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朝日新聞「月刊Jounalism」編集長に聞く「自殺報道ガイドライン」

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記事では記者の”葛藤”が伝わらない

―'11年5月、グラビアアイドルの上原美優さんが自殺した。内閣府参与(当時)だった、NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンクの清水康之さんが、直後に自殺増えたと報告したことについて、朝日新聞は「上原美優さんの影響」と報じた。しかし、清水さんは自殺の影響ではなく、自殺報道の影響と指摘していたため、朝日新聞は訂正を出している。

岡田:このおかげで議論が進んだ。あれがなかったら話が進まなかった。記者が清水さんにインタビューし、記事を掲載した。そのとき、私の署名記事で「きちんとしたガイドラインを作ります」と約束をした。紙面で約束をしたから、絶対に作らないといえない状況になった。

―'16年9月11日、朝日新聞には「13階から飛び降り『直後に後悔』自殺未遂者語る」という記事が掲載された。一命をとりとめた40代の女性が、ゆっくりと落ちていく中で、「死にたくない」と感じたことを証言していた。この日は世界自殺予防デーだった。

岡田:こういう記事はタイミングを作って出している。タイミングの見つけ方は記者の感性。よくアニバーサリー・ジャーナリズムと言われることがある。それも報道する側の工夫。世界自殺予防デーとか、自殺予防週間(9月10日〜16日)、自殺対策強化月間(3月)などタイミングを見つけて、溜めていた記事を出す。

―いじめ自殺の場合、本当にいじめだけが原因なのが言われることがある。

岡田:いじめの場合は難しい。何をもって「いじめ」と言うかというところから、判断しなければならない。みんながみんな「これはいじめです」というケースはほとんどない。親はいじめと言っているが、学校や教委は認めない、ということがある。また、いじめには加害者がいる。加害者はまだ子どもだ。そのケアを考えると難しい。何があったのか知りたいから取材したい。しかし、どこまで取材すべきか、どこまで接触すべきか、記者は悩む。ただ、接触しないとわからない。非常に難しい取材だろう。

―新人記者時代、「中学生が自殺をした」という話を聞いて取材をしたことがあった。いじめの噂はあったが、確定的な証言はなかった。遺書もいじめに関することは書いていなかった。そのため、記事にはしなかった。社会問題に関連しない自殺の場合、メディアでは書かない。

岡田:一人の中学生が自殺した場合、病気や家庭の問題が原因であれば、報道しないが、自殺をしたのが複数だとすると、そうした背景でも報道することがある。なかなか判断が難しい。交通事故の場合、一人の死亡よりも、三人の死亡のほうが大きく扱われる。その同じ発想ではないか。どういう線引か。それは普通のニュース判断と同じではないか。

―私は自殺をしたい若者たちを取材している。'02年、取材していた中学生が亡くなったことがあった。読売新聞の夕刊に記事があり、年齢と住所で「もしかして?」と思った私は、その中学生のホームページを見た。すると、自殺予告をしていた。実は、家庭で虐待を受けていたのだが、読売の記事はそこまでは書いておらず、ストレートニュースで掲載していた。その記事内容でどうして載ったんだろうと思ったことがあった。

岡田:社によって判断が違う。中学生ということで載せたのかもしれない。読売や毎日のガイドラインを見たことがないので、自殺のことをどこまで言及しているのかわからない。デスクによってはあり得たのかもしれない。朝日が一番、抑制的だとは思う。「書いて解決すべき」という記者もいるだろうが、影響が心配。そこは配慮できるところがあるだろう。

事件報道小委員会に出る四本社と北海道支社に、事件担当デスクがいる。「迷ったら事件担当デスクに聞け」と言っている。それでも迷ったら、編集局を巻き込むことになる。大抵は、事件担当デスクで判断している。

―朝日の場合は、ガイドラインを公表している。公開の意味は?

岡田:事件報道というのをなるべく知ってもらいたい。現場は相当悩みながら取材し、書いている。自分の記事で悪影響が出ないようにも考えている。でも、新聞の記事は事実しか伝えない。そのため、その葛藤が伝わらない。

'04年版には固有名詞が入っていたために、'05年版を改定し、一般向けに市販している。'12年版は最初から市販を考えて作った。コンプライアンスから考えればメリットはない。警察や弁護士から突っ込まれる可能性がある。実際、突っ込まれている。一般読者や書かれた人に、説明ができない書き方はできなくなる。記者にもいい緊張感がある。

  ◇  ◇  ◇

このインタビューが終わった翌週の2月14日、朝日新聞は第1社会面のトップで、横浜市での原発事故によって避難してきた子どもへのいじめ、金銭授受に関して、調査委員会がいじめと認めなかったが、一転して教育長が認めた記事を載せた。肩には福島県南相馬市での中学生の自殺を取り上げている。いじめが背景にあることを実名、顔写真付きで報じた。その下には、愛知県一宮市の中学生が自殺した問題で、携帯用ゲーム機に、「担任によって人生全てを壊された」などの「遺言」が残されていたと伝えた。

この日の社会面は読者によってはネガティブに反応してしまうのではないかと感じた。記者のツイッターによると、社内でも議論があり、ネットでは相談窓口の情報を掲載している。こうした考えは、ガイドラインがあったことによる判断だったのだろう。

もうすぐ3月の自殺対策強化月間が迫っている。各社、どのような自殺報道がなされるのだろうか。注目したい。

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