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米医療保険制度改革の振り返り-オバマケアは、なぜ人気がなかったのか? - 篠原 拓也

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■要旨

アメリカでは、2014年に、医療保険制度改革(いわゆる「オバマケア」)が実施され、国民皆保険制度の実現に向けた取り組みが進められた。その後3年あまりが経過し、無保険者割合の低下が進むなど、一定の成果が見られた。ただ、その一方で、国民の人気は高まらなかった。2017年1月20日に就任したトランプ大統領は、就任初日に、オバマケア見直しに向けた大統領令に署名した。

本稿では、健康保険市場の動向を中心に、オバマケアが浸透しなかった原因を、概観することとしたい。アメリカの医療制度の事例は、日本における今後の医療・介護制度の改革に向けた検討の際にも、参考になるものと考えられる。

■目次

1――はじめに

2――健康保険市場の加入動向
  1|加入の強制と、 未加入者へのペナルティーの拡大
  2|加入者は更に増加の見通し

3――医療制度改革の人気が高まらなかった様々な原因
  1|数多くの訴訟が起こされ、一部は連邦最高裁の判決にまで至った
  2|連邦議会では、廃止法案が可決され、代替案が公表された
  3|保険会社が相次いで、健康保険市場からの撤退を表明した
  4|世論調査では、オバマケアへの不支持が支持を上回って推移してきた

4――保険制度安定化のためのリスク管理プログラムが不十分であった
  1|オバマケアでは、3つのリスク管理プログラムが実施されてきた
  2|パートDと異なり、リスク管理プログラムが制限的であったことが、
    オバマケアの不満につながった

5――おわりに (私見)

1――はじめに

アメリカでは、2014年に、医療保険制度改革(いわゆる「オバマケア」)が実施され、国民皆保険制度の実現に向けた取り組みが進められた。オバマケアは、国民医療費の削減と、無保険者割合の低減が主な目的であった。その後3年あまりが経過し、無保険者割合の低下が進むなど、一定の成果が見られた。ただ、その一方で、国民の人気は高まらなかった。2017年1月20日に就任したトランプ大統領は、就任初日に、オバマケア見直しに向けた大統領令に署名した。
本稿では、健康保険市場1の動向を中心に、オバマケアが浸透しなかった原因を、概観することとしたい。アメリカの医療制度の事例は、日本における今後の医療・介護制度の改革に向けた検討の際にも、参考になるものと考えられる。

1 連邦や州が強制加入の受け皿として設けた保険提供の枠組み。全てのアメリカ国民がアクセス可能。健康保険市場で保険に加入すると補助金が支給されるなど、保険料が安くなるメリットがある。通称「エクスチェンジ」と呼ばれる。

2――健康保険市場の加入動向

2017年の健康保険市場の加入期間は、2016年11月1日~2017年1月31日であった。その間、個人保険への新規加入もしくは更新により、加入者の数は増加した。

1加入の強制と、 未加入者へのペナルティーの拡大
加入者増加の背景には、個人の加入を強制するための、未加入者へのペナルティーの存在がある。ペナルティーは、2015年、2016年と金額が引き上げられた。このため、前の年に、ペナルティーを支払って様子見をしていた人が、今年は制度に加入するといった動きにつながった。

図表1. 未加入者に科されるペナルティー

2加入者は更に増加の見通し
健康保険市場の加入者は、年々増加してきた。2016年には、1,270万人となっており、2017年には、更に1,380万人にまで増えるとの予想が立てられている。

図表2. 健康保険市場の加入者推移

3――医療制度改革の人気が高まらなかった様々な原因

健康保険市場の加入者が増え、無保険者割合は低下した。それにもかからず、オバマケアの人気は高まらなかった。その原因を探るべく、これまでの動きについて、振り返ってみよう。

1数多くの訴訟が起こされ、一部は連邦最高裁の判決にまで至った
オバマケアについては、多くの訴訟が起こされ、司法判断が示されてきた2。例えば、次の通り。

(1)保険加入の義務づけとメディケイドの拡大の合憲性 ― 合憲
国民の保険加入を義務付ける条項が、憲法に反するかどうかが争われた。2012年、連邦最高裁は、これを合憲とする判決を下した。
また併せて、各州が運営する低所得者向け公的医療扶助制度であるメディケイドについて、加入資格基準を拡大することについても、合憲性が争われた。連邦最高裁はこれも合憲とした。ただし、基準は拡大するものの、実際に加入資格を拡大するか否かは、各州の判断に委ねられることとし、もし拡大しない場合でも、連邦政府から州への補助金は失われないとの判決となった。

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