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「米入国禁止」差し止めの価値の大きさ

もちろん、アメリカにはいろいろな問題がある。
それでも、わたしは、この国が好きで、何度も訪れている(いまはこんなこと書いているから入国拒否をされる恐れもあるが・・・・)。

アメリカの裁判所には、「court of justice」と書かれている。
わたしは「正義」を意味する「 justice」と書かれていることに敬意をいだいできた。
司法は、 justice、すなわち、公正であらねばならない。

「justice」のためなら、こんな粋なことをしてくれる人がいるし、それを正しいことと裁定してくれる裁判所(court of justice)がある。

トランプ大統領が、イスラム圏7カ国の人々の入国を一時禁止する大統領令に対し、ワシントン州政府が違憲である旨を訴え、州政府を代理して州司法長官が、合衆国政府を提訴した。そして、連邦裁判所は、入国制限の即時差し止めを命じる仮処分を下したのである。久方ぶりにほんとうにうれしいニュースだった。

トランプのことだから、これから先、何をしてくるかわからない。
しかし、それでは通らないことを示すのがjusticeの精神だ。

わたしがまだ20代のころ、ロサンゼルスのユニバーサルスタジオの乗り物で、与えられた指定番号とは違う座席に座っていたときのこと、幼い子どもを二人連れた若いパパさんが何やら猛然と抗議してきた。わたしが彼らの席に座ってしまっていたためだった。
ちょっとした勘違いなのだからそこまで目くじらを立てなくてもいいのにと日本人的に思ったが、それも彼らにとっては小さなルール破りに対するjusticeの主張なのだと思った。
当然、列に対する割り込みも、明らかな不公正である。
あるとき、長距離バスの切符売り場で並んでいると、アルコールか薬物でアタマがヘンになっているような白人の若者が、わたしの前に割り込んだとき、わたしの後ろに並んでいたおばあさんが、わたしの肩をちょんちょんと叩き、怖い顔で「あの人に抗議しなさい」と言われたこともある。
日本人にとっては、ときにうっとうしいくらいだが、ルール破りには厳格すぎるくらい厳格なのが良きアメリカ人たちである。

だから、交通道徳でも、いきる。
信号のない横断歩道の脇にちょいと立つと、すぐに左右、どちらから来るクルマも、たちどころに止まってくれる。
クルマを運転して信号のない交差点に差し掛かったときも、相手車両はニコッとして進路を譲ってくれる。

また、市街地の路線バスに乗ったときは、少しでも自分より年上の人が自分の前に立つと、すぐに席を譲る。ほんの10数分乗っているあいだにどれだけの数の譲り合いが、にこりとした微笑みと「サンキュー」という言葉とともに繰り広げられたことか・・・・。

行先がわからず立ち往生していたわたしを先導して目的地まで先導してくれたおばあさんもいた。

それが、わたしにとって、初めてのアメリカだった。

社会の真ん中部分を構成している良き市民層がしっかりといる国だった。

もちろん、いろいろな人はいる。
トランプを支持に回ったプワー・ホワイトと呼ばれる人々の叫びというものが強かったあまり、あのような男が大統領に押し上げられてしまったのだろう。

民主主義が、貧困というものを背景に、「007」か、ハリウッド映画の闇の世界の帝王のような人物を、マジでオモテの世界の帝王にしてしまうという映画かアニメのようなことが現実に起きてしまった。

だけれど、この国では、自分たちが信じていた根本的価値をたった一人の暴君によって覆されそうになるとき、そのような不公正は許すことができないというバネがはたらく。
だから、2001年9月11日の同時テロの折、ホワイトハウスに激突させることを目的に飛んでいることを知った乗客たちが、自分たちの死と引き換へにそのテロを阻止しようと操縦中のテロリストを取り押さえ、そのまま墜落するということもあった。

だから、こんなこともあった。
まだいろいろあるだろうけど、これはひじょうにスカッとするニュースだった。

あまりに不当なアメリカ大統領の大統領令の効力を即効、停止させてしまう司法に敬服した。
入管当局も、この決定に基づいて入国を認めている。

日本経済新聞 2017/2/4 23:18 (2017/2/5 0:46更新)
 

米入国制限に司法「待った」 トランプ氏は反論

【ワシントン=平野麻理子】議会審議を経ない大統領令を連発するトランプ米政権に司法が「待った」をかけた。テロ対策を理由にイスラム圏7カ国出身者の入国を一時禁止する大統領令に対し、西部ワシントン州の連邦地裁は3日、入国制限の即時差し止めを命じる仮処分を下した。政権は異議を申し立てる方針だが、同様な訴訟は全米に広がっており、法廷闘争は長期化が必至。「米国第一」の政策の迅速な遂行を狙うトランプ政権に大きな打撃となりそうだ。


 「もし国家が安全保障のために誰が出入国でき、誰ができないか決められないと、大変なことになる!」「この判事とやらの、法執行を国から奪う意見は、バカげていてそのうちひっくり返されるだろう!」。トランプ大統領は4日朝、ツイッターに次々と投稿し、ワシントン州連邦地裁の差し止め命令を非難した。

 差し止め命令を受けて米入管当局は3日夜、入国禁止対象だった旅客の搭乗を認めるよう航空会社に通知。日本航空と全日本空輸は中東・アフリカ7カ国の旅客の米国便搭乗を原則として断るとしていた従来方針を撤回し、有効な査証(ビザ)があれば日本時間4日午後の便から搭乗を認めたことを明らかにした。

 中東のカタール航空やエールフランスなども同様の対応を発表した。

 米国務省も4日、7カ国出身者であっても有効なビザを持つ人は入国を認める方針を示した。米メディアが報じた。

 同省によれば大統領令に伴い6万人弱のビザが無効となっていた。航空機搭乗を断られたり、米国内の空港で入国を拒まれた事例が相次いでいたが、こうした事態は改善に向かうとみられる。

 ただ東部のマサチューセッツ州ボストンの連邦地裁は同じ3日、大統領令を支持する判断を示し司法判断は割れた。トランプ氏も強硬姿勢を崩しておらず、入国管理などの現場で混乱が続く恐れも否定できない。

 問題の大統領令は1月27日に署名した。イランやイラクなど7カ国からの入国を90日間禁じ、難民受け入れも120日間停止した。排外的な内容に内外から批判が噴出。署名から3日後の先月30日、ワシントン州は中西部のミネソタ州と共同で、移民やその家族の権利を侵害する大統領令は違憲だと提訴した。

 違憲審理は時間がかかるが、その間にも多くの対象者が影響を受ける。このため同州の連邦地裁は審理する間の暫定措置として大統領令の効力を一時差し止め、それを全米に適用すると命じた。

 差し止め命令を受けてホワイトハウスは「国土を守り、米国人を守る権限と責任がある」との声明を出し、大統領令の正当性を強調した。当初は「理不尽な命令の執行停止を求める」としたが、約10分後に「理不尽な」という文言を削除するなど動揺もうかがわせた。

 今後の焦点は法廷闘争に移る。ホワイトハウスによると差し止め命令の停止を求め司法省が高裁へ上訴する方針。命令が続くのか、停止されるのかが注目される一方、違憲審理は地裁で進む。

 米国の連邦裁判所は日本と同じ三審制だ。最高裁まで争うことになれば、違憲・合憲どちらの判断が下るにせよ、数年かかる可能性が高い。ワシントン州のファーガソン司法長官は米テレビの取材に最高裁まで戦う準備があると明らかにした。

 米ワシントン・ポスト紙は司法アナリストの話として「大統領は移民政策に関わる幅広い権限を持っており、大統領令を完全になかったことにするのは難しい」と伝えた。大統領の権限が大きい米国の移民法では、大統領が米国の利益に有害と判断すれば、外国人の入国を必要な期間停止することが認められている。

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