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「自分の脳みそが拒絶するくらい不思議な生き物に出会いたい」―生物ライター・平坂寛氏インタビュー

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BLOGOS編集部

「水の中でデンキウナギの電撃を受ける」「カミツキガメをから揚げにして食べる」などなど…体当たりな取材で一部の読者からネット上で熱狂的な支持を受けている生物ライター・平坂寛氏。

時に「そこまでしなくても…」と思わされるような生き物への情熱はどこから生まれ、どこに向かうのか。平坂氏に好奇心の源泉や今後の目標について語ってもらった。(取材・文:永田 正行【BLOGOS編集部】)

「もっとこいつを深く知りたいぞ」という時に食べる

―生き物に興味を持ったのは、いつ頃でしょうか。

「いつから」というのが分からないくらい、もう生まれてからずっと好きですね。両親が言うには、それこそ赤ちゃんの時から好きだったらしいんですよ(笑)。物心つく前から、その辺の虫を捕まえてずっと握ってたりして、大変だったらしいです。両親も生き物が好きで、父親は釣りやクワガタとりに連れて行ってくれました。

―大学では生物関係の学部にいたそうですが、具体的にどういう研究をしていたのですか。

琉球大学で沖縄の淡水魚について研究していました。元々、僕は沖縄の自然、虫も魚も鳥も、すべて好きでした。なので、何を研究するかは、すごく悩んだのですが、先輩や仲間と野外に出るうちに、川にたくさんの外来魚がいることに気がついたんです。

それまで外来魚といえば、ブラックバスとかブル―ギルぐらいだと思っていたのに、それが10種類も20種類もいる。そうした実態を見て、もうちょっと勉強して、こうした問題を広く本土の方にも知っていただく必要があると感じて研究をはじめたんです。

―外来魚が入ってきて生態系が壊れてしまうという危機感を伝えたかったということでしょうか?

危機感というよりも外来魚の問題の実態を知ってほしいという思いがありました。外来魚の中には、その魚が元々の生態系に入ってきて、どういう問題が起こるか自体が分かっていないものもいるんです。

「ブラックバスのような外来魚は生態系を破壊する悪いやつなんだ」と聞くと、「駆除すればいい」という話になって、そこで終わってしまう。自分で、「なんで悪いんだろう」「解決するにはどうしたらいいんだろう」ということを、考えてもらわないと根本的な解決につながらない。だから、興味のない人にも考えるきっかけを持ってほしいと思って、筑波大学大学院に進学してからライターの仕事を始めたんです。

提供:平坂寛
―デンキウナギや香港のドブに棲むナマズなど、いろいろなものを釣り上げて食べていますが、「食べること」に対して、こだわりはあるのでしょうか。

できれば全部食べてみたいと思うのですが、さすがに絶滅危惧種や、経験上、味の見当がついているものは食べません。でも、「もっとこいつを深く知りたいぞ」という時は食べます。

僕は魚専門、虫専門というわけではなく、どんな動物のことでも知りたい人なので、どうしても知識が”広く浅く”になってしまうんです。少しでも知識を”広く深く”にするために欲張りたい。多くの人が目で見るだけで終わっている部分を、こねくり回して匂いを嗅いで、食べて知ろうとしているのです。「美味しいものを食べたい」というわけではなく、「その生物のことを勉強したい」という視点で食べる。

「なんでこんな味がするんだろう」「なんでこんな食感なんだろう」といったように身の質などを意識して食べると、いろんなことがわかるんです。

―先日執筆されたデンキウナギの記事が話題になっていましたが、電撃を体験するにしても普通はせいぜい地上だけだと思います。それをわざわざ水の中に入って電撃を体験している。なぜそこまでやるのでしょうか?

好きだからとしか言えないです。陸上と水中では電気ウナギの電流が明らかに違うはずです。であれば、水中で感電するまで「デンキウナギの電気を感じた」とは言えないんじゃないかなと。陸上で触って感電して、食べちゃったら、一生後悔して、もう一回水の中で電流を感じにいくと思ったんですよ。だったら、もうやっちゃおうと。

でも事前に情報収集をして、「死なない」という確信があるところまでしかやりません。当たり前ですが、他の生き物が触れなくなるので、死んだらもったいない。

ニュースなどでは、危険なものは過剰なくらい「危険だ」と言った方が意識付けにもなるので正しい場合もあると思います。「場合によっては死に至る」ということをクローズアップした方がいい場合もあるでしょう。

水中で電撃を体験する様子(提供:平坂寛)

ただ、僕はちゃんと”知りたい”んです。虫に刺されたにしても、どういう症状が出るのかが、どの媒体も取材が適当すぎてバラバラなんですよ。「刺されたように痛い」とか、「痛みはないけど後々」みたいな表現をみると、「なんだ、それは?」と思います。であれば、僕が代表してちゃんと調べる。一旦経験してみると好奇心は収まりますし、「ちゃんとこの動物のことを知ることが出来たな」と思いますね。

―危険を冒してまで、「生き物を知りたい」という思いの根底にあるのは、純粋な好奇心なのでしょうか。

そうですね。ライフワークです。機会があれば書籍にまとめたりすることもあるかもしれませんが、基本的には好きでやってます。

今の時代、ネットを使えば、なんでもその場で分かってしまう。図書館に行けば図鑑だって、ものすごく充実している。だから、世の中の大抵のことは分かるのですが、僕はその”大抵から外れている部分”を知りたいので、そのためには実体験するしかないんですよね。

BLOGOS編集部

この間、オニヒトデという毒を持っている生き物に刺されたのですが、図鑑には「指先を刺されただけで腕がパンパンになる」「膨れ上がって激痛が走る」と書かれているのに、実際には全然毒針が刺さらない。

指先は皮が厚くて刺さらなくて、針が折れてしまう。皮膚が柔らかいところを押し付けても、なかなか刺さないから無理やりねじ込んでも、全然痛くないんですよ。普通の針を刺しているような感覚で。ぐっと押し込んでようやく毒の感じがしたので、抜いたんですけど、蚊に刺されたくらいしか腫れなかったですね。

僕がただ毒に対して強かっただけなのでしょうけれど、そんな風に図鑑に書いていないことを追いかけていくうちに、図鑑や本に書かれていることが、必ずしも正しくはないぞということを身に染みて感じるようになりました。図鑑には「この生き物は○○しか食べない」なんてことが書いてあったりするのですが、実際に捕まえて胃袋を裂くと全然違うものが出てきたなんていうケースはザラです。

ただ、ざっと知識をたくわえて生きている姿を見たいなら、動物園や水族館でいい。美味しいものが食べたいんだったら築地に行けばいい。どこにもない部分をとるには、苦労して体験するしかありません。執筆するためには、実体験がないと絶対いいものが書けないんですよ。

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