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ドル高かドル安か、それが問題だ―トランプ米大統領の場合

Stronger Or Weaker Dollar? That Is The Question For President Trump.

「午前3時に電話が掛かってきたと思ったら、トランプ米大統領だったよ。まさか私に為替について質問してくるなんてね。」

マイケル・フリン米大統領補佐官は、電話の後で奥様にこう声を掛けたのかもしれません。日米首脳会談前、ドル高とドル安のどちらが米経済にとって有益か安全保障担当である自分に質問してくるとは、夢にも思っていなかったことでしょう。元陸軍中将で国防情報局長官を務めた経験を有し、銀行家の父と不動産業界で働く母を持っていたとはいえ、マクロエコノミストではありませんからね。もちろん、フリン補佐官は専門家に尋ねるべきと回答したようです。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙で、「ドルは強過ぎだ。我々に甚大な打撃を与えている(Our currency is too strong. And it’s killing us)」と口先介入した割に、どちらの方向で会談を進めるべきか思い悩んだのでしょうか。

そもそも、3G政権には退役軍人(General)のほかゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、億万長者(Gazillionaires)が存在するのですから、わざわざフリン補佐官に電話を掛けなくともふさわしい相談相手がいたわけです。例えばカール・アイカーン特別顧問は規制改革担当とはいえ物言う投資家として米株市場を動かし、ウィルバー・ロス商務長官候補は“再建王”の称号通り企業再建で資産を築いてきました。国家経済会議のゲイリー・コーン議長はゴールドマン・サックスの前最高執行責任者で、他にもGS出身者にはスティーブン・ムニューチン財務長官候補、スティーブ・バノン首席戦略官、ディナ・パウエル大統領補佐官兼経済担当が並びます。ロス商務長官候補は不法移民を雇用した問題、ムニューチン財務長官候補は住宅差し押さえ問題からカリブ海の租税回避地アンギラを舞台にしたビジネスで指名承認が暗礁に乗り上げているため、相談できなかったということもないでしょう。

それでもフリン補佐官に白羽の矢を当てたのは、同補佐官との強い結びつきを感じさせます。あるいは、投資家として知られた面々に質問しラストベルトを中心とした支持者から反発を受けることを回避したかったのか。

フリン補佐官、質問を受けた時もこんな表情だった?
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(出所:Gage Skidmore/Flickr)

ひとつ明確な点は、不満分子がトランプ米大統領その人の側にいるという事実です。政権発足からわずか2週間だというのに、リークが次々出てきています。ターンブル豪首相との電話会談で難民引き受け合意に関し憤慨し電話を突如切ったとの話や、メキシコ大統領との電話会談でトランプ氏がメキシコの“悪い仲間(bad hombre)”を米軍が撃退する可能性に言及したとのニュースが出回りました。果てには夜中にバスローブ姿で歩き回っているとも伝えられています。本当にバスローブを持っているかは別として、夜中に思いを巡らせる癖があれば、午前3時にフリン補佐官に電話を掛けたという話に説得力が増しますね。

トランプ米大統領とホワイトハウスのスタッフとの間で亀裂が生じているのか、あるいは自身の進言を聞き入れてもらえずストレスのたまった政権関係者がリークに訴えているのかは不透明です。過去の例をみても米大統領にリークはつきものですが、致命的なリークは政権の根底を揺るがしかねません。

基本に立ち返って、なぜクリントン政権がドル高政策を掲げたのか振り返ってみましょう。ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのマーク・チャンドラー通貨戦略最高責任者は、1995年に財務長官に就任したロバート・ルービン氏がクリントン政権下で“強いドル”政策を開始した背景につき、ロイド・ベンツェン前財務長官による円高・ドル安誘導の修正だったと説明します。ベンツェン氏と言えば、“ベンツェン・シーリング”でもお馴染みですね。また、当時はマーストリヒト条約が締結しユーロ誕生が目の前に迫りつつある頃。基軸通貨としての存在感を打ち出す必要性がありました。

翻って現在、外貨準備高の割合をみると2016年7~9月期にドルは63.28%と2年ぶりの低水準でした。

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(作成:My Big Apple NY)

逆にユーロは20.29%と2015年4~6月期、円に至っては4.48%と2008年7~9月期以来の水準まで回復。その他通貨も3.30%2013年1~3月期以来の水準へ戻し、2012年7~9月期に5.92%でピークへ向かう兆しを見せています。トランプ政権の対外政策次第では、構成比率に劇的な変化が訪れないとも限りません。

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