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米政界のドン独占インタビュー「トランプ政権の柱は減税と規制緩和」

渡瀬裕哉=構成 玉川傑洋=協力 大橋昭一=図版作成

トランプ氏がアメリカの次期大統領に決まり、日本の株価は大幅に上昇。NYダウ平均株価も上昇を続けている。2017年もこの「トランプバブル」が続くのか。アメリカ共和党のドン、グローバー・ノーキスト氏とともに2017年の経済を占う。

──全米税制改革協議会(Americans for Tax Reform)とは、保守派の実質的な司令塔として強い指導力を持ち、大統領選挙戦でトランプを支持してきた米国最大級の政治団体である。同協議会の会長であるグローバー・ノーキスト氏は、共和党の意思決定に強力な影響力を行使するドンだ。今回、プレジデント編集部はノーキスト氏への独占インタビューに成功し、トランプ大統領誕生後のアメリカ経済の展望を聞くことができた。

悪質なオバマの政策がすべてストップ

トランプ勝利に伴う株価の値上がりは、バブルではなく実際に意味があるものだと考えるべきだ。アメリカでは、ほとんどの人々が「ヒラリー・クリントンが大統領に選出されること」や「民主党が連邦議会の上院で勝利すること」のどちらも高い可能性で起きると想定していた。それらは同時に、オバマ大統領が設定した政策課題が継続して可決していくことや、労働組合がさらに強力になることも意味していた。

これまでアメリカでは、自営業者、フランチャイジー、シェアリングエコノミーを含む経済の大半の「独立して働く人々」が、オバマ政権下でひどい規制と課税に苦しめられてきた。また、石炭などの伝統的なエネルギー産業分野やシェールガスの採掘に用いられる水圧破砕法も規制の対象にされてきた。株式市場の参加者は、高税率、さらなる規制、伝統的な民主党の労働法強化などによって、経済が悪化するだろうと考えていた。

しかし、トランプと共和党の勝利によって、これらの悪い政策のすべてが変わる。かわりに、オバマケア廃止、減税政策、規制緩和など、いくつかのよい政策が実行されることになるだろう。これらよい政策を実行するだけでなく、今後も継続すると思われていたオバマ政権による悪質な政策、すなわち銀行・エネルギー・ヘルスケアエコノミーの規制を含むさまざまな規制がすべてストップすることで、アメリカには確実に経済成長がもたらされる。

今現在、株価が上昇しているもっとも重要な要因は、アメリカ経済に課せられる予定だったさらなる増税や規制がなければ「何が起きないか」を市場が知っていたからだ。現在、株式市場への参加者は、経済成長が実現することでもたらされる幸福の中にいる。

減税政策と規制緩和で経済が成長する

とはいえ、多くの人々はトランプをまだよく知らないため、新たなアメリカの指導者が今後、具体的にどんなことを実行していくかに関心があるだろう。

現在、トランプ政権の閣僚が発表されつつあるが、そのメンバーのなかには伝統的な共和党支持者、金本位制・政府支出削減・減税政策を支持する人たちも多く存在しており、非常に健全な人事が行われていると言える。

トランプが選んだメンバーの中には、もともと彼の下で働く必然性がない人も多い。たとえばそれは、過去20年間にトランプのために働いたことがない人たちであり、トランプ個人の特別な友人ではない人たちのことだ。その結果として、トランプは政府を動かすための方法を熟知した有能な人物や、彼のビジョンを共有する人物を内閣に登用することに成功している。それらの人事は、私にも多くのアメリカ市民の目にも非常に現実的なものに見える。

トランプ政権の経済政策は、アメリカにとてつもない経済成長をもたらすことになるだろう。基本方針は「減税政策」と「規制緩和」という極めて明瞭な2本柱だ。

トランプはこれまで、減税政策について共和党の上下両院と非常に近い提案を行ってきた。そのためこれは、両者に共通する政策だと考えていい。今回の選挙によって上下両院のねじれが解消されたことを踏まえれば、減税に関する政策は6カ月以内にスムーズに承認されていくだろう。詳細を見ると、法人税の35%を15%まで引き下げることが明言されており、これは共和党下院の提案の20%よりも低いアグレッシブなものだ。最終的な法人税率は、両者の妥協案として15~20%引き下げられることになるだろう。法人税率の引き下げは、近年低下していた機械・自動車・コンピュータなどへの米国企業の新たな投資の促進に繋がる。また、すでに諸外国が採用している領土制課税(Territorial Tax System)に移行する点も評価に値する。これは、海外は課税対象外で国内のみ、というものだ。

2つめの柱は規制緩和である。それによって、石油・天然ガス・鉱物の採取に関するエネルギー産業は次の4年間でもっとも大きく成長する産業になるだろう。トランプは液化天然ガス・鉱物資源・新たなパイプライン建設等の許可プロセスの加速化を呼びかけている。これは、連邦政府が所有している土地における石油生産総量が減少しているのに対し、州政府が保有する土地や私有地では、新技術のおかげで地中深くにある石油や天然ガスを抽出することが可能になり、生産量が急激に増加しているからだ。仮にトランプが連邦政府の所有地におけるさらなる天然ガス事業の発展を許可した場合、アメリカのエネルギー生産は急激に増加するだろう。

トランプが断行する規制緩和はエネルギー分野だけに留まらない。それらは医療や金融制度なども含む広範囲なものになると思われる。トランプは、オバマケアによって増加・範囲拡大した連邦政府によるビジネスへの干渉、特にヘルスケア分野での政府干渉をなくしていくと述べている。ヘルスケアエコノミーにおける連邦政府の干渉の急激な減少により、アメリカ食品医薬品局における認可手続きなどのスピードアップが実行される。

また、オバマ政権は銀行業に多大かつまったく役に立たない規制を設けることで、長く不要なダメージを与えてきた。クリス・ドッド上院議員とバーニー・フランク下院議員によるドッド・フランク法が可決される前の段階に立ち戻ることで、資本が自由に動きやすい環境を再構築することになるだろう。

貿易政策がアメリカ経済を破壊するのか

一方、政権を担うトランプと共和党保守派の間には政策の違いも存在する。特に違いが顕著なのは、貿易政策に対する見解である。

トランプの、時に保護主義的な貿易に関する考え方は、自由貿易に賛成する伝統的な共和党とはまったく異なるものだ。トランプは、国際貿易を拡大させる自由貿易に関する合意について批判的であり、貿易合意はアメリカにとって不平等なものだと選挙中から言及してきた。私は共和党上院議員・下院議員が、我々のすべての貿易パートナーに対して貿易を拡大する戦いを続けることを望んでいる。

私がトランプの貿易政策に関する見解を心配するのは、それがアメリカの経済成長を破壊する懸念があるからだ。トランプはTPPを批判しているが、かつてはオバマもブッシュ政権におけるアメリカと韓国の貿易合意について批判してきた。しかし、オバマは大統領任期中に貿易合意の内容をある程度変更することで合意し、調印したという前例がある。これはただの私の希望だが、あのときのようにトランプも再交渉し、最終的にはアジアとアメリカ経済の統合が進展する機会が失われないことを望んでいる。

真にトランプが求めているのは、アメリカのさらなる経済成長と雇用の創出だ。それらは、現在オバマや民主党によってアメリカ経済に加えられているダメージを払拭し、減税政策や規制緩和などを行うことによって必ず達成することができる。特に、法人税と所得税が引き下げられることは、アメリカ経済を成長させるもっとも大きな助けになるだろう。経済政策が実行されていくプロセスのなかで、トランプも関税などの保護主義的な政策は目的達成のためにそれほど重要ではないと気が付くはずだ。我々がやるべきもっとも重要なことは、経済成長を加速させていくことなのだ。

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