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TBS「ビビット」がホームレス報道で謝罪放送

TBSの「白熱ライブ・ビビット」は3月3日の放送で、番組として正式に謝罪しました。

謝罪の内容は1月31日に放送した、多摩川の河川敷で犬と暮らすホームレス男性を取材したもので、私はその時の放送を見てあまりのひどさに怒りを覚えて「ヤフーニュース個人」に書きました。

MXと似てる?TBS「ビビット」もヘイト放送!(ヤフーニュース個人・2月2日)

あるホームレスの男性のことを一方的に「悪質」「違法者」と断罪していたのです。

タイトル画像のイラストはその時のものだが、河川敷で犬を多頭飼いして、

「犬男爵」

と呼ばれるホームレス男性が

「人の皮をかぶった化け物」ホームレス

だという説明で登場する。

現在、社会問題になりつつある東京MXテレビと同じくらいかそれ以上に相当に悪質な人権侵害といえる放送なのだ。

東京MXと共通して、登場する人物をあざ笑うような姿勢がある。

出典:ヤフーニュース個人

ホームレス支援団体「自立生活サポートセンター・もやい」の理事長である大西連氏も問題意識を共有してくれて記事を書いてくれました。

TBS「ビビット」のみなさまへ 悪意のある放送はホームレスの人を危険にさらすので、やめてください(ヤフーニュース個人・2月6日)

TBS「ビビット」のみなさまへ 悪意のある放送はホームレスの人を危険にさらすので、やめてください

出典:ヤフーニュース個人・2月6日

それでもTBSは動こうとしませんでした。

そこで2月26日、私が以前そのホームレス男性のSさんのところに学生と一緒に話を聞きにいったところ、「やらせ行為」の存在を疑わせるような発言をしていたので、TBSに調査を促すつもりで翌27日、もう一度、ヤフーニュースでこの問題を取り上げることにしたのです。

「TBS『ビビット』にヤラセを頼まれた」とホームレス男性が証言(ヤフーニュース個人・2月27日)

「TBS『ビビット』にヤラセを頼まれた」とホームレス男性が証言

出典:ヤフーニュース個人・2月27日

この段階でTBSは上層部も含めて危機感を募らせたようです。

当のホームレス男性のところにTBSの社員であるプロデューサーも足を運んで事情を聞いたようです。

TBSは「ビビット」で主なコーナーが終わった後で謝罪放送をして「不適正な行為」があったことを認めました。

「ビビット」では。午前9時45分頃からの放送で、女性アナウンサーが一人でカメラの前に立ち、以下のように語りました。

ここで番組から視聴者のみなさんにお伝えすべきことがあります。

私たちの番組では、1月31日に多摩川で生活しているホームレス問題を取り上げました。

この放送について、ホームレスの方々に対する差別や偏見を招くものであったという厳しいご指摘をいただきました。

放送内容と制作過程を改めて検証し、取材した男性を傷つける表現や不適切な点があったと考えます。

番組のホームページにも詳しく記載しています。

このような放送をしたことについて、視聴者の方々、関係者の方々、何より、取材を受けていただいた方々にお詫び申し上げます。

いただいたご指摘をしっかりと受け止めて、こうしたことが再び起きないように努めてまいります。

この後で女性アナウンサーは数秒間、頭を下げました。

この直後にTBS「ビビット」ぼ番組ホームページにも同じような内容の言葉が掲載されました。

http://www.tbs.co.jp/vivit2015/

「『お前らここで何をやっているんだ』と言いながら歩いてきてほしい」と伝えました。

出典:TBS「ビビット」番組ホームページ

このなかでは、ホームレス男性Sさんが「やらせを頼まれた」と証言していることについても事実だと認めています。

こうした比較的迅速な対応は、テレビ業界にいた人間としてきわめて真摯な姿勢だと感じました。

個人が「ヤフーニュース個人」で発信したことに対して、それが事実であれば既存の大手マスコミも無視できない時代になったのだとも感じました。まさにメディアが変化しつつある時代を象徴するような出来事です。

以前、記事に書いたように、ホームレスの人たちをめぐる問題は複雑です。

知的な障害を持っている人も少なくないホームレスの人たちについてごく短期間の表面的な取材をして、この人たちはこう発言している、とか、こういう生活している、というのは、実態を反映していない場合や社会に対して余計な偏見や先入観を植え付ける報道になってしまう可能性が高いのです。そうした報道自体がホームレスの人たちへの心無い襲撃事件などの背景にもなりかねない現実があります。

そういう中で、ホームレスの問題を今後きちんと取り上げようという姿勢を「ビビット」が見せたことは本当に大きな一歩だと思います。

とはいえ、まだまだ「ホームレス」というだけで「好きでやっている」「お気楽な連中」というような視聴者受けしやすいアプローチの番組は民放には相変わらず多いと感じています。

特にSさんに関しては、TBSは他にもひどい放送をしていたことが判明しています。

ひどいなと感じたのは、朝の情報番組「あさチャン」です。

「あさチャン」は「ビビット」の直前の情報番組ですが、驚いたのは昨年12月12日の放送でした。

この時、番組スタッフはSさんの居住空間の周囲に「監視カメラ」を設置して撮影したのです。


[画像をブログで見る]

「あさチャン」でSさんについて伝える夏目三久キャスター(昨年12月12日)

ふつうホームレスの人たちへのアプローチといえば、夜回りなどで路上で声かけをしているホームレス支援団体も、ダンボール箱などで寝ている人たちにそっと声をかけて「お話してもいいですか?」と気を遣いながら状況を聞いていくのが普通です。

それはたとえ路上を「不法占拠」しているホームレスの人たちでもプライバシーや人権がある、という当然の社会常識からの配慮です。

ところがこの時の「あさチャン」の取材スタッフは、国有地を不法占拠しているから、としてSさんの周囲に監視カメラや暗視カメラを設置してSさんの行動を撮影してその映像を放送したのです。

ホームレスの人たちがいくら「不法占拠」しているからといっても、そこで生きる人の尊厳を大切にしない乱暴な放送だといえます。

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Sさんの居住空間にカメラを設置する「あさチャン」担当者(昨年12月12日放送)

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Sさんの居住空間の周囲で監視カメラを確認する「あさチャン」担当者」

また、 TBSでいえば、昨年12月2日のニュース番組「Nスタ」も、番組スタッフが同じようにSさんの周囲に暗視カメラや監視カメラを仕掛けていました。

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「Nスタ」のスタッフが仕掛けた監視カメラ(昨年12月2日放送)

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監視カメラの映像を確認する「Nスタ」スタッフ(昨年12月2日放送)

この2つの番組の映像は似ていたので同じスタッフによる映像かもしれません。ただ、通常、「Nスタ」はニュース番組であり、報道番組というジャンルに入って「報道局」が管轄します。「あさチャン」や「ビビット」など情報番組は「情報制作局」という別のセクションが管轄しているはずです。私がかつて勤めていた放送局ではあまりなかったことですが、TBSでは取材映像を情報番組と報道番組で共有することが行われているのかもしれません。このあたりは局内の事情はよくわかりません。

今回の「ビビット」の出来事は「苦い教訓」だったかもしれません。

でも問題は「ビビット」だけではありません。

同じ情報制作局の「あさチャン」はどうなのか?

報道局が管轄する「Nスタ」は問題はないのか。


ホームレス問題をきちんと理解した上で適切な取材や放送を行っているのか。

ぜひTBS全体でも共有し、テレビ業界全体が偏見ではなく、理解がある放送をするようになることを願っています。

でも、真摯な対応を見せてくれたTBSの姿勢に、テレビはまだまだ捨てたものじゃない、という思いを持ったことも事実です。

今後に期待しています。

※Yahoo!ニュースからの転載

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