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国税が海外富裕層を狙い撃ちする違和感

2月9日付日経に「海外資産、ガラス張り 国税、租税逃れ国際包囲網に参加 対富裕層、攻防は新段階」と何やら怖くなるようなタイトルがついた記事があります。記事の内容は新味に欠けるもので以前からある方針と変わりません。日本の国税が海外の税務当局と連携して日本人の資産を徹底的に洗いなおすその作業が「進捗している」ということかと思います。

「相続税対策=国内不動産及び海外富裕層」というイメージが異様に強まっているのは多くの相続税対策の雑誌やハウツー本がそこに焦点を合わせていることがあるでしょう。ただ、日経は特に国税の海外富裕層への狙い撃ちの記事が大好きなように感じられますがちょっと違和感があります。また最近は不動産持ちだけではなくエリートサラリーマン経歴者の「現金持ち」の相続税対象者がふえているというニュースもありました。

さて、海外の富裕層ですが、香港やシンガポールなどに移住した日本の富裕層のことを暗示しているのでしょう。両方とも日本人になじみがある地域で時差的なギャップも少ないこと、法人税は香港が16.5%、シンガポールが17%程度で双方ともキャピタルゲイン課税がなく、国内所得についての課税はあっても国外所得(オフショア所得)は原則非課税(シンガポールは条件を満たす要あり)で日本人がそれらの国で投資活動をするには実に魅力的であるといえます。

言い換えれば日本の税制や税率とギャップが大きい地域や国が当然狙われやすいことになります。少し前のデータですが、シンガポール、香港、ニュージーランド、スイスに移住した日本人は1996年から2013年に2.6倍の1万7千人になった、とあり、その少なからずの部分を税対策の移住だと考えているというものです。

この真偽を探るのは骨が折れるでしょう。海外に移住する理由はビジネスの立ち上げから国際結婚まで様々で海外に居住する日本人は増え続けています。もちろん、悪だくみをする輩は当然いるはずですが、比率はさほどではないとみています。

ではほかの国への移住はどうなのか、ですが、一概にくくることはできませんが、先進国の場合、一定の税制と税率があり、当該国で納税をしているケースが多いでしょう。そうなれば日本での課税は二重課税に当たるため課税できなかったり、税率の差額分のみといった労力に対して思ったほどの果実がないものです。税務申告の時期ですので確定申告をする方はご存知だと思いますが、申告書の中に外国税控除を記入するところがあり、ここで二重課税を免除してもらうことになります。

私が冒頭、違和感があると申し上げたのはいわゆる海外の富裕層を国税の最重点取り締まり対象と感じさせるほどの記事の偏重性があるように思えるのです。

私は日本に来るたびに思うことがあります。それはよくもこれだけのビルが東京にあるな、ということです。そしてなぜ、これだけの建物があるにもかかわらず、税収不足が生じるのか、やや不思議な感じがあるのです。海外に目をそらせているのではないかという気がしてならないのです。

近年、相続税でもっとも話題になったのが2015年からの相続税改正でありますが、基本的にこれは個人の相続税のバーが上がったということであります。ですがそれとは別に日本には事業用不動産を抱え込む富裕層は相当数に上るはずです。事業用不動産が親から子供に引き継がれる場合不動産の時価ベースの算定が必要です。また、個人会社を設立している場合、その株式を子供に譲渡するには会社のバリュエーションをベースにして譲渡価値を計算し、課税がなされるはずです。

しかし、これがどこまで管理され、納税されているのか、不思議だな、と感じるのは日本にあまりにも多くの古びた事業用不動産が残っている点でしょうか?考えられる理由の一つは建物の償却が進んでしまって不動産の価値が大きく減価しているからだろうと思います。

実は私はもう何年も提言しているのですが、日本の建物の減価償却は早すぎます。また、建物の価値の算定は再建築価値で算定されません。例えばカナダはこの建物を今作り直せばいくらかかるかで固定資産税の評価を行いますから建物の価値が下がらないどころか年によっては上がってしまうのです。

国税が本気で税収を上げたいのならこの減価償却のマジックに目を向けてみると税収が激変する可能性があります。また東京では古びて防災上問題ある建物が残り続ける状態を一変させることも可能なのです。つまり、再活性化が進むことになるでしょう。

腐っても鯛と言いますが、土地は腐らないのです。減価償却しません。確かにバブル時代から大きく値下がりしたといわれる不動産ですが、世界第三位の経済規模を誇る日本で税収不足とは本来取れるべき日本の不動産持ちから十分に回収できていない気がします。海外の富裕者への重点課税対策もわかりますが、この辺りに本来であればもう少し焦点を合わせた方がよい気がいたします。

では今日はこのぐらいで。

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