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飛べないハードルはない!と思ってきたけれど - 山口 真由

このたび、連載をさせていただくことになりました。

まずはご挨拶と自己紹介をさせていただきます。

私は、東京大学を卒業して、財務省で働いて、それから弁護士になって、その後、ハーバードに留学をして、昨年に日本に帰ってきた。そして、未婚のまま、今度の誕生日で34歳を迎えようとしている(笑)。

さて、私自身、20代から30代前半にかけて、とにかく目の前の仕事に追われていた。受験戦争を勝ち抜いてきた優等生にとっては、何事も「きちんとやらなきゃ」と思ったし、それでも自分の能力をはるかに超える量の仕事が降ってきたし、なによりも精いっぱいだった気がする。でも、それ以上に、ちゃんと恋愛をして人生のパートナーを見つけようと一生懸命頑張った20代、30代のはずだった

いつか結婚するものと信じていたけれど、「ああ、私、結婚しないまま34歳になるんだ」と思ったとき、ふと、そうか、もしかしたら、私この先ずっと一人なのかもしれないと、思いついた。これから先、結婚することがあるかもしれないけど、それはラッキーくらいに思わなきゃいけなくて、基本線として一人で生きていかなくてはならないと思ったときに、私はなんだか、どうしようもなく寂しくなってしまった。

別にここまでの人生を後悔しているわけではないし、これからの人生も精いっぱいやりたいと思っているし。でも、自分の家族を持てないかもしれないということは、なかなかつらい。私は、いつ、どうやって、こんな人生を選んでいたのだろう――人生の折り返し地点が見えてきた今、それを振り返ってみなきゃ。そして、この機会に、私と私のまわりのハイスぺ女子たちが、どうやって生きてきて、どうしてこうなってしまって、そして、これからどうやって生きていくのかを考えてみたいと思いついた。

それが、この連載をはじめようと思ったきっかけである。

1. 東大女子は「女子」ではない!?

私が東大と慶応に合格したとき、東大に進学すると母に言ったら、「もしかしたら慶応のほうがいいかもよ?」とちょっと不安げだった。けれど、私はそんな母の憂慮なんて気にも留めずに、東大に進むことを決めた

私がはじめて母が何を心配していたか思い当たったのは、新入生歓迎のイベントでのことだった。

「東大男子3,000円、東大女子2,000円、他大女子1,000円」と料金を要求されたときに、私はやや愕然とした。「男子」にも「女子」にも属さない特殊な分類の中に、自分が置かれてしまったように思えて、自分たちの「女性としての価値」を、はじめて思い知らされたからだ。

「東大には女子が少ないからもてるでしょ?」

と聞かれることがあるが、決してそんなことはない。
東大には、東大サークルのほかに、「インターカレッジ・サークル」、略して「インカレサークル」のほうが多い。「インターカレッジ」というのは、「大学の垣根を超えて」という意味なので、東大のほかにも他の大学が参加するということ。実際には、東大の「男子」たちのほかに、東京女子大学(東女:とんじょ)、日本女子大学(本女:ぽんじょ)、白百合女子大学(白百合:しらゆり)など、女子大の「女子」たちが参加するサークルを意味すると、大学に入って早々に知る。後に、「東大のサークルは、東大の男の子と女子大の女の子の出会いのための場」と聞いて、妙に納得した。

先ほどお話した、東大女子だけ料金設定が高い問題は、「東大男子と女子大の出会いのためのサークルに、東大女子が入ってきたら雰囲気が壊れるので、あえて入りにくくしている」と、真顔でいわれた経験がある。あながち、嘘ではないのかもしれない。東大のテニスサークルは全部で100を超えるくらいバラエティに富んでいるのに、東大女子が入ることができるものは3つしかなかったのだから。

東大に通う男の子にとっては、私大の可愛い女の子を彼女にするのがひとつのステイタスだったし、逆に、女子大の女の子たちにとっては、なかでは比較的ダサくない東大の男の子を彼氏に持つのが、いいこととされていた。そして、そこには「結婚」というゴールがちらついていたことも確かだった。

小倉千加子の『結婚の条件』(朝日文庫、2007年)という名著によれば、昔から「上昇婚」が、女子のゴールとされていたらしい。美しい女子が、自分よりも学歴も経済力も上の男性と結婚する――これが誰もがめでたいと祝う「よい結婚」とされるならば、大学時代から「結婚」をゴールに据えた男女の付き合いも同じ構図をとるのは自然だった。そう考えると、東大女子は需要がないことに気づく。

2. ハイスペ女子最強の学歴=慶応ガール

ただ、これは何も別に「東大女子」だけが味わってきた屈辱ではない。

国立市に位置する一橋大学も、近くに津田塾大学という女子大がある。一橋と津田塾の関係は、東大とトンジョ、ポンジョの関係と同じだと、一橋に通う高校のクラスメイトの女子は語る。

「新歓の勧誘に行ったら、すごいきれいな人たちがいっぱいいてびっくりしちゃった。聞いたら、津田塾だって。でも、きれいなのも当り前よねぇ。私たちが勉強している時間を全部、美容に割いてたんでしょ」

と、その一橋に合格した女の子は、苦々しげ、かつ、少し小馬鹿にした感じで言っていたけれど、まぁ、高学歴女子と女子大の女子の間には、お互いにあまり面白くないと思う気持ちがあったのは確かだった。

「ねぇ、同じクラスの〇〇君、トンジョの彼女を妊娠させちゃって、在学中に結婚することにしたらしいよ。んで、彼女のご両親は大喜びだって。『でかした』ってさ」

と、私たち東大女子の間では、意地の悪いうわさが立つこともあった。

そして、東大、一橋、早稲田をはじめ、高学歴女子たちは押しなべて女子としての価値を下げる中で、ひとつ例外があった。それが慶応だったのだ。高学歴と女子力をバランスよく保持するという意味で、慶応の右に出る大学はない。「怖いもの見たさのミス東大」とバカにされることが多かったミスコンテストだが、「ミス慶応」だけは別格の扱いを受け、アナウンサーの登竜門にもなっていた。

「慶応に進学したほうがいいという母のアドバイスは、こういう意味だったのか」と、私は、そのとき悟った。

3. 「飲み会だけ?なにそれ女郎じゃん」

一方で、弱小サークルの中には、東大女子だろうとなんだろうと、とにかく女子の頭数をそろえようとするところもあった。「僕たちサッカーサークルなんだけど、女の子は、普段の練習は来なくてよくて、飲み会さえ来てくれればいいから」と、熱心に声を掛けてきたサークルもある。

けれど、男女の差がない受験競争を勝ち上がってきた東大女子たちの中には、そういう「飲みサークル」に入るのはよくないという雰囲気があったように思う。そのとき、一緒に声を掛けられた東大の女友達は、

「飲み会だけ?なにそれ女郎じゃん」

と切り捨てた。

「女郎」っていうのも、ずいぶんな言葉だなと今になれば思う(笑)。東大の私たちにとっては、現代風俗よりも、日本史のほうがなじみが深かったのかもしれない。「飲み会だけでいいなんて、なんか女の子扱いされてる感じが嬉しい」と、私は思ってしまったのだけれど、まさかそれを口に出せる雰囲気ではなかった。

関連書籍

山口真由『ハーバードで喝采された日本の「強み」』(扶桑社)
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山口真由 山口真由(やまぐち・まゆ)
1983年、札幌市生まれ。東京大学法学部3年生時に司法試験、4年生時に国家公務員1種に合格。全科目「優」の成績で2006年に首席で卒業。財務官僚、弁護士を経て、ハーバード大学ロースクールに留学。2016年夏に修了。 『エリートの仕事は「小手先の技術」でできている。』(KADOKAWA/中経出版)、『いいエリート、わるいエリート』(新潮社)など著書多数。最新の著作は『ハーバードで喝采された日本の強み』(扶桑社) 山口真由オフィシャルブログはこちら

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