確実に出ることが予想されるため、事前にどのように答えるのか、想定問答集も作られる。

上場によって得た資金で徳川埋蔵金を再度発掘して欲しい、などという質問にも真面目に答えないといけない。おそらくそんな質問にも想定問答が作られる事は間違いない。「徳川埋蔵金は今でもあると思っていますか?」「徳川埋蔵金プロジェクトにいくらかかったんですか?」といった質問も出るかもしれない。

おそらく回答は「事業と関係の無い質問は答えられない」とか「収益の見込めない事業に多額の費用はかけられない」といったところだろう。上場によって企業は公的な性格も帯びる事になる。残念ながら個人の趣味にお金はつぎ込めない、というのが上場企業としての回答になる。

多少の冗談が許されるならば「上場でお金持ちになったので再発掘は個人的な趣味として検討します」くらいのアドリブは糸井氏から出てくるかもしれない(上場により数十億円の資産を築いた理由が埋蔵金の発掘を再開するためであれば拍手を送りたいところだが)。

そして有価証券報告書には「対処すべき課題」「事業等のリスク」など会社にとっての課題やリスク、つまり弱点までさらさないといけない。これも投資家に判断材料を提供するためだ。

上場したばかりのほぼ日は「新規上場申請のための有価証券報告書」を提出している。そこには以下のように会社経営を社長の糸井氏に依存していることや手帳に売り上げが偏っているリスクがハッキリと掲載されている。
「(2) 組織に関するリスク
2・代表取締役への依存について
創業者であり代表取締役の糸井重里は、当社全体の経営方針や経営戦略の立案をはじめ、社会的な知名度と信頼、広い人脈による関係構築、新規事業の構想、毎日のエッセイ「今日のダーリン」執筆等、当社の事業活動上重要な役割を果たしています。代表取締役に依存しない組織的な経営体制の構築を進めていますが、何らかの事情により代表取締役が業務を継続することが困難になった場合、一時的に事業推進力が停滞し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。」

「(4) 商品開発と販売に関するリスク
1・ 特定商品への依存度に関するリスク
『ほぼ日手帳』は、売上高の約7割を占め、当社の主要商品となっています。手帳市場動向に関する民間の調査によりますと、法人需要は経費削減等の影響で横ばいないし微減の一方で、デジタル文具やスマートフォンが普及したことで、アナログ手帳の良さを再評価する層が顕在化し、個人向けは底堅い動きになっていると見られています。また、手帳の中では女性を中心として綴じ手帳が成長を牽引しています。『ほぼ日手帳』は個人向けの綴じ手帳であり、足元の市場動向は堅調です。ただし、将来、市場動向が悪化し、また特定の仕入先への依存はないものの、仕入数量の減少や遅延等を通じて『ほぼ日手帳』の売上が減少する場合は、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。」

出典:新規上場申請のための有価証券報告書

上場をするとここまでアケスケに弱点を晒さないといけない、ということになる。残念ながら徳川埋蔵金というリターンがほとんど見込めない事業に資金を投じる、といった「リスク」は見当たらなかった。今の所は事業として埋蔵金発掘を行う予定は無さそうだ。

■ほぼ日の株価が高いと言われる理由。


糸井氏は上場初日に気配値の上限まで値上がりしたことについて、そんなに美人ではない、と発言している。これは「株式投資は美人投票である」と有名な経済学者であるケインズが説明したことによる。

美人投票で一位を当てるにはどうした良いか、それは自分が美人だと思う人に投票するのではなく、周りの人が美人だと思う人に投票しなければいけない。株も自分が良い会社だと思っても周りの人がそう思わなければ株価は上がらず、儲ける事は出来ない。

つまり株価が急騰した状況を糸井氏は上がり過ぎと評したわけだ。筆頭株主である糸井氏は株価が上がれば上がるほど大儲けするわけだが、株価の上昇は期待値でもある。そんなに高値になっても責任は取れませんよ、所詮は手帳屋ですから、といっているような状況だろう。

では株価の高い・低いはどのように判断すれば良いのか。一番シンプルなものに利益と株価を比較する指標にPER(ピーイーアール・株価収益率)というものがある。計算は簡単で、株価÷利益=PERとなる。つまり現在の株価は利益の何倍か?という数値だ。100億円の利益を出す企業の株価(時価総額)が1000億円ならばPERは10倍となる。

では何倍が目安となるのか。一つの目安としては日経平均のPERがあげられる。日経新聞社が選んだ日本を代表する225社を一つの企業のように考えて、PERが算出されている。3/16の終値で日経平均のPERは前期の利益を基準にすると17.46倍、今期の予想利益を元にした数字では16.21倍となっている。

ほぼ日が上場した新興企業の多いジャスダック市場の数値はそれぞれ23.90倍、18.16倍となっている。

前期と今期予想で数字が下がっている理由は、多くの企業が増益を予想しているから、そしてジャスダック市場の数字が高い理由はこれから成長すると思われる企業が多いから、ということになる。日経平均はすでに成長して成熟した大企業も多い。つまりこれからの成長率で言えば小型企業や新興企業の方がより高いと判断されているわけだ。

つまり、PERが高い方がよりその企業の成長性が高く評価されているということになる。

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