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新聞でも世界制覇を目指すベゾス氏

昨年末から先月にかけて、ワシントンポストに関する景気のいい話を立て続けに目にしました。気付いたのをあげて見ます。

まずはポストのPublisherにしてCEO、Fred Ryanが社員に向けて「皆さんの信じられないほどの働きで、2016年は儲かって、成長している。来年はさらなる戦略を進めるために資金を使う」というメモを出したというPoynterの記事。

これを受けて、PoliticoMediaが「儲かったポストは5ダース以上の記者を新規採用へ」と報じ、年が明けるとポストは自らのPRBlogで「突発事態を直ちに深掘りする8人編成のチームを新設する」と公表、さらに、CNNは「ポストはビデオチームを30人の大幅増員へ」と続きました。

米国では、紙の新聞への広告支出が減少する一方で、昨年も通年で前年比マイナス13.9%で、第四4半期に限れば前年同期比マイナス19.9%という絶望的な状況が続き、今年に入ってからも記者の首切りが止みません

その中で、どうしてポストだけに活気が溢れているのか。まあ、アマゾンのベゾス氏が2013年にオーナーになって、何かが変わったのだろうとは想像できますが、では、それは何か?ということになると私の中では曖昧でした。

でも、上記のような記事が続いた後に、たまたま、その曖昧さを吹き払ってくれる明解な記事に出会いました。MediaShiftに掲載されたものですが、元記事は、デジタルメディアコンサルタントである James Breiner氏が、自身のブログ News Entrepreneurs に書いたものです。

よりデジタルに向かわざるを得ない日本の新聞にも示唆に富んでいると感じました。ぜひ、これを拙ブログで紹介しようと思い、了解を取ろうと連絡先を探したところ、ブログにはクリエイティブ・コモンズライセンスの表示があり、趣旨を曲げず営利目的でなければ使用可となっていたので、拙い訳ですが全文を日本語で記録します。

<どのようにしてワシントンポストは勝ち続けているか>

ワシントンポストは、オーナー、ジェフ・ベゾスの世界制覇戦略をフォローしている。

米国や欧州の殆どの新聞とは対照的に、ポストはジャーナリストとエンジニアを雇い入れ続け、新たなテクノロジーに投資し、新しい市場へと拡大し続けている。ニューズウィークが最近、詳細に分析したように、ベゾスはポストのための世界的野心を有しているのだ。

アマゾンを作ったのと同じ方法で、ベゾスは、長期的にマーケットシェア獲得に向かう視点を持って、短期の財務的損失を許容することを明言している。

The Perfect Marriage?

それはビジネスサイドの話。ポストのジャーナリストにとっていいニュースは、受賞歴のある彼らの編集主幹マーティ・バロンとベゾスが新聞コミュニティの必要と欲求に役立つ高品質ジャーナリズムの創出と重要性を共に信じていることだ。

ベゾスは、最高のユーザーエクスペリエンスを生み出すことを確信している。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、ウェブの読み込みがあまりに遅いという読者の苦情に、ベゾスがいかに対応したかを詳述している。

彼は、デジタル版編集長にメールを送り、ページの読み込みをもっと早くするように−とりわけポストのトラフィックの70%を占めるモバイルについて−強くプッシュした。

ポストの主催したイベントでベゾスが語った。彼の目標は、ポストを偉大なローカル紙から、偉大な全国紙、そして偉大なグローバル紙に作り変えることだ、と。

More Readers Paying Less

その目標を達成するために、ビジネスモデルは変わらなければならない。

「我々は、比較的少数の読者に、一人当たり、比較的高額な料金を課してきた」とベゾスは言う。

「これに代わって、我々はずっと沢山の読者に、一人当たり、比較的少額の料金を課すようにする必要がある」

新しい戦略の一部として、ポストは、そのコンテンツをできるだけ多くのプラットフォームでシェアしている。ポストの全てのコンテンツを出しているFacebook Instant ArticlesからTwitter、LinkedIn、Snapchat、Pinterest、Tumblr、Google+、Instagramまでだ。

ポストのデジタル版編集長のエミリオ・ガルシア-ルイス(Emilio Garcia-Ruiz)は、スペインでのデジタル・ジャーナリズム・カンファレンスでのスピーチで、その戦略を説明した。

その考え方は、出来る限り沢山の人を集めて製品(記事)を”試し読み”してもらうようにする(ジャーナリズムでは、ソーシャルネットワークを通してシェアされる)。彼らが一つの記事に支払うように仕向け、それから、より価値の高い記事のrepeat buyer(常連客)になるよう仕向ける。それぞれのステージで客のプールは小さくなるが払いは多くなる。

ビジネス面でのカギは、じょうご(漏斗)の最上部のプールの拡大を続けることだ。これは、まさにアマゾンがやってきたことだ、とガルシア-ルイス。そして、ジャーナリズムの観点からのカギは、人々が何度も戻ってくるように、ベストジャーナリズムとベストテクノロジーを融合することだ。

Target:New York Times

現在までの成果は、伝統的なウェブ測定基準を用いるなら素晴らしいものだ。ユニークユーザー数で、2015年の10月から12月までNYタイムズを上回った。(その後、タイムズが盛り返した)

問題は、これがビジネスの結果に繋がったかどうかだ。ポストは株式非公開のprivate companyなので、財務状況を公開していない(のでわからない)。マーケティング担当重役はDigidayに「有料購読者は1年で145%の伸び」と語ったが、財務結果は述べていない。(注:ベゾス氏が2013年に買収した際にprivate companyとなった)

Hire,Not Fire

ポストの”デジタルが第一”への転換は、切迫感を持ったベゾスとバロンによって推し進められた。当時、全米の大手日刊紙はどこも、プリント読者の減少率は急角度だった。

同じ時期、過去20年でこれらの新聞は2万人のジャーナリストを削減した。全体の3分の1以上にあたる数だ。

これとは対照的に、ポストではベゾスが来て以来、100人を加えトータル700人となった。そして35人のエンジニアもだ。

これはウォール・ストリートの要求に応える必要のないprivate companyであることのアドバンテージの一つだ。

(昨年2月の)記者との全員集会で、ベゾスはこう説明した。彼の目標は、読者をより良く知る知るためにテクノロジーを用い、読者により貢献するためにその情報を使うのだ、と。

そして、こうも。「記録を残す新聞であるために、我々には、人材、金、我慢が必要だ。そして我々には、3つ全てが揃っている。(To be the paper of record we need talent, money and patience, and we have all three)」

The Future is Digital

多くの会合やインタビューで(例えばこれ)、バロンはベゾスのビジョンと、編集局の独立を尊重するベゾスを賞賛して来た。

バロンはベゾスと2週間に1回、1時間、電話で話し合う。編集幹部は半年毎に、アマゾン本社のシアトルに飛び、会合を開く。

ベゾスは、編集者の決定の邪魔はしないが、読者にクリックを促し、読ませる掘り下げた調査報道の方法を見つけるよう、編集者に強くプッシュする。

その結果、バロンは、編集コンテンツを生み出し、配信するためのいくつかの戦術を変更した。

現時点では、これは蜜月関係に映る:大富豪が低迷する新聞ブランドを財政難から救い、新たなテクノロジーに投資し、そのおかげで、ポストはデジタルジャーナリズムの新世界で戦えるようになった。

それぞれの結婚に関してもそうだが、問題は、蜜月がいつまで続くかということと、その後、どうなるかだ。

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