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<大手メディアが報じない>安倍政権下で進む取材規制問題

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]

***

安倍晋三政権に腰が引けた新聞やテレビの報道姿勢が目に付くなかで、それまでは自由な質疑応答が行われてきた閣僚会見に質問の事前通告制が持ち込まれたり、各部課の職員たちが執務する部屋への記者の立ち入りが禁止されたりするなど、中央省庁の取材規制が強まっている。

政治とメディアの関係で、前者が優位な現在の力関係が反映されているのだろう。フリーランス記者としていくつかの閣僚会見に参加する筆者(上出)も、各省庁でじわじわ進むこうした規制の息苦しさを肌で感じている。

以下は、その取材現場からの報告。

【参考】トランプ大統領と安倍内閣に媚びる日本の全国紙

<経産省が各部課への記者の入室を禁止>

貿易や産業の振興、原発政策などを所管する経済産業省で2月27日から庁舎の管理が強化され、同省担当の記者たちの取材にも影響が及んでいる。

それまで来客者は、職員がいる各課の執務室に比較的自由に出入りできたが、同省は「情報管理の必要性が高まる中、行政の信頼性を確保するため」として執務室の完全ロック制を実施。報道目的といえども原則として記者たちは各階の省内電話で職員を呼び出し面談スペースなどで取材をしなければならない。最前線の「仕事場」から記者を締め出すという点で、一種の取材規制である。

閣僚会見で大手メディアの記者から厳しい質問が少ないことを拙稿でたびたび指摘しているが、さすがにこの庁舎管理強化の方針が公表された翌日の21日、私も参加した世耕弘成経産相の定例会見では、「取材がやり難くなる」「広報を介した取材が増えるのでないか」「既に一部の課への直接取材に支障が出ている」など、入室禁止への不満や懸念を口にする質問が相次いだ。

ただ、記者クラブは正式な抗議や申し入れをしていない。

<税金で運用する公共空間はオープンであるべき>

庁舎管理の強化自体は、持ち物検査の実施などとともに公的な機関でかなり以前から広がっている。例えば、昔は警察署の刑事部屋に記者が自由に出入りできたのに、現在は多くの警察署が入室を禁止し、外務省などでも執務室への入室が制限されている。

官房副長官として長年、首相官邸の「マスコミ対策」を担ってきた元NTT広報マンの世耕経産相の目には同省の庁舎管理が生ぬるく映ったのだろう。しかし、国民の税金で運用される公的な機関は、テロ対策などの名目で安易に庁舎管理の強化に向かうのではなく本来、可能な限りオープンな公共空間とすべきではないのか。

ところが反対に、取材のための入室まで禁止するとは、私を含め記者たちも舐められたものである。

<事前の通告がないと質問できない不自由な閣僚会見>

もう一つの取材規制は、私が参加する経産、外務、総務の3閣僚の記者会見がいつの間にか、国会での審議のように質問の事前通告を強いられるようになったことである。

皮切りは経産相会見。第二次安倍晋三政権の発足翌年の2013 年、当時の茂木敏充経産相(現・自民党政調会長)の指示で、記者が質問内容を会見前日の夜までに広報室に連絡することが慣例化。続いて2015年夏に岸田文雄外相、2016年夏には高市早苗総務相の会見も事前通告制となった。

記者クラブに所属しないフリーランスの記者の場合、外相と総務相の会見は事前の連絡がないと、質問の有無にかかわらず会見自体に参加できない。

【参考】「嘘のない報道番組」こそ地上波のキラーコンテンツだ

<「オープン」記者会見が次第に形骸化>

閣僚会見は毎週火曜と金曜の閣議後、ほぼ同じ時間帯に開かれるが、以前なら別の会見に途中参加することも可能だった。しかし、質問や出欠の事前通告が必要な現在は、会見の開始時間がかなりずれていない限り、複数の会見に掛け持ち参加するのは難しい。

いずれにせよこの事前通告制は、とくにフリーランスの記者にとって手続きの煩わしさを含め「質問封じ」とも言える悪しき仕組みであり、何でも自由に質問できる原子力規制委員会や民進党の会見などに比べて質問のチャンスが限られる。

民主党政権下で実現した「オープン会見」の形骸化が進んでいることを指摘せざるを得ない。

<取材規制の問題を報じないマスメディア>

残念ながら新聞やテレビは、こうした一連の取材規制の問題を報じていない。一方、閣僚会見に参加するフリーランスの記者も最近はあまり目に付かず、私一人が抵抗しても限界がある。

安倍政権の「思う壺」にまんまとはまっているのは何とも心苦しい限りである。

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