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「面会交流」に、ひとり親は殺された

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ひとり親支援を続けてきた、認定NPO法人フローレンスの駒崎です。最近、ショックな事件がありました。

先月、長崎県諫早市の野中千晶さん(28歳)が、元夫(30歳)に2歳の息子を面会させるために出かけ、元夫に刺殺されるという痛ましい事件が起きました。

長崎女性刺殺:被害女性、子ども面会、長崎県諫早署に伝える- 産経新聞

https://www.google.co.jp/amp/www.sankei.com/west/amp/170202/wst1702020083-a.html

 元夫は、その後、男児がいた自身の自宅で首をつって死亡しており、自殺した可能性が高いとして捜査が続いています。子どもにとっては、父親に母親を殺され、父親も失ったのです。

 なぜ、ストーカー的な夫に子どもを会わせなくてはならなかったのか。それは離婚時に、子どもを引き取った親が元配偶者に子どもを会わせる「面会交流」の取り決めがあったからです。

【面会交流とは何か】

面会交流とは、離婚後又は別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行うことです。

 例えば母親が離婚後に子どもを引き取った場合、子どもに会いたい父親のために、また子どもが父親に会いたい場合もあるので、裁判所が調停して、設定されます。

 でも、今回みたいにストーカー的な夫だったら、夫が会いたいと言っても、会ったら危ないなら拒否すべきですよね。

 それが、できないんです。

 現在、家庭裁判所は「面会交流を原則行う」というスタンスになっているためです。

【面会交流の事実上強制】

 なんでそんな馬鹿げたことを?と思われるかもしれません。

 しかし、裁判所はこう考えています。

「父母が離婚又は別居しても、子にとっては親であることは変わりはなく、非監護親からの愛情も感じられることが子の健全な成長のために重要である。

面会交流が実現することで、離婚や別居による子の悲しみや喪失感が軽減されることが期待できる。

そして民法改正の立法の経緯においても、子の養育・健全な成長の面からも、一般的には親との接触が継続することが望ましく、可能な限り家庭裁判所は親子の面会ができるように努めることが民法766条の意図するところとされている」

(出典:第6回 面会交流の調停・審判事件の審理 水野有子・中野晴行)

 裁判所と民法の意図することも分からないではないですが、あくまでも一般論としてはそう、ということに過ぎません。

 モラルハラスメントやDVが疑われるケース(「高葛藤」という表現が用いられます)の場合、父母は強く対立し合っていますし、そういうケースの場合は、別れた父親(もしくは母親)に会わない方が、子どもの健全な成長に資することはいくらでもあります。

 さらに、「民法766条の意図するところとされている」としていますが、民法766条(http://bit.ly/2llVWbW)には、このようにしか書いていません。

第766条

1. 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める

「面会交流は協議で定める。その場合は、子どもの利益を最優先しよう」と言っているだけで、「面会交流は子どもの利益だから最優先です」とは言っていないのです。

 しかし、裁判所の中ではいつの間にかそれがすり替わってしまい、面会交流を原則的に推進しているのです。

 証拠に、東京裁判所の裁判官だった細矢郁氏も、自らの論文で語っています。

「東京家裁においては、以上(民法766条等)を踏まえ、子の福祉の観点から面会交流を禁止・制限すべき自由が認められない限り、(中略)面会交流の円滑な実施に向けて審理・調整を進めることを基本方針としている(中略)

このような面会交流事件の審理に関する基本方針は、現在の家庭裁判所の実務において広く共有されているものと思われる」(出典:「面会交流が争点となる調停事件の実情及び審理の在り方」細谷・進藤・野田・宮崎)

 そして、長崎で裁判所から面会を強制された母親は、ストーカーの夫に、刺し殺されたのです。

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