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屋内禁煙化で飲食店売上は下がらないという強弁について

2020年のオリンピック開催に向けて屋内喫煙規制の論議が進んでいるのですが、嫌煙派の方々の猛々しい主張がなんとも言えません。以下、永江一石のITマーケティング日記からの転載。


2017年2月15日の受動喫煙対策法の厚生労働部会の各議員の発言に突っ込んでみた
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=31394

特定のところだけ禁煙にするならまだしも、せーので全店禁煙なら客が減るとかいう前提自体が無茶苦茶です。全面禁煙にしたら喫煙者は今後、飲み会にも行かず、一切外食しないという前提はどこから来るのか。「禁煙にしたら客が減った」という声があるという議員もいるが、いまはほとんどで喫煙可能だからという前提。逆に禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある。 

「禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある」との事ですが、それこそ、永江氏の仰る「いまはほとんどで喫煙可能だからという前提」の話であって、他店との差別化が出来たので売上が上がりましたという話でしょうよ。もはやこの一節だけ切り出しても、論理矛盾満載であります。

厚生労働省の研究班が「海外ではすでに50カ国近くで飲食店などは屋内全面禁煙だ。全面禁煙によるレストランとバーの営業収入への影響を調べた海外の27報告を厚労省研究班が検証したところ、約8割の22報告が変化なし」などとする発表を行ったとの事ですが、海外と日本は全く喫煙規制に関する社会的環境が全く違います。

これは以前もどこかで書いたことがあるのですが、諸外国における喫煙規制は職場での伏流煙被害から逃れることの出来ない飲食業界系の労働組合や、それこそ我がカジノ業界の労働組合などが主として動かした労働環境の改善運動から広がってきたものです。なので、基本的には様々な商業施設の「屋内」での喫煙制限が先行して進んでいるもので、屋外は多くの場合が論議の対象になっていません。

一方、我が国の喫煙規制はいわゆる嫌煙派の方々の市民運動を中心として広がってきたものであり、公共の場、すなわち路上での喫煙規制が中心に進んできたもの。現在では、全国の都市の主な繁華街エリアでは路上喫煙禁止条例が定められており、「屋外での」喫煙が禁止されています。

上記、厚生労働省の研究班による発表では「海外50カ国近くの飲食店で屋内全面禁煙が制定されているが、その営業収入への影響は殆どない」とのご主張でありますが、だったら調査対象となった50カ国の国々が同時に屋外喫煙の禁止を定めているかどうかも合わせて発表していただけますか?私が生活していた米国ネバダ州は土地柄、喫煙には大らかな地域なのでそういう現象はないですが、多くの欧米の都市部では喫煙者が路上にたむろしてアチラこちらでプカプカとタバコを吸っている姿が観測できます。こういう環境であるからこそ、屋内の禁煙を法制化しても営業収益には大きな影響がないのです。

一方、前述の通り我が国では屋内喫煙の論議の前に、既に路上喫煙の禁止が先行してしまっている。そういう全く異なる社会環境の中で起こる屋内喫煙禁止の営業は諸外国で見られるものとは全く異なるものとなります。

我が国で2009年に神奈川県が受動喫煙防止条例を制定し、国内自治体ではじめて屋内喫煙の規制を制度化しました。その後、行われたその影響度調査では、以下のような結果が出ています。


受動喫煙防止条例がもたらす経済効果~「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の経済波及効果分析」より~http://www.murc.jp/thinktank/rc/politics/politics_detail/26
 「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の経済波及効果分析」では受動喫煙防止条例のような喫煙規制によりプラスあるいはマイナスの売上影響が予測される11産業を調査対象産業とし、株式会社富士経済からの委託調査として、同社が行った市場動向と売上影響金額をもとに、産業連関表を用いることで、条例施行後3年間にわたる経済全体への波及効果を算出致しました。 【調査結果の概要】・神奈川県における条例による経済波及効果(生産への影響)は、2010年~2012年の3年間で合計▲237億円。(2010年▲55億円、2011年▲106億円、2012年▲76億円) ・全国で同様の条例が施行された場合の経済波及効果(生産への影響)は、2010年~2012年の3年間で合計▲4,880億円。(2010年▲1,043億円、2011年▲2,012億円、2012年▲1,735億円)
・最も影響が見られたのは「外食産業」、次いで「宿泊産業」。ともに条例に即した禁煙化を行なった店舗で喫煙客離れが進行し、その分売上が減少する結果となっている。
・一方で「分煙機器」、「後付分煙工事/喫煙ルーム」では、主に外食店での分煙環境整備による需要が発生し、売上が増加する結果となっている。経済全体への影響としては、マイナスが大きく上回る結果となった。
 

嫌煙派の方々は、国内の先行事例において既に上記のような報告が為されているにも関わらず、なぜ社会環境の違う欧米の事例なんかを持ち出して「飲食店への影響はない」などとして強弁しているのでしょうか?

冒頭にご紹介した永江一石さんに至っては「禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある」などという、個別事例を持ち出して無理な論理を展開した挙句、「国会議員の多くがいまだ喫煙援護派なのは、非喫煙者である女性に対する蔑視だ」とか謎の結論に持ってゆくという有様。いや、反対している議員らは「代議士」の役割として屋内喫煙の禁止でリスクを被る人達の立場を代弁をしているだけであって、そういうレッテル張りは完全にオカシイでしょう、と。

2020年のオリンピック開催をキッカケに、我が国の国民の健康と喫煙問題について論議しましょうというのは私自身も全くもって否定するところではないのですが、それによってリスクを被ることになる人達の主張を全く比較の対象にならない海外事例を持ち出して否定したり、マイナスの影響が実際にあった国内先行事例を完全に無視したりという論議の手法は、幾らなんでもやり過ぎ。「正しく」論議をしましょうよ、ということであります。ちなみに私自身は非喫煙者です。

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