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フランス:原子力比率引下げと再エネ比率引上げに関する展望は?

 先月17日のIEA(国際エネルギー機関)の発表では、IEAの国別エネルギー政策レビューとして、フランスを対象とした “Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review” が提示されている。

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2017.1.17 IEA

 フランスは、IEA加盟国の中でも低炭素エネルギー構成を実現している先進国。2015年でのエネルギー全体に占める化石燃料比率は47%に過ぎないが、エネルギー全体に占める原子力比率は46%(資料1)、電力分野での原子力比率は78%(資料2、資料3)となっている。
原文より抜粋》
France is one of the leading IEA countries when it comes to a low-carbon energy mix: only 47% of energy came from fossil fuels in 2015, thanks to the large share of nuclear energy, which made up 46% in the energy mix and 78% of electricity generation, the highest share worldwide. 
<資料1>
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2017.1.17“Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review

<資料2>
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2017.1.17 “Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review

<資料3>
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2017.1.17 “Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review

 フランスは2015年8月、温室効果ガスの排出抑制に資する“グリーン成長(Green Groeyh)”を実現するために、2030年と2050年を目標年次とする長期的なエネルギー転換のための枠組みを採択した。

 その中で、①原子力発電比率について、2015年実績78%を2025年50%にまで引き下げるという野心的目標を掲げるとともに、②再生可能エネルギーの最終エネルギー消費量に占める比率について、2014年実績15%を2020年23%にまで引き上げ、③再エネの発電電力量に占める比率について、2015年実績16.5%を2030年40%にまで引き上げるとの目標を掲げた。

 このうち、最終エネルギー消費量に占める再エネ比率を2020年23%とする目標に関して、今後6年間(2015〜20年)に必要な伸び率が過去9年間(2005〜14年)の伸び率の2倍であるとして、その達成の難しさを示している。
France has witnessed growing shares of renewables, reaching 15% in total final consumption (TFC) in 2014. However, it is not yet on track towards achieving its target of 23% by 2020. The required growth in the next six years (2015-20) will need to be twice that of the rates achieved over the last nine years (2005-14).
 また、再エネの中での割合が2005年以来36%以上を占めている太陽光とバイオマスは目標を達成しているが、風力に関しては煩雑な行政・司法面で許認可手続きや社会的受容性の不足といった非経済的理由によって導入拡大の遅れが顕在化していると指摘。
Targets have been reached for solar photovoltaics and biomass, which alone account for more than 36% of the growth of the renewable energy share since 2005, but there is a gap to be filled for hydro, wind power and heat. Onshore wind has reached about 10 GW, but offshore wind deployment has not started despite ambitious plans. Delays in the development of wind energy are the result of non-economic barriers rather than economic ones, including the overlapping administrative and judiciary procedures for clearing a permit of any claim (seven years on average for wind mills), coupled with a lack of social acceptance for wind and biomass. 
 原子力発電比率について、2015年実績78%を2025年50%にまで引き下げるという目標に関しては、電力需要や省エネ、再エネの進展具合によって、電力コストや電気料金、温室効果ガス排出量、国内でのエネルギー供給や隣国へのエネルギー輸出に係る信頼性に影響を及ぼす可能性があると指摘。
The 50% target would imply the closure of a large number of plants. Depending on the evolution of electricity demand, progress in energy efficiency, and renewables deployment, the 50% target may affect the economics of electricity and final electricity prices, GHG emissions and the reliability of supply in France as well as exports to neighbouring countries.
 フランス政府に対して、老朽プラントの保守管理の増加による発電停止、廃炉や長期的な廃棄物管理に適応するために、電力の安全供給を確保すべきと提言している。また、先に掲げたエネルギー目標を実現しようとするならば、長期運転に係る安全性・経済性や、電気料金への影響、温室効果ガスの排出量、原子力産業の将来性の評価が必要であるとしている。
The government needs to ensure the security of the electricity supply at a time of increasing outages or suspension of ageing plants for increased maintenance, and to deal with decommissioning and long-term waste management. When implementing the target, through the PPE among others, the government should assess the safety and economic aspects of LTOs, the impact on electricity prices, GHG emissions, and the future of the French nuclear industry, and ensure that the industry has the long-term planning horizon to implement safety upgrades in a timely manner. 
 以上は、先のIEAレビューを引用したものであるが、その報告書には『原子力大国フランス』の特徴を示すデータなど有用なものが多い。以下では、そのうち幾つかを掲げておく。

 2015年における一次エネルギー供給構成(資料4)と電力供給構成(資料5)、更にはそれらの再エネ比率(資料5、資料6)を見ると、各国それぞれに多様であることがわかる。バイオマスは一次エネルギー供給の面で、水力は電力の面で、それぞれ高い比率であることが見て取れる。どのような資源構成が適当なのかについては、それぞれの国ごとの事情や政策判断によって異なるということも理解できる。

<資料4>
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<資料5>
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<資料6>
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<資料7>
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2017.1.17 “Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review

 2015年までの電気料金の推移(資料8)を見ると、①電力自由化が始まった2000年頃を境として、各国とも電気料金は上昇傾向にあることや、イギリス・フランス・ドイツで比較すると、②産業向け電気料金ではドイツが突出して最も高く、③家庭向け電気料金ではドイツが最も高くなっていることがわかる。

 2015年の電気料金の内訳(資料9)を見ると、日本・イギリス・フランス・ドイツで比較すると、ドイツの税・賦課金の割合が突出して高いことがわかる。この理由も、それぞれの国で政策が異なっている結果だ。

<資料8>
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<資料9>
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2017.1.17 “Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review

 電力量当たりのCO2排出量の推移(資料10)やGDP当たりの化石燃料由来CO2排出量の推移(資料11)を見ると、原子力大国フランスが常に低位安定であることがわかる。

 日本で2011年以降に上昇しているのは、2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で日本国内の原子力発電が、一部では再稼働し始めているものの、実質的にほぼ全面停止状態に置かれているからである。

 エネルギー使用の効率性の推移(資料12)を見ると、最も優れているのはフランスではなくドイツであることがわかる。

<資料10>
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<資料11>
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<資料12>
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2017.1.17 “Energy Policies of IEA Countries / France 2016 Review

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