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フランス大統領選 「極右」のレッテルはもう古い 社会的弱者の「護民官」演じる国民戦線のルペン党首

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投石、催涙弾、ロケット花火が飛び交う集会会場

催涙弾やロケット花火が飛び交った反ルペンデモ(2月25日、仏西部ナント、木村正人撮影)

[フランス西部ナント、ロンドン発]4~5月に迫ってきたフランス大統領選の世論調査で首位を走る右翼ナショナリスト政党「国民戦線」の党首マリーヌ・ルペン(48)が2月26日、フランス西部ナントで選挙集会を開いた。ナントは左派の強い地盤だけに「ルペン阻止」を叫ぶ極左と保安機動隊が衝突、投石、催涙弾、ロケット花火が飛び交う壮絶な事態となった。

26日の選挙集会。会場の大型劇場(収容人員9千人)は動員された大型バス17台分の支持者で埋め尽くされた。白のブラウス、黒のスカートスーツ姿で颯爽と登壇したルペンは「私たちのイデオロギーはすでに勝利している」と力を込めた。国民戦線のスローガン「国民の名の下に」が大きく掲げられている。

ヘルメット、ガスマスクのフル防備で取材に当たる女性カメラマン

極左と国民戦線の支持者の衝突を回避するため保安機動隊は約100台の車両を動員して厳戒態勢を敷いた。前日の25日、ルペンの選挙集会に反対する抗議活動を取材したが、地元カメラマンから「今日のデモも荒れるぞ」と声をかけられた。うち1人はフランス北部カレーの難民キャンプ取材で出会ったカメラマンだった。

催涙ガスを浴びた時に目を洗う中和剤とマスクをもらった。自転車店を探して急遽、ヘルメットを購入し、うがい用に飲料水ペットボトルも用意した。2千人を超えたデモ行進は「国民戦線をナントに入れるな」というシュプレヒコールとともに平和裏に始まったが、保安機動隊のバリケードに向け爆竹が投げ込まれたとたん、黒ずくめの極左集団と保安機動隊の激しい「戦闘」が始まった。

催涙弾を構える警官隊(撮影:木村正人)

保安機動隊が催涙弾の銃口をこちらに向け構えている。ロケット花火が立て続けに発射された。保安機動隊の遊撃隊が警棒を手に一気に極左集団に切り込んでいく。爆竹の煙と催涙弾のガスが立ち上る。近づこうにも催涙ガスに目とノドをやられて前に進めなくなった。救護チームの女性に目を洗浄してもらった。

移民としての背景を持つ少年が極左に交じって投石を始めた。カメラマンも標的だ。この日、極左やフードで顔を隠した少年たちの投石で保安機動隊の十数人が負傷し、極左活動家ら8人が逮捕された。

広がりが感じられない”反ルペン運動”

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3泊4日の日程で筆者がナント入りした目的は、マリーヌの父ジャン・マリー・ルペン(当時、党首)が2002年のフランス大統領選で決選投票に進んだ際、全国的に広がった「反ルペン」「国民戦線阻止」運動と比べるためだった。

このとき父ルペンは決選投票で17.8%しか集められず、以後、国民戦線の党勢は低迷する。

極左集団に襲撃された国民戦線のバス(撮影:木村正人)
集会当日の26日はナントに通じる幹線道路で古タイヤが燃やされた。立ち往生した国民戦線の大型バスが、鉄パイプで武装した黒ずくめの極左集団約50人に取り囲まれ、ペンキを掛けられる嫌がらせを受けた。集会会場は鉄柵で囲まれ、国民戦線の屈強な私設警備隊が厳重な警戒態勢を敷き、まるで要塞のように見えた。

怒り、警官隊に向かって投石する若者
ナントで目撃した抗議活動は過激だったが、反ルペン運動の広がりは全く感じられなかった。その過激さゆえに、一般市民の政治不信をさらに深めているだけのように見えた。

マリーヌのフェイスブックやツイッターには集会の告知がされていたが、極左の潜入を防ぐため、一般参加は締め出されたようだ。直近の世論調査では、フランス大統領選は、マリーヌと中道政治運動「前進(En Marche!)」のエマニュエル・マクロン(39)の一騎打ちになる様相が強まっている。

マリーヌは選挙集会で最大の敵となりそうなマクロンに集中砲火を浴びせた。「マネーとメディアはマクロンの味方だ。(投資銀行出身の)マクロンはバンクとつながっている」。マクロンはフランスのアルジェリア支配を「人道に対する罪」と切り捨てたが、マリーヌは「こうした考えこそが大量移民の根っこにある。私たちはもう大規模移民を受け入れることはできない」と攻撃した。

欧州議会から秘書給与を不正に受給していたとの疑惑でマリーヌの女性秘書に対する捜査が公式に始まることについて「マクロンを支援するため、メディアも国家権力も私を攻撃している」と激しく反論した。

マリーヌ・ルペンの演説に熱狂する支持者(撮影:木村正人)

会場を見渡すと、マリーヌの支持者は新自由主義(ネオリベラリズム)とグローバリズムの「白い負け組」であることがひと目で分かる。単純労働者やブルーワーカー、年配者といった経済的にも政治的にも疎外されてきた庇護を求める社会的弱者なのだ。

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