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為替に関するトランプ大統領の発言

トランプ大統領の発言もどこまで深く考えた上でのものなのかわからないことだらけであります。もともと不動産事業家とはいえ、一ファミリー企業のオーナーだった人が大統領まで上り詰める過程においてどれだけ「お勉強」をしたか私が知る故はありません。外交を語るために本の一冊でも読んだのか、為替を語るために専門書とにらめっこしたのか存じ上げませんが、一大統領候補者が突然、全知全能の大統領になることは1000%あり得ません。それはどこの国家元首でも同じです。

そのためにブレーン(=外付けの知能)を持つわけです。そのブレーンは専門的知識を持つのみならず、バランス感覚をもって大統領に助言し、大統領はそれを聞き、判断する能力を求められます。時としてその判断は戦略的であり、攻撃的であり、あるいは保守的であり、内向きであることもあるでしょう。が、発言は慎重に行われるべきだというのが私の思うところであります。

そのトランプ大統領が為替に関して「自国通貨が高すぎる」とし日本や中国が通貨安誘導を行っていると発言したようです。本当でしょうか?これをお読みの方は「そんなわけねー」と即座に反論されると思います。私もその一人です。

為替変動はどうして起きるのか、といえば通貨の需要と供給のバランスであります。よくシーソーを例えに出すと思います。どちらかが下がればどちらかが上がる、とても分かりやすい仕組みです。さて、ここでシーソーに154キロの白鷗と子供が乗ったとします。当然、勝負になりません。では体重30キロちょっとの小学生を5人乗せればどうでしょうか?ほぼバランスします。その子供の一人が体重を数キロ増減したとしても大した差にはなりません。為替の変動はまさに横綱と子供の戦いのようなものであります。そして日本の金融政策は子供の体重の増減でしかありません。

ウィキに2016年通貨別外国為替シェアが出ています。通貨は相対(あいたい)ですのでシェアの合計は200%になりますが、米ドルは87.6%と圧倒しています。2番のユーロが31.3%、円が21.6%です。ミセスワタナベの力量でしょうか?他はポンドがかろうじて2けたですが、それ以外の通貨は勝負になりません。それでも米ドルと円は4倍の差があるということです。

ということは円ドルで見れば米ドルの変動理由が市場へ4倍のインパクトを与えるといってもよいでしょう。となると黒田日銀総裁の異次元の緩和は確かにサプライズ感で円安を演出しましたが、手の内がわかってしまった後はほとんど効果を出せなくなったのは「日本円の衝撃度が足りない」の一言であります。

こうなると為替はなぜ動く、という需給の原点に立ち返るしかありません。その中でドルは円に限らずほぼすべての通貨に対して独歩高を演じています。何故か、といえば皆がドルが欲しいと思ったから、これ以外に理由は存在しません。なぜ、欲しい通貨なのか、といえば

基軸通貨であり事業の取引には欠かせないこと
アメリカ経済が7年半も堅調に推移していること
金融緩和政策からいち早く卒業したこと
世界で不和が見られること
ユーロ圏の先行きが不透明でユーロの威信が揺らいでいること
それ以外の代替通貨が育っていないこと

でしょうか?私だってカナダドルで給与をもらうより米ドルで給与が欲しいといつも思います。なぜならカナダドルは米ドルからみたヨーヨーみたいなもので上に、下にぶれまくるからです。変な話ですが、カナダドルが強い時には国境を越えてコストコやアウトレットモールに買い物をしに行きたい気がおきます。ガソリン代をかけても時間を費やしてもカナダにないものがそこにあるからです。しかし、今のようにカナダドルが対米ドルで安いとその気はまったく起きません。

では、トランプ大統領が本気で米ドルを安くするにはどうしたらよいでしょうか?中国や日本に文句を言うのではなく、自国のドルを欲しくない通貨にすればよいだけです。国家債務を青天井で引き上げてもよいでしょう。金利を当面上げないとFRB議長が言い切ってしまうのもありでしょう。景気が8年目にしてついにダウンとなる不名誉な経済状況もよいでしょう。

ですがそれ以上に世界にテロも起きず皆が輪になって仲良くするという手もあります。なぜならドルは安全通貨だからです。ところがトランプ大統領は逆さまの行為をしています。刺激的な発言を行い、世界の不和を増長するのです。こうなると通貨のトレーダーは安全通貨のドルを買うという皮肉な行為に出ざるを得ないのです。

ところで米ドルの基軸通貨体制はいつまで続くのでしょうか?大戦後、英国ポンドからドル体制が明白になったのちも何度となく、米ドル一極体制への挑戦はありました。ユーロの創設はもっとも大きな効果がありました。中国は通貨バスケットによる新たな通貨づくりに挑みました。世界銀行はバスケットに金(ゴールド)を入れるという発想も打ち出しました。IMFのSDR(特別引き出し権)もそれに近い発想でしょう。しかしそれがうまく行かないのは政治が関与するからでしょう。そしてユダヤがドルの覇権を牛耳ります。

個人的に私の目が黒いうちにこれがひっくり返る唯一のアイディアとして国籍無き「仮想通貨」が世界を支配すれば政治は関与しなくなり新しい世界が生まれるかもしれません。ドルも偉大なるローカルカレンシーになるのです。そうなればドルは暴落します。国債の価値も半値八掛け二分の一とまでは言いませんが、全ての投資家の投資基準が変わってしまいます。

為替とは一大統領がつぶやいたぐらいでどうこうなるものではありません。一大統領が需給のファンダメンタルズを変えるほどの行為を行えば別ですが。

為替市場は事業の為の実需と共に秒単位でゲームするトレーダーの格好の仕事場であります。彼の発言には重みもないのに大きく揺り動かされるこの市場は特殊であります。国際貿易の観点からは個人的にはもっとどんと構えた相場であるべきではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。

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