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個人向け国債の発行額が9年ぶりの高い水準となった理由

財務省は6日に3月15日発行分の個人向け国債の応募額を発表した。3月の個人向け国債の発行予定額は9315億円となり、2月の5727億円から大きく増加した。

3月発行分がわかったことで、2016年度の個人向け国債の発行予定額が算出できる。2016年度の個人向け国債の発行予定額は3種類合計で4兆5556億円となり、2015年の2兆1367億円から倍増し、2007年度の4兆6617億円以来、9年ぶりの高い水準となった。

2008年度以降、低迷し続けていた個人向け国債の発行額が何故、2016年度は大きく増加したのか。個人向け国債の発行額が低迷していた最大の理由が利率の低さにあった。利率の低い状態は2016年度も続いたが、日銀が2016年1月にマイナス金利政策を導入したあたりから状況が変わってきた。

さすがに預貯金金利はマイナスになることはなかったものの0.01%程度に低下したままとなっていた。周りの金利が下がったことで、個人向け国債の最低保証金利の0.05%が相対的に魅力的なものとなったのである。これが個人向け国債発行額増加の最大の理由となろう。

さらに今年3月の発行分の募集は2月であり、ボーナス月でもなんでもないときに大きく増加した理由については、販売する金融機関の事情もあったようである。

個人向け国債は金融機関を通じて販売される。米国では米財務省から直接購入できるが、日本では日銀に個人が口座を持てない等の理由もあって財務省ダイレクトといったものはない。このため証券会社やゆうちょ銀行を含む銀行などが販売している。その際に販売額に応じて、財務省は金融機関に募集発行事務取扱手数料を支払っている。それが2017年4月発行分(3月募集分)から下記のように引き下げられる。

固定3年額面100円あたり40銭が20銭に

固定5年額面100円あたり50銭が30銭に

変動10年額面100円あたり50銭が40銭に

このため金融機関は、個人向け国債が人気化しているタイミングで、しかも手数料が高いうちに積極的に大量に販売しようと、現金を贈呈するといったキャンペーンを強化したものとみられる(キャンペーンの原資は上記手数料となる)。

個人向け国債の販売額の増加は一時的なものとなるのか。それはこの手数料よりも、金利の動向にかかっていると思われる。日銀による長短金利付き量的・質的緩和政策を受け、特に10年変動タイプに影響する10年債利回りは当面、ゼロ%近辺に押さえ込まれることになる。預貯金金利も0.01%近辺のまま推移するとなれば、個人向け国債の最低保障利回りの0.05%の見直し等がない限りは、相対的な優位さは継続する。

しかし、本当に日銀は長短金利を現在の水準のまま、いつまでも押さえ込めるのかという疑問もある。米国はまもなく追加利上げを決定するとみられ、日本の物価もプラスに転じている。金利を取り巻く環境が変わると金利が動き出し、個人向け国債の優位性が薄れる可能性もないとは言えない。それでも安全性が高く、1年という売却できない期間はあれど元本が保証されるなど、個人向け国債は魅力的な金融商品であることに代わりはない。

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