記事

大麻栽培予備|大麻栽培の周辺事件

<ニュースから>
●大麻種子所持疑い 男を書類送検 上京署
上京署は5日、大麻取締法違反(栽培予備)の疑いで、京都市北区のアルバイト男性(24)を書類送検した。
京都新聞(2011年10月06日 09時01分)

京都新聞の記事によると、男性は「合法ハーブ」を吸引して体調を崩し、病院に通院し、その後、「薬物におぼれた生活を改めたい」と自宅にあった大麻種子を持って同署に出頭したといいます。種子は3年前にオランダで買ったと供述しているということです。
久しぶりに、大麻の種子の入手者が大麻栽培予備で送検されたというニュースです。大麻の種子問題がクローズアップされるなかで、大麻栽培の予備罪や未遂罪、またそのほう助犯などに対する徹底的な捜査が打ち出されていましたが、そういえば、いつの間にか徹底捜査の影も薄れてきたようです。軽微な犯罪と思われがちなこうした事件に対して、なぜ徹底捜査が行われてきたのか、もう一度ふりかえっておきたいと思います。

4年目に入った大麻種子をめぐる攻防



高THCを含むよう品種改良された大麻の種子がインターネットなどを通じて販売され、大麻栽培に利用されている実態が一般社会の関心を集め始めたのは、2007年末ころのことです。
大麻取締法は、大麻の種子を規制対象外としているため、その所持や売買を直接的に処罰する根拠はなく、従来は、とかく「大麻の種子の売買は違法ではない」といった見方が根をおろしていたきらいがありました。大麻取締法で画一的に取り締まることができない現状に対して、一時は、法改正を求める声も強まっていました。

しかし、わが国では大麻取締法や関連の法令で大麻の種子の流通は管理されており、現行の法令は、大麻栽培に使われる種子の流通を決して許容するものではありません。この数年、取り締まり当局は、大麻栽培に使うための種子売買は違法行為だということをはっきり示すために、様々な類型で大麻種子の売買にまつわる違反行為を立件してきました。

まず、大麻を栽培するために種子を入手した人たちへの対応。入手した種子を播種し、発芽すれば大麻栽培の既遂事件となりますが、その前段階でも、播種という実行行為に取り掛かった場合は栽培の未遂、種子や栽培道具などを準備した場合は大麻栽培の予備での立件を視野に入れて、捜査が実施されてきました。
また、種子の販売者に対しては、栽培や栽培未遂のほう助としての立件や、原材料提供(いわゆる資金等提供罪)での立件も検討され、さらに、種子販売の広告などを通じて大麻栽培を助長する行為があった場合には、麻薬特例法(あおり、唆し)での立件も検討されます。

大麻の種子売買から、それを使っての大麻栽培に至るまでの過程で行われる多様な違反行為、いずれも科される刑の重さからいえば、ささいな犯罪ですが、それをひとつずつ捜査し、立件することが、この数年、繰り返されてきたのです。その結果、大麻栽培事件の周辺に、これまではあまり例のない新たな類型の事件が多数みられるようになりました。
私は、この多様な類型を、大麻栽培の周辺事件としてとらえていますが、実際の検挙事例をまとめると、下の図のようになりました。

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↑大麻栽培の周辺事件(作成/小森 榮)


もっとメッセージが必要



とかく些細な事件と思われがちな予備罪や未遂罪を細かく立件し、またそのほう助犯として種子の販売業者を起訴することは、実務の上では、司法や捜査機関にとってきわめて大きな負担となります。私は、つい最近、栽培ほう助の事件をひとつ終えたところですが、量刑からみれば些細な事件に対して、捜査陣の投入した労力は重大事件なみのものでした。
刑の重さとアンバランスかもしれませんが、でもこれは必要な社会的コストです。
一時は「野放し」と批判された大麻の種子の販売状況も、この数年で大きく変化しました。インターネット上での国内販売業者が減少し、店舗などでの販売もあまり見かけなくなりました。

でも、今も「大麻の種子販売は合法」といった言葉に出会うことは珍しくありません。
「日本は、栽培に直結する大麻の種子の流通を、決して野放しにしてはいない。」このメッセージが社会のすみずみまできっちり伝わるよう、取り締まりと同時に、広報もまだまだ必要だと思います。
急増していた大麻栽培事犯の検挙実績が、減少に転じていますが、今はまだ道程の半ば。若者たちの意識が切り替わるまで、まだ手を緩めるわけにはいきません。

画像

↑大麻栽培事犯検挙状況
警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課編『平成2 3 年上半期の薬物・銃器情勢(暫定値)』より転載

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