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「自分の脳みそが拒絶するくらい不思議な生き物に出会いたい」―生物ライター・平坂寛氏インタビュー

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珍生物をハントするのに特別な装備は必要ない

オオカミウオを釣り上げる平坂氏(提供:平坂寛)

―平坂さんのような活動をしていて苦労するのはどのようなところでしょうか。

単純に収入が不安定というのが一番の苦労です (笑)。あとオオカミウオの記事を書いた時は、思わぬところに飛び火してしまいました(※編集部注:平坂氏がTwitterにアップしたオオカミウオの画像が海外で一時「福島近海で獲れた異様な魚」として拡散。その後、大手メディアによって否定されることで収束した)。

僕はオオカミウオが好きなので、当時は「ふざけんな」と思いましたが、ああした反応があるということは、それだけ信じられないような見た目の魚だということの裏返しでもある。「気持ち悪い」と「かっこいい」は紙一重だと思うので、オオカミウオがやっぱり良い魚なんだということを、読者の反応が証明してくれていたんだと今は思うようにしてますね。

―特にお気に入りの生き物はありますか?

まだ記事にはしていないのですが、ワニガメは好きですね。カミツキガメは食べたことがあるので、ワニガメも食べるつもりで捕まえたのですが、思い入れが強すぎて、結局食べられなかったんです。実際に出会うと、図鑑で見るのと全然違うんですよ。小さい頃から大好きだったので、実物見たらかっこよすぎて、「これを僕一人の好奇心や知識欲で食べちゃったら一生後悔するな、もったいないな」と思ってしまった。

「なんでも殺して食うバーバリアン」みたいに思われているところがありますが、意外と人としての心は持ってるんです (笑) 。自分の気持ちに正直になることを選ぶようにしています。

もちろんワニガメを食べるところを見たい人はいると思いますが、僕が食べたくないと直感で思ってしまったら、それは食べないほうがいい。「生き物を食べて後悔する」というのは、すごいひどいことだと思うんですよ。殺しておいて、「殺さなければよかった」と思っているわけですから。それは取り返しがつかないですし、一生後悔はしたくないので、そこは直感に従うようにしてます。

―フィールドワークの中で一番痛かった思い出は?

レンタカーでアメリカのルイジアナを旅している時に、車がぬかるみにはまってしまったんです。それを押そうと思って降りたら、車がファイアアントというアリの巣を踏んでしまっていて。

刺されると火で焼かれたみたいに痛くなるからファイアアントと呼ばれているのですが、短パン、サンダル姿だったので両脚を刺されて、あれは泣きそうでしたね。その日にレンタカーを返却しないと「やばい、日本に帰れない」という状況で、必死になっているところを刺されて両脚真っ赤になって…。

ミツバチの群れに両脚群がられる、あるいは硫酸を脚から塗りあげられるみたいな痛みでしたね。結局、レンタカー屋目前でパンクして、飛行機にも乗り遅れてしまいました (笑)。

―珍しい生き物を捕まえるには、専門の装備が必要なのでしょうか。

提供:平坂寛

意外と要らないんですよ。いい道具を揃えているライターさんもいますが、適当でいいんです。僕は手ぶらで行ったりもします。本当になんとかなるんですよ。釣り針だけ財布に入れておいて、100均で麻ヒモ買って、それででかい魚釣ったりもしますし。

いい道具を使わないのは、「その状態が一番動ける」から。僕は気が小さいので、高価なものを持っていると、それをかばってしまう。将来ものすごいお金持ちになったら平気なのかもしれないですが、安いジャケットでもヤブとかに入って、木の枝に擦れて、どんどん防水性能が落ちていくのが嫌なんです。

であれば、ユニクロとかGUのシャカシャカの適当なやつを着て、使い捨てになってもいいくらいの勢いでいきたい。釣竿だって5万も6万もするものを使っている人もいますが、僕は3000円くらいので大丈夫です。釣れるんで、なんでもいいですよ。虫取り網だって5000円くらい、なんなら100均でもいい。

―子どもは基本的に生き物が好きですし、平坂さんの記事のファンも多いと思います。

ライターを始めた理由の一つに、本を書きたかったというのもあるんです。自分が子供の頃に読んでワクワクした生き物の本を、いつか自分が書く側に回りたい。昔から常々そう思っていたので、今は子供の頃の自分が読んだら喜んでくれそうなものを書いています。

実際に、イベントなどで会ったときに慕ってくれるお子さんもいます。もちろん嬉しいですけど、同時に「ちょっとこれじゃいけないな」とも思う。記事の主役は生物であって、僕になったらダメなんですよ。だから、僕を尊敬してくれるお子さんが増えているということは、僕が前に出すぎてしまっているのではないかとも思うんです。

NHKとディスカバリーチャンネルが獲ったものは個人でも獲れる

―今後の目標をお聞かせください。

かなり難しいのですが、コガシラスッポンというスッポンを見てみたい。東南アジアにいる絶滅危惧種なのですが、当然とるわけにはいかないので見るだけでいい。百何十キロとかある、めちゃくちゃでかい、ウルトラ怪獣みたいなスッポンで、それこそ悪ふざけみたいな見た目をしているんですよ。

あとキングコブラも捕まえてみたい。ジャングルや湖のそばに生息しているのですが、すごく分布が広くて、東南アジア全般に広く住んでいるといわれています。群れるわけでもなく「ここに行けば見れる」ということがないので、適当に目星をつけて、適当に毎日を過ごしていたら、そのうち会えるよみたいなところに惹かれますね。

―資金などの制約がなければ、世界中を見て回りたいというわけですね。

生き物を捕まえる上でのハードルを考えていくと、金を積めばとれるものが一番楽なんです。NHKやディスカバリーチャンネルが捕獲出来ているものは個人でも獲れる。少しお金を出して、漁船をチャーターすれば、ダイオウイカが獲れるんですよ!次に楽なのは身体張ったらとれるもの。その次が時間かければとれるもの。一番難しいのは、運が良ければとれるものですね。

―今後もっと深めていきたい生物のジャンルはありますか?

分類ではないですが、とにかく「危ない・強いやつ」ですね。鳥とかまだ全然詳しくないので、生物全般の知識を深めて生きたいとは思うのですが、最近は身体の衰えを感じ始めてしまっているんです。

だから、本格的に腰や膝が悪くなる前に、運動能力を求められることをやっておこうかなと思っていますね。先程いったキングコブラもそうですが、ホオジロザメ、大メジロザメ、イタチザメといった人食いザメは一通り捕まえたいですね。ホオジロは数が少ないんで、見逃してやろうかなと思っているんですけど(笑) 。

―本当に生き物が好きなんですね。

究極の目標は、一生新しい生き物を見続けること。それでいつかショック死するくらい衝撃的な生き物に出会いたい。例えば人魚とか、カッパとか、「ありえない」と自分の脳みそが拒絶するくらい不思議な生き物を見てみたい。たぶんいると思うんですよ、地球には。

プロフィール

BLOGOS編集部
平坂 寛 (ひらさか ひろし)1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがいの生物ライター。
個人サイト:Monsters Pro Shop
Twitter:@hirahiroro
Instagram:hiroshi_hirasaka

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