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これもまた租税回避

ふるさと納税、豪華な返礼品競争を改善へ 高市総務相(朝日新聞)
 
高市早苗総務相は17日の閣議後の記者会見で、ふるさと納税の返礼品をめぐる課題を整理し、今春をめどに改善策をまとめる方針を明らかにした。一部の自治体が商品券などを返礼品としていることが、地方創生を応援するという制度の趣旨にそぐわないと問題となっており、対応を急ぐ。

 総務省によると、2015年度のふるさと納税の寄付金額は約1653億円。手続きの簡略化に加え、豪華な返礼品に注目が集まったことで14年度の約4倍に急増した。高市氏はこの日の会見で、「返礼品のコストの割合が高いと、ふるさと納税による寄付が住民サービスに使われにくくなるという問題もある」などと指摘。「あらゆる課題を一度、洗い出してみる」と述べ、自治体担当者や有識者らから意見を聴く考えを示した。

 制度の開始当初、地方の特産品などだった返礼品は、自治体間の競争激化で金券や家電も登場。総務省は16年4月、金券や家電などは返礼品としないよう求める通知を出した。ただ、通知に強制力はなく、複数の自治体が今も返礼品を見直していない。

 

 まぁ至極もっともな話が今更になって出てきたわけですが、あくまで「通知」が出ているだけで強制力はないとのこと、これではいけません。口先だけの賃上げ要請が「お茶を濁す」程度の結果しか生まないのと同じようなものと言えるでしょうか。世の中には言っても聞かない人も多いのですから、時には「強制力」を伴った措置が必要です。そうしなければ何でもありの無法状態、権力を持った人や組織には一定の枷をかけておく必要が常にあります。

 ふるさと納税も、理念としては有意義な部分もあったのかも知れません。しかし、納税の返礼として金券を設定するなど事実上のキャッシュバックを税制に許してしまうのは流石にどうでしょう? 「越えてはいけないライン」というのは、ふるさと納税の制度を運用する前に、しかるべく定められておく必要があったように思います。ともあれ近年は制度普及に伴い、ふるさと納税の獲得競争も激しさを増すばかり、当然ながら獲得にかかるコストもまた増加しており自治体の負担ともなっているものと推測されます。

 

ふるさと納税で「赤字4億円」…町田市長が批判(読売新聞)
 東京都町田市の石阪丈一市長は17日、新年度予算案発表の記者会見で、ふるさと納税による住民税などの控除額から市への寄付額を差し引くと、新年度は約4億円の赤字になるとの見通しを示した。

(中略)

 ふるさと納税を巡っては、高額な特産品の贈呈など「返礼品競争」の過熱が問題となっている。町田市は「競争に巻き込まれない」との方針から返礼品は過剰にならない範囲に限定。寄付を行う人が使い道を指定できるようにもしており、返礼品目当てだけにならないよう配慮している。

 

 東京一極集中の時代、都市部から地方に税金が流れる限りは是正措置として許容されるべきものではありますが、「獲得にコストを費やした自治体」が税金を獲得し、「獲得競争に乗らなかった自治体」が赤字になるというのであれば、それは制度の欠陥と言うほかないでしょう。「地方で育った人」が働くようになってから住むようになった街の税収が、少しばかり住民の出身地に流れるのであれば大義はあります。しかし、返礼品として納税額の7割をキャッシュバックするような自治体に税金が流れ込むとなったなら、それは何かが間違っていますよね?

 ある国が不当に低い法人税率を設定して、そこにアップルなりグーグルなりが会計上のテクニックを駆使して法人税率の低い国を納税先にしてしまう、なんてこともあります。この場合、法人税ダンピングを行った国は「他国の」企業からの納税が見込めるので減税の結果として税収が増えることもある反面、その裏では当然のことながら当該企業の「本当の」所在国で得られるべき税金が余所の国に吸い取られてしまうわけです。一部の国は確かに得をしますが、世界全体で見た場合はどうでしょうか?

 ふるさと納税も、これと同じことが言えます。高率のキャッシュバックを設けた自治体は、それによって「市外の」居住者からの納税が見込める、すなわち税収増が期待されるのかも知れません。しかし、ふるさと納税獲得のための競争に負けた自治体は、逆に市内居住者の納税が流出してしまうわけです(今回の町田市のように)。得をする自治体もあれば、損をする自治体もあると言えますが――日本国全体としてみたい場合は、どうなのでしょうね? 得をした自治体も「外からの」納税を獲得するためにコストを費やしている、事実上のキャッシュバックなど行えば歳入となるのは納税額の一部に止まります。日本全体で見れば獲得競争にかかったコストの分だけ税収は減っている、財政にダメージを与えている側面は無視されるべきではないでしょう。課税を通して再分配してきたものを市場競争に任せたことで上手くいった例など、私には思いつきません。

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