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SNSに脳を乗っ取らせるな:プロが勧めるコツ

By GEOFFREY A. FOWLER

――筆者のジェフリー・ファウラーはWSJパーソナルテクノロジー担当コラムニスト

***

 フェイスブックを考えもなくやたらとチェックするのは、実験用のネズミが取る行動とよく似ている。餌を期待して常にレバーを押すネズミのことだ。

 ご褒美がいつもらえるか分からないため、ネズミはひたすらレバーを押し続けざるを得ない状態になる。

 スマートフォンをチェックするとき、脳内は次のような状態になっている。フェイスブックで誰かが自分のことを話しているかもしれない。よし、アプリを開いて見てみよう。ドナルド・トランプ大統領がまたツイートしたかもしれない!よし、見てみよう。インスタグラムでハートをもらえたかもしれない!よし、見てみよう。

 しかし、人間はネズミとは違う。克服するためのいくつかの技を習得できれば、人間の脳はご褒美を無視し、巧みに脳を乗っ取ろうとするアプリにあらがうことができる。

 筆者は自分の早朝の悪習が気になり始めた。コーヒーを飲む前、半分だけ目が覚めた状態で、1時間ほどスマホを手に横になったままフェイスブック上のトランプ大統領旋風に没頭する習慣だ。そこで、依存症すれすれの状態から自分を引き戻すには具体的にどうすればいいか、人間の行動について研究する心理学者や脳科学者、アプリデザイナーにアドバイスを求めた。

 驚くことに、即座にソーシャルメディアの使用を断つことは勧められなかった。そうするとむしろ不安が増し、本当に重要なことを逃す可能性さえあるためだ。必要なのは、ソーシャルメディアを生活の一部として管理するスキルだ。

誘惑を断つ

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校で神経科学について研究するアダム・ガザレイ博士によると、われわれの脳は「どん欲に情報をむさぼる」ようにできている。そうであれば、ソーシャルメディア企業に主導権を渡さないことだ。つまり、スマホやパソコンでアプリの通知機能をオフにするのだ。特に、見逃したくないという気持ちが生じやすいライブ動画は、通知機能を切っておく必要がある。

 誘惑をさらに取り除くには、2000年より前から存在していたテクノロジーのみを使って仕事をすることだ。主な仕事用の端末ではソーシャルメディアに一切アクセスできないようにすれば、気が散らずに済む。フェイスブックにログインしない、あるいはアプリのインストールさえしないことだ。

 仕事中や運転中、重要な社交の場ではスマホを隠しておくことだ。サイレントモードのスマホが近くにあるだけでも、勉強に支障をきたしたり、会話がおろそかになったりすることが調査で示されている。

一気読みをしない

 ツイッターまたはフェイスブックでは、記事を1本読むと、さらにもう1本、そしてもう1本と切りがなくなりがちだ。

 2014年出版の「Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール」の著者でアプリ市場コンサルタントのニール・イヤール氏は、すぐに何でも読まないよう自分に言い聞かせていると話す。代わりに記事を「Pocket(ポケット)」というサービスに保存し、その読み上げ機能を使ってジムで運動中に聞くようしているという。

 ガザレイ氏によると、真剣な仕事の合間に休憩としてソーシャルメディアを使うのも害がある。脳は空っぽにする機会が必要だからだ。脳の集中力を高める1番の方法として、研究者は短時間でも運動することを勧めている。フェイスブックをのぞくよりは、ただ宙を見つめるだけの方がいいだろう。

一線を引く

 ソーシャルメディアのせいで、夕食の席や寝室でさえも配偶者や恋人を無視するようになっているのであれば、ソーシャルメディアを使わない時間を設ける必要がある。南カリフォルニア大学のウェンディ・ウッド教授(心理学と経営)は、ルールを設けることは親にとっても重要だと話す。「自分が身につけたいスキルは、子供にも身につけてもらいたいだろう。つまり、健康で有益な(ソーシャルメディアの)使い方だ」

 ルールを破りがちな人は、テクノロジーが役に立つかもしれない。最新のWi-Fiルーターの中には、親が子供に特定の端末でのインターネット利用を制限できるペアレンタルコントロール機能がついているものがある。また、スマホでウェブサイトやアプリをブロックする「Freedom(フリーダム)」「SelfControl(セルフコントロール)」「Unplugged(アンプラグド)」といったアプリを使うのも助けになるかもしれない。

 1週間または1日の中でソーシャルメディアをチェックする時間を限定できるのであれば、友人にそのことを伝えておくといいだろう。そうすれば、すぐに返事がもらえなくても、友人が腹を立てることはないはずだ。

新たな規範を作る

 少し前までは、会議や授業で見るからに注意散漫なそぶりを見せることは極めて失礼なことだった。しかし今では多くの人がスマホやノートパソコンで堂々とスクロールしている。上司は、会議の場に充電ステーションを設けることで、職場のカルチャーを改善することも可能だ。そこに誰もがスマホを置けるようにしておけば、議論に集中できる。コメディー劇場など一部の公共施設では、スマホを預けてもらったり、袋に入れて封をしてもらったりしている。

 イヤール氏は、悪習のある友人には、ばつが悪い思いをさせるのも手だと話す。ただし、礼儀正しいやり方でだ。もし夕食の席で友人があなたの話に集中していなければ、「大丈夫?」と尋ねてみよう。それをきっかけに重要な会話が始まるかもしれない。

テクノロジー業界も手を貸すべき

 ソーシャルメディア業界にも責任がある。企業側は通常、ユーザーがアプリでどのくらいの時間を過ごしているかを正確に把握している。そこでイヤール氏は企業に対し、例えば特定の時間は更新情報が流れないよう設定できるようにするなど、問題行動のあるユーザーに助け船を出すよう提案している。

 そしてわれわれにできるのは、グーグルの元デザイナー、トリスタン・ハリス氏が提唱する「Time Well Spent(時間の上手な使い方)」という理念を支援するアプリメーカーを支持することだ。これは、アプリメーカーはインターフェース(操作画面)をもっと分かりやすくし、無駄な時間をかける必要がないようにすべきだと提案するものだ。

 最後に、これだけは確かだ。われわれの注意を引くことが主要命題であるソーシャルメディア経済においては、負けるのはわれわれの方だ。

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