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トランプ氏のツイート攻撃、企業の対策最前線

By REBECCA BALLHAUS and VANESSA FUHRMANS

 トランプ米大統領は、わずか140文字のメッセージをホワイトハウスから発信するだけで企業をパニックに陥れる。

  トヨタ自動車が着手したメキシコ新工場の建設計画に関し、トランプ大統領がツイッター上で批判を展開したのは先月のことだった。トランプ氏は「米国内に工場を作るか、巨額の国境税を支払うか」をよく考えるようにトヨタ側に忠告した。

 そのツイートが投稿される頃、トヨタの最高コミュニケーション責任者であるスコット・バジン氏は展示会への出席などでラスベガスのホテルに滞在していた。ツイートが投稿されるや否や、ホテルの部屋から去ろうとしていたバジン氏の携帯電話が鳴り始めた。記者や部下から次々と電話やメールが入ったためだ。

 トランプ氏がホワイトハウス入りして以降、企業はトランプ氏のツイート攻撃に警戒を強めている。突然の事態に対応できるよう特別な「戦略室」の設置を検討する会社もある。

 また、トランプ氏はMSNBCの「モーニング・ジョー」やCNNの「ザ・オライリー・ファクター」といったテレビ番組をツイートのネタに利用することが多いため、これら番組の広告枠を購入しようとする動きもあるという。既に発表済みの米国内の雇用方針などを積極的にアピールし、批判をかわそうとしている会社もある。

あらゆる企業がターゲットになる可能性

 広報コンサルティング企業ファイヤーハウス・ストラテジーズのアレックス・コナント氏は、「あらゆる企業や団体がドナルド・トランプ氏からのツイートにどう対応すべきか考えている」と話す。

 トランプ氏の広報担当者は、大統領が「全ての企業と一緒になって経済を改善し、全ての米国民のために雇用創造を実現させることに集中している」と述べる。

 トランプ氏がトヨタをツイート攻撃したわずか数日前、バジン氏は標的になることを想定して北米事業を統括するジェームズ・レンツ氏やサイモン・ナガタ氏と電話で話し合ったばかりだった。トランプ氏は選挙運動中からメキシコに投資している企業を批判していたため、「われわれの日も近づいてきているとは感じていてた」とバジン氏は話す。

‘過剰だと思われるほどのアピールをしてちょうどいいぐらいだ’

—ワシントンのロビイスト

 ツイートが投稿されるとバジン氏はレンツ氏とナガタ氏に連絡を取り、発表する声明の内容を打ち合わせた。トランプ氏の批判と同時にトヨタの株価は下がり始めたが、同社の声明はツイートが投稿されてから2時間もたたないうちに出された。

 トヨタは過去60年にわたり米国社会の一員となってきたとし、米国に210億ドル(約2.4兆円)に上る直接投資も行ってきたと主張。米国内の具体的な従業員数や拠点数も挙げた。バジン氏によれば、それ以降トランプ氏側からの接触はないという。

 一部の企業は、標的になる前に行動を取っている。半導体大手インテルのブライアン・クルザニッチ最高経営責任者(CEO)は先週ホワイトハウスを訪問し、70億ドルを投資してアリゾナ州に半導体工場を建設すると発表。この計画は実際には7年前から検討されていたものだが、トランプ氏は「わたしたちはとてもハッピーだ」と応じた。

複数のシナリオを準備する企業も

 トランプ政権下では、企業の政治対策はロビー活動や議員や大統領との面会だけでは十分ではない。トランプ氏は早朝にツイートをすることが多いため、突然困難な状況がふりかかることも想定しておかなくてはならない。

 企業コンサルタントのエリック・デゼンホール氏によれば、あるハイテク企業は幹部らがトランプ氏のツイッター攻撃を受けた際にどう動くべきか、複数のシナリオを準備している。株価急落や議会での公聴会、記者からの質問などにどう対応するかだ。いざという時にトランプ氏をなだめることができるような秘策も企業側は頭に入れ始めているという。

 ロビイストたちはクライアントの企業に対し、自社ビジネスや政府と関わる事業を精査するよう推奨する。それにより、自分たちが米国経済にどれだけ貢献しているか主張できるようになるからだ。

 「トランプ氏は自らの政権下で雇用が米国内に戻っているイメージを押し出したいのだ」。ファイヤーハウスのコナント氏はこう語り、企業側がそれを後押しする情報を提供すればトランプ氏は飛びつくだろうと指摘する。

  英石油大手BPはトランプ氏の大統領就任式に合わせて新聞5紙に全面広告を展開。ニューヨークポストやウォール・ストリート・ジャーナルのほか、マイク・ペンス副大統領の地元紙であるインディアナポリス・スターも含まれていた。BPは広告の中でトランプ氏の当選を祝福しつつ、自社の雇用創出策を宣伝。「われわれは米国内で14万5000人分の雇用を下支えし、米国で得た利益はそのまま米国経済に再び投資している」とした。

 事情に詳しい関係者によれば、BPは広告の内容を知らせるためホワイトハウス関係者に直接メールを送り、トランプ氏の大統領就任を紙面上で祝福した数社の中のひとつでだったこともアピールした。

名指しツイートで利益を得るケースも

 ウォルマート・ストアーズやアマゾン・ドット・コムも、すでに計画されていた自社の拠点拡大などに伴う雇用創出に関してプレスリリースを発表している。一部には、ツイッター上でトランプ氏がフォローするアカウントの投稿内容や、トランプ氏が他の企業に対して発信した投稿の影響を分析している企業もある。

 ゼネラル・モーターズ(GM)メアリー・バーラCEOは、トランプ氏と頻繁に会話を交わしている。同社はメキシコで組み立てた車を米国内で販売しているとトランプ氏からツイッター攻撃を受けたが、その数日後にはバーラ氏が複数の国内工場に少なくとも10億ドルを投資すると発表した。

 ワシントンのロビイストの1人は「過剰だと思われるほどのアピールをしてちょうどいいぐらいだ」と話す。

 一方で、ツイッターを積極的に利用していない企業もある。コンサルタントのデゼンホール氏によれば、トランプ氏の攻撃に備えつつも「企業の命運が携帯端末ひとつで左右されることが信じられない」と話すクライアントもいるという。

 トランプ氏にツイッターで批判された企業は業績にも影響を受けるが、中には大統領から名指しでツイートされることで利益を得るケースもある。

 百貨店大手ノードストロームがトランプ氏の娘イバンカさんのブランドを取り扱い中止にすると発表した後、トランプ氏はその決定をツイッター上で批判した。しかしノードストロームの株価はその日、4%超も上昇した。

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