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学問は自由だ ~教育勅語とワンピース~

 「人生を変えた本」を聞かれることがあります。私は子供のころ随分読書家で、名作と言われる古典的文学作品は和洋問わずほとんど読みました。でもその中で、もしかしたら私の人生に大きな影響を与えたのは、「学問は自由だ」という、エッセイ集だったかもしれないと思います。この中で数学の先生が、「教科書に書いてあることは、覚えるものではない。教科書に書いてあることは、全部自分の頭の中で組み立てられるはずのものだ。何か教科書を読んだら、そのページを閉じて、そしてそのすべてを再現できるまで一から自分でとことん考えなさい。そうしたら、教科書と同じ結論になるはずだ。とことん考えても疑問が残ったら、その疑問は研究のテーマとして持ち続けなさい。」と書かれていました(記憶に頼っているので不正確ですが)。私は、それまでも割と「なぜか」という事が気になる方ではあったのですが、そうは言ってもそれまでは勉強というのは偉い人が教科書に記述したものを「覚える」ことだと思っていましたので、「一からとことん自分で考えたら、同じ結論になるはずだ。」と言う言葉と、その上で残った疑問こそが研究のテーマになるのだという言葉にはずいぶん衝撃を受けました。

 その後、大学に入って、色々な教科書を読みました。勿論事柄を記述する系の教科書も多々あるのですべてがということではないのですが、数学や物理学の教科書は、確かに、一からとことん自分で考えれば、自分で論理をたどれることに気がつきました。経済学や法学の教科書も、相当程度自分で論理をたどることができました。そしてそれは、私が様々な勉強をする時に非常に役に立ちました。他人の言っている事、他人が書いた事を頭から信じるのではなく、一から自分でとことん考える事によってこそむしろ、より多く人から、より多くのことを学ぶことができることを、私はこの一冊の本から学んだように思います。

 昨今特定の形式の「愛国」を幼稚園児に教え込み、「教育勅語」を金科玉条として一言一句違わず暗唱させる幼稚園と、それと軌を一にする開設予定の小学校が話題を集めています。園児たちは、この理事長の言う事を頭から正しいと信じ込み、この理事長のいう「愛国」と、この理事長が推奨する「教育勅語」を、なぜそれが正しいのか、それが正しいとしてなぜ他のものではいけないのかについて、何一つ自分で考える機会を与えられていないように見受けられます。

 勿論私が自分で考えることの重要性を、一冊の本との出会いによって自覚したのは高校生の時であり、幼稚園児や小学生が、教わったことの意味を一から自分で考えることには無理があるでしょう。それでも私は、疑問を感じる事、自分の頭で考える事の重要性のエッセンスは、子供のころから、繰り返し教えるべきことだと思います。それによってこそ人間は、より多くの人からより多くの事を学び、様々な場面で自分の頭で考えて、柔軟に対応し、自らの力で自らの未来を切り開く事ができるようになるからです。

 特定の時代の特定の価値観や文化を頭から正しく美しいと教え込み、他の時代の他の価値観や文化を頭から否定する教育は、私には、子供たちから自ら学ぶ能力を奪い、未来を閉ざすものにしか思えません。この問題が、子供たちの未来を閉ざさない形で解決されることを祈ります。

追記:「教育勅語」に記述されている道徳律が決して悪いものではないことはその通りだと思うのですが、同内容の道徳律は「ワンピース」や「ドラゴンボール」「スラムダンク」にも記載されており、短いという点では教育勅語に軍配が上がりますが、面白い、分かりやすい、心に残るという点ではワンピース、ドラゴンボール、スラムダンクに軍配が上がり、道徳律を身につけさせることが目的ならどちらを選んでも大差ないように思います。

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