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"有名無実化"に突き進み始めた"日本共産党" - 關田伸雄(政治ジャーナリスト)

◆熱気だけは異様だった第27回党大会

1月15日、共産党は静岡県熱海市の党学習会館で第27回党大会を開いた。

前回大会から3年ぶり。伊豆の山々に囲まれ、出入りするルートが一つしかないこともあり、かつて公安関係者から「暴力革命の拠点」とみられていた同会館は、都道府県委員会をはじめとする地方組織などから抽出された代議員たちの異様な熱気に包まれていた。

非合法時代を含め95年に及ぶ同党の歴史上初めて、国内の他党幹部が来賓として出席、「連帯のあいさつ」を行ったためだ。

民進党の安住淳代表代行、自由党の小沢一郎代表、社民党の吉田忠智党首、参院会派「沖縄の風」の糸数慶子代表。

共産党は他党との共闘を前提にした「統一戦線」や「民主連合政府」を標榜しながらも、「条件が整わない」という理由で、独自路線を歩み続けてきた。旧社会、旧民主両党を含め、ほかの野党が「自民党の補完勢力」だと批判し、自らを「真の野党」「唯一の野党」と位置付けていたのも、つい最近のことだ。そんな経緯はどうでもいいのか。

「ちょっと緊張していますけど…」と切り出して代議員たちの笑いをとった安住氏は、昨年の参院選での野党共闘の成果を強調、次期衆院選での野党候補一本化を念頭に、「一緒になって、市民とともに政治を変えていく運動に立ち上がろうではありませんか」と呼びかけた。

小沢氏も参院選での野党共闘が「1人(改選)区の候補者を一本化する(という共産党の)英断」によるものであると褒め称え、「これからも野党が緊密に、真剣に、誠実に、誠意をもって、心から連携して共闘しなければ、来るべき総選挙に勝利し、政権交代を実現させることはできません」と呼びかけた。

吉田氏にいたっては、地元組織である社民党大分県連の旗開きを欠席して駆けつけたことをアピール。「来る通常国会、衆院選で真の野党共闘を達成しなければならない」と述べ、共産党が民進、自由、社民各党との野党共闘路線を突き進むことに強い期待感を表明した。

糸数氏のあいさつが済むと、ほかの野党ではお決まりの「団結ガンバロー」。4氏の中央に陣取った志位和夫委員長は満面の笑みを浮かべてつないだ手を高く掲げてみせた。

◆追い込まれた結果の「野党共闘―野党連合政権」路線

民進、自由、社民各党が期待しているのは、選挙を有利に戦うための共産党の組織力。「アカ」と後ろ指をさされた時代を乗り越えて、社会主義社会の建設から共産主義社会の実現を追求してきた共産党の組織は、全国至るところに張りめぐらされており、衆院選の各選挙区でも5~10%の票を維持している。

2010年の参院選における比例代表得票は356万票(得票率は6.1%)、13年参院選では515万票(同9.6%)、14年衆院選では606万票(同11.37%)、17年参院選では 601万票(同10.74%)――と推移している。

共産党員といえば、機関紙「しんぶん赤旗」の配達・集金や拡張業務、党員獲得運動に精通しており、選挙戦での実働も期待できる。独自候補を擁立せず「野党統一候補」に乗ってくれればありがたい――というのが他野党の本音だ。

一見しただけだと、共産党が選挙のキャスティングボートを握るように思える。だが、共産党の内情は表向きの威勢のよさとは大きくかい離している。

もともと、当選者が1人だけ(小選挙区)の衆院選選挙区では、共産党が単独で議席を得るのは極めて難しい。21議席を獲得した14年の選挙では、沖縄1区で赤嶺政賢氏が当選しただけで、ほかの20人は志位氏を含めて全国11ブロックの比例代表で選出されている。

比例代表の票を上積みするため、選挙区にも独自候補を擁立することが通常の戦い方だ。安全保障関連法(共産党は戦争法と呼称)という共産党員にとってわかりやすい争点があったにもかかわらず、14年衆院選に比べて17年参院選での比例得票が目減りしているのは野党共闘を推進したためだとの見方もある。

志位委員長ら指導部がいくら鼻息を荒くしても共産党の党勢は長期的にみて衰退傾向にある。

第27回党大会で志位氏が発表したところによると、党員は約30万人、党財政を長年にわたって支えてきた赤旗購読者数は約113万人だという。3年前の第26回党大会時に比べ、党員は約5,000人、赤旗購読者は約11万人減っている計算だ。

志位氏は党大会最終日に行った「結語」で、大会の討論について「野党と市民の共闘の流れが、日本列島のどこでも力強く開始されていることを示す討論となった」と自賛しながらも、「どうやって党建設を本格的な前進に転じ、党勢倍加をやり遂げるか」「世代的継承をどう成功させるか」が課題であることを指摘した。

多くの成功例を示しつつ、宮城県委員会から「参院選では野党共闘にちょっと燃え過ぎて、比例で(共産党の)前進を貫くという独自の努力が率直に言って不十分だった」との反省が出たことや、新潟県委員会から「野党共闘で成果をあげたとはいえ、比例では14年衆院選より(共産党の)得票を減らした。地区委員会でも市町村委員会でも野党共闘に手をとられて、支部への指導、援助が極めて手薄になっていることを痛感した」という問題提起があったことも紹介してみせた。

共産党が陥っているジレンマを象徴するものだ。

◆失われつつある党綱領路線と独自性

では、共産党はこれからどうなるのか。

年内にも予想される衆院解散・総選挙に向けて、共産党は昨年の参院選で提唱した「国民連合政府」に代わって、前述のように「野党連合政権」を打ち出している。安保関連法廃止を軸とした「国民連合政府」ではなく、自民、公明両党連立による安倍政権を打倒して民進、自由、社民各党との連立政権樹立を目指すものだ。

だが、共産党自身が認めているように、「現時点では、野党間に合意が存在しない」(大会決議)。民進党の蓮舫代表は共産党大会初日の15日に「安倍政権を倒すことに一番力を注ぐ。そこから先の話は、残念ながら共産党と考え方が違う」と述べ、共産党との連立の可能性を全否定した。

共産党が衆院選で「必勝区」と位置付ける15選挙区における共産党候補推薦の可能性についても、民進党は「困難だ」(野田佳彦幹事長)との拒絶姿勢を崩していない。

政権選択に直結する衆院選での共産党との共闘に、民進党最大の支持母体である連合が強く反発していることに配慮したものだ。

安住氏の来賓あいさつは社交辞令に過ぎないことが明白だ。衆院選では200近い選挙区で共産、民進両党の候補が競合する見通しで、「野党連合政権」は絵に描いたもちに終わる可能性が高い。

貧すれば鈍す。この言葉が今の共産党の実情を的確に表現している。

党財政に余裕はなく、供託金没収につながりかねない全選挙区での独自候補擁立についてはかねてから見直し論が出ており、これまで「思想の自由を侵害する憲法違反の制度」として受け取りを拒否してきた政党助成金についても、一部から「受け取ってもいいのではないか」との声さえ出ている。

従来の独自路線が行き詰った結果の「野党共闘―野党連合政権」路線に過ぎないのだ。

日米安保条約の廃棄、自衛隊の解消をうたい、天皇制度についても「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」とした党綱領路線は、「綱領や将来像が違っても、国民の切実な願いにこたえて、当面の一致点で協力することが、政党間の共闘の当たり前の姿」だとする大会決議で失われつつある。

上位機関の決定に下部機関が従うという「民主集中制」を党規約に明記している共産党で党本来の姿を取り戻そうという動きが認められることは不可能だ。独自性を放棄してまで共産党であり続ける必要はない。残された道は、党名変更と綱領の改定による「日本共産党」の解消なのかもしれない。

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