記事

大阪カジノの予測投資額、3,500億円について

現在、他の業務に追いまくられており更新が滞っております。スイマセン。

少し遅いフォローとなってしまいますが、今月の2月7日に大阪府が推計した大阪カジノ導入の各種経済予測推計値が発表された模様です。以下、リンク先の報告書まとめ。

osaka
(出所:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/10583/00000000/honnpenHP0207.pdf

関西におけるカジノの市場規模予測に関しては、そもそも「日本のカジノ市場は2~3.5兆円にも達するのだ」とする大阪商業大学商経学会論集(第5巻、第1号)に掲載された「カジノ開設の経済効果( 佐和良作・田口順等)」という論文を参考値として、総投資額で2兆円超にも及ぶであろう巨大な統合型リゾートの開発構想が開催経済同友会から発表されました。以下、関西経済同友会がそもそも提示していた大阪カジノ構想の開発イメージ。


ところが、関西経済同友会が2016年に入ってから改めて独自の市場規模推計を行ったところ、関西圏での統合型リゾートの年間事業規模は5,500億円程度であり、そこから逆算して算出される開発投資予想額は6,759億円程度であるという推計値が出てきたものだから大慌て。当初計画していた統合型リゾートによる夢洲の全体開発は不可能であるということが判明し、あわてて別途検討が行われていた万博の開催を夢島に移したというのが経緯でありました。(このあたりの経緯詳細はリンク先参照

というような全体の経緯の中で、今度は大阪府が独自に推計した市場規模推計値として2024年、統合型リゾートの開業当初における開発投資額は3,500億円程度、年間の事業規模としては2,000億円程度にしかならないなどとする数字が今回発表されてしまったわけです。2兆円超→6,759億円→3,500億円と期待される投資金額があっという間に縮小してしまい、統合型リゾート導入によって大きな経済効果を期待していた関西財界としては涙目であります。

一応、この辺の推計を己の専門のど真ん中としている私の立場からしますと、今回の大阪府が行った市場規模推計はえらく市場を小さく見積もったな、というのが賞味なところ。上記リンク先に示した大阪府による報告書にはあまり詳細な推計プロセスに関する開示が行われていないので、あくまで現時点で開示されている情報をベースにそのプロセスを推測するしかないワケですが、現時点で私に見えているだけで2つの推計上の問題点が見えています。

①2024年推計に関して
大阪府の開示している報告書を見ると、2024年のカジノ施設への入込客数予測にあたってシンガポールの事例を参照しながらその推計を行っているとされています。以下、報告書より。

pdf

2014年の来阪客数の実績値から国内客が毎年1.2%成長、国際客が毎年4.1%成長するという前提で2024年の来阪客数を予測。その予測値に、シンガポールにおける観光客のカジノ来訪比率を掛け合わせることでそう入込客数を予測しているようです。

ただここで問題になるのが、そこで求められるカジノ来訪者数に対して更にシンガポールにおける全体カジノ来訪者数に占めるマリーナベイサンズの訪問者数の割合をかけ合わせている点。シンガポールは現在国内に2つのカジノが存在するわけですが、2024年の大阪に開業するカジノは「その内の一つ分の比率」の観光客のみが施設に来訪するのだ、ということの模様。これは、今回の推計に際して、2024年に夢島に1施設のみ、その後、2030年に新たに2施設が追加されるという前提で推計を行っていることに対応する推計上の「処理」であるようです。

ただ正直申し上げますと、入札を実施する側の大阪府が投資上の上限を定めているのならばいざ知らず、通常の自由な投資入札において事業者はその市場の中で最も利益の取れる投資を目一杯行おうとするのが当たり前の投資行動であり、わざわざ2030年に後から参入してくる(かもしれない)事業者の為に需要を「取り置いておく」などということはしません。そういう意味では、なぜわざわざこういう推計処理をしたのかはちょっと理解に苦しみますし、このような処理をしてしまったが故に2024年から2030年に向かって来阪観光客数は5,024万人から5,793万人へと15%程度の増加しかしないと予測されているにも関わらず、カジノの入込客数は1,300万人から2,200万人へとおよそ70%も増加するという妙チクリンな推計が出てしまっているわけです。

②大阪在住者の入場に関して
さらにもう一つの推計上の問題点を言えば、上記で説明した一連の推計は来阪観光客をベースにして計算をしているということ。残念ながら現時点で開示されている資料内では彼らが言うところの「来阪観光客」が具体的にどのようなものを指すのかに関しては判りにくいのですが、その表現に基づくのならば恐らく大阪在住の人間はそこに含まれていないのだろうと思われます。

もし大阪府が本当に大阪在住者の大阪カジノへの入場を何らかの形で禁止する方針であるというのならばそれはそれで殊勝な政策方針でありますが、もしそうではないとするのならば今回行われた推計はそのような大阪在住者の入場分をカウントしていない可能性がある。この辺も、全体需要が非常に低く見積もられている原因ではないのかな?と思うところです。

そして究極的にはもし大阪府がこの報告書が示すとおり、2024年のゲーミング消費が530億円、2030年のゲーミング消費が900億円程度であると本当に思っているのならば、それを元に予測している2024年までの開発投資額3,500億円、2030年までの開発投資額8,200億円というのは明らかに大きく見積もりすぎであり、下手すりゃ一桁間違っているくらいの大きな予測のズレが生じてしまっていると思われます。

この種の推計というのはあくまで様々な要件を設定した一種の「箱庭」的な環境で推計を行うものであり、万能ではないというのは私自身が一番良く知っている身ではあるのですが、少なくとも己が設定した要件の中ではもっともらしい数字を出すのが推計者の仕事なのであって、今回の大阪府の市場予測はちょっと残念だな、というのが正直な感想。恐らく私以上に、関西ビジネス界にいる方々は今回の発表値に対してはガッカリしていると思うわけですが、これまで寧ろ「大阪の出す数字は大きすぎる」といい続けてきた私の観点からしても、今回の推計値に関してはたぶん普通に推計するともうちょっと良い数字はでるものと思いますよ、とだけ最後に申し添えておきたいと思います。

てか、大阪府は一方で夢洲での統合型リゾートの成立の前提となる鉄道敷設に対して「カジノ事業者に応分の負担を求める」などとしているわけですが、今回の推計に基づき年間500億円程度のゲーミング市場を前提にすると負担金額は期待するほど出てきません。今回の発表地はIR導入の前提となる鉄道敷設は元より、その先に予定している万博誘致に至るまで、全体に対して不安を残すものとなっていると思われます。こちらからは以上です。


【参考】万博会場の整備費、大阪府と大阪市で折半を確認 200億円ずつ負担
http://j.sankeibiz.jp/article/id=716
府市は関連事業費のうち万博開催に伴うものについては折半することも決定。鉄道延伸費について吉村洋文市長は「利益を得る人に担ってもらわないといけない」と述べ、IR事業者にも応分の負担を求めていく考えを示した。

あわせて読みたい

「カジノ解禁」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    朝日が仏大統領発言でっち上げか

    西村博之/ひろゆき

  2. 2

    内閣改造で消えた小池・野田新党

    PRESIDENT Online

  3. 3

    米国が12月以降に北朝鮮を攻撃か

    高英起

  4. 4

    iPhone X購入の前にWi-Fi導入を

    永江一石

  5. 5

    温泉更衣室の防犯カメラは違法か

    花水木法律事務所

  6. 6

    よしのり氏 小池新党はいらない

    小林よしのり

  7. 7

    核武装した北との共存ありえない

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  8. 8

    アラフィフの後悔 1位は「勉強」

    キャリコネニュース

  9. 9

    日本人の稼ぐ力 今や他国の7割に

    THE PAGE

  10. 10

    小林麻耶が海老蔵の家を出た事情

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。