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特集:ドナルド・トランプ政権研究序説

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トランプ政権が発足してから、ちょうど3週間が経過しました。この間にどれだけ世界を騒がせたことか。特に「イスラム圏7カ国からの入国一時停止」の決定は、司法を巻き込んだ法廷闘争に転じています。もっとも、こういうところが米国政治で、三権分立による相互チェック体制の頑丈さを感じるところです。

この間、トランプ大統領はあいかわらず「天然」な言動を繰り返しています。その周囲は既に多くのスタッフに取り囲まれ、どんな意図で動いているのかが見えにくくなっている。始動したばかりの「トランプ政権」の研究に取り掛かってみました。

●23本の「大統領令」を振り返る

トランプ政権に対して、あらゆる種類の批判が寄せられている。しかし「仕事をしていない」という批判だけは当てはまらないだろう。仕事はやり過ぎるくらいやっている。なにしろ3週間で大統領令が23本も出ているのだから。

特に1月27日に発出された大統領令”Protecting The Nation From Foreign Terrorist Entry Into The United States”は、全米の空港を大混乱に陥れるとともに、内外の批判を浴び、ついには訴訟による仮処分にまで発展した。ただしこうやって反撃を受けている間に、他の問題が見過ごされていくという効果も得られるわけである。

新しいトップが矢継ぎ早に指示を出してくると、反対する側は次第に手が回らなくなっていく。例えば新社長として、自分が買収した会社に乗り込んでいく場合、こういうやり方が望ましい。およそ改革は、電光石火をもって良しとする。どこかの国の「成長戦略」のように、何年もかけて少しずつ進めるのは上手なやり方とは言い難い。

トランプ政権は支持率が低く、本人に公職経験もなく、与党・共和党との関係も微妙である。だからこそ、トランプ大統領は素早く大胆に動かなければならない。

幸いなことに、米連邦政府の権限は大統領個人に与えられている。この点は、「内閣」が全体で責任を負う日本とはまったく違っている。大統領は、自らの権限を預ける形で政府を形成する。外交に関する権限は国務長官に付与するが、その職名はSecretary of Statesであって、Minister of Foreign Affairs(外務大臣)ではない。つまり長官といえども、大統領の「秘書」に過ぎない。極端に言えば、大統領が私用のツイッターで内外に自分の考えを発信することも、一概に否定されるべきではないのである。

○トランプ政権による大統領令



大統領令には2通りある。法律に則って、行政組織に対して指示を出すExecutive Order(行政命令)と、非公式に大統領の考えを伝達するPresidential Memorandum(大統領覚書)である。ホワイトハウスのHPで全文を読むことができるが、いずれも長い文章である1。特にExecutive Orderは事の性質上、法律顧問が厳重にチェックしているはずである。

そうだとすると、大統領令をいったい誰が書かせているのかが気になってくる。とにかく事務量だけでも半端なものではない。大統領本人が細かな点まで見ているとはとても考えられない。さて、「猿回し」はいったいどこにいるのだろうか。

●ホワイトハウスの内側を探索する

トランプ政権の閣僚人事は遅れていて、国務、国防、国土安全保障、運輸、教育、司法の6長官がかろうじて決まったところである。1月31日、最高裁判事に保守派のニール・ゴーサッチ判事を指名したこともあり、上院の民主党は反発している。与野党の対立は先鋭化し、承認手続きはますます滞ることになるだろう。

この間、トランプ政権を動かしているのは、一握りのホワイトハウス内のスタッフたちということになる。では、誰が力を持っているのか。公開情報をもとに、執務棟であるウェストウイング内で「誰がどの部屋に割り当てられているか」の図面を作成してみた。



南東角部屋のいちばんいい場所にオーバルルーム(大統領執務室)がある。そして南西角部屋には、秘書室長とも言うべきラインス・プリーバス首席補佐官の執務室がある。ところが同氏はカメラが備えられた通路を通らないと、大統領に会うことができない。これはマイク・ペンス副大統領といえども同様である。連日の「冷や汗会見」で知名度急上昇のショーン・スパイサー報道官も、大統領からは遠い部屋にいる。

ところがオーバルオフィスの左隣には、大統領専用の書斎とダイニングの小部屋がある。ここと直接つながっている部屋は、「誰にも見られずにオーバルルームに出入りできる」わけで、歴代の政権でも大統領の腹心が占めてきた。トランプ政権においては、ジャレッド・クシュナー上級顧問が主となっている。36歳と若いが、「大統領の娘婿」という気安さもあってか、政治担当側近の地位を占めている。

その隣に直結しているのが、スティーブ・バノン首席戦略官の部屋である。つまりバノン氏もまた、クシュナー氏の部屋を通ってこっそりと大統領に会えることになる。「首席戦略官」(Chief Strategist)というポスト自体がトランプ政権で新設されたものであり、大統領への距離という点では「別格」の存在と見て良いだろう。

政権内のスタッフを、以下のように3分類することができる。①「共和党チーム」は主要なポストを押さえ、トランプ政権をなるべく共和党本来の路線に近づけたいと考えている。②ところが選挙戦を導いた「ポピュリストチーム」は、大統領からの強い信頼を武器に、選挙期間中の過激な公約の実現を目指そうとしている。③NSC(国家安全保障会議)担当のマイケル・フリン補佐官は、独自の勢力を築こうと努めている。

1. 共和党チーム:ペンス副大統領、プリーバス首席補佐官、スパイサー報道官
2. ポピュリストチーム:バノン首席戦略官、コンウェイ顧問
3. 安全保障チーム:フリンNSC補佐官

ところが1月28日付のPM(大統領覚書)では、NSCの改組が打ち出された。特に注目を集めたのは、正副大統領や閣僚などで構成されるプリンシパル会議において、バノン首席戦略官が常任メンバーになったことである。

NSCは兵士の生死に関わる事項を扱う会議であるから、これまでは「政治スタッフは入れない」ことが不問律であった。かつてブッシュ大統領の参謀と呼ばれたカール・ローブ補佐官でさえ、NSCには出入りしていない。またオバマ大統領が腹心デイビッド・アクセルロッド上席顧問を出席させたところ、閣僚から顰蹙を買ったという事例もある。これらの前例があっさり破られたということは、「バノン恐るべし」ということになる。

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