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企業の「のれんに腕押し」

「のれんに腕押し」とは押しても手ごたえがないことでありますが、企業には存在するのかしないのかわからない「のれん」を「こんなにすごいんだ」と大げさに正当化する傾向があります。しかし、投資家の目はこの手ごたえがない「のれん」に疑惑の目を向け始めたかもしれません。東芝やソニーといった著名企業が陥っているのれん地獄を少し覗いてみましょう。

のれんは企業を買収した際に発生しやすく、私は会計上の「脂肪分」だと思っています。つまり、買収する企業をカラダと置き換えれば頭脳や骨や筋肉など引き締まったカラダの部分を会計上「純資産価値」と称し、それを上回って支払った部分を「のれん」と称します。つまり、余計な「脂肪分」であります。なぜこのような余計なお金を払うのか、といえば買収の際、競合相手がいて価格が吊り上がったとか買収の際、相手の取締役会を説得させるための「色」が必要だったなど様々でありますが、往々にして株主がどれだけ「プラスアルファ」を貰えるか、という買い手側の足元を思いっきり見られることで発生するものであります。

但し、問題はこの「脂肪分」が国際会計上、償却できないというルールがあるため、いつまでたってもその買収した時ののれんが帳簿に残ってしまうことになるのです。実は私も7-8年前に社内のグループ会社のリオーガニゼーションを行い、一部のビジネスをほかの関連会社に移項させた際、「のれん」が生じてしまいました。そのビジネスをそれから5-6年後に売却した際、会計の処理でのれんを一括損失で計上することになるのです。売却額よりのれんが大きかったため、多額のロスをその年に計上いたしました。処理の方法が他にないのでやむを得ないということになりますが、のれんの恐ろしさとはこういうものかと改めて認識したのです。

さて、東芝にしろ、ソニーにしろ、巨額ののれんの処理が世の中を騒がせています。ではこの場合はのれんがどう処理されるのでしょうか?ウィキによると「…のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」とあり、のれんで計上されている価値がもはや企業運営上、現実的ではないと悟った時、一括処理するのであります。

ところが企業によっては損失を嫌がってこの不要な「脂肪分」を大事に抱きかかえ続けることもあるでしょう。東芝においてはウエスチングハウスの脂肪分は筋肉に転換できるぐらいの説明でありました。ソニーも1989年に買収したコロンビアピクチャーズの映画事業は一時、ソニーを救うぐらいの勢いでした。ソニーが赤字続きの際、「エレキ事業を補完する」とまでいわれ、ドル箱のイメージでしたが、突如、「損失」に切り替えたのです。

ここまでくると何をもってのれんの価値が遺棄したのか、客観性についての判断が要求されますし、意図的にそれを処理したり引き延ばしたりすることも可能であります。会計の話は別の機会に譲りますが、ソニーが映画ののれんを落としたことは何を意味するのでしょうか?

実は最近、「ネットフレックス」を試してみました。画質は「4K品質」を選択しました。大画面のテレビに外付けの音響システムをつけておりますのでこれでアメリカのアクション映画でもみれば引き込まれないはずはない、というものです。正に家で映画館にいるクオリティが楽しめてしまうのです。自宅で好きなワインを片手にリラックスして楽しめるとなれば映画館まで行き、上映時間を待ち、お金を払うハードルは異様に高いものになります。

もちろんネットフレックスが配給会社に支払うお金はあるはずですが、映画産業はハイリスクハイリターンのビジネスですので長期的にそのリスク許容度が下がってきていると判断したのかもしれません。

東芝については個人的には「悪質」としか思えません。不正会計で大騒ぎしていた頃、ウエスチングハウスののれんが一部で大きく取り上げられたのに会社側は「大丈夫」と言い切っていました。ところが資産の切り売りでどうにか債務超過を逃れ、会社が回復軌道に乗り始めたところで「やっぱりのれんに腕押しだった」として損失処理します。更にたった一年前に買収した原発関連事業の損失が天文学的数字に膨れ上がったのです。これをもって意図的、かつ、経営の怠慢と言わずしてなんといえましょうか?

同社の二部降格は確実、私は上場廃止で会社分割も視野に入ってくるとみています。

今回は東芝やソニーを取り上げましたが、日本企業による海外事業の買収は史上最高レベルです。2016年は635件で総額は10兆円を超えています。ところが多くの企業は買収後の運営に悲鳴を上げています。「こんなはずじゃなかった」と。特に文化圏が違う欧米とか南米あたりで苦戦が目立ちます。

私がかつて勤めたゼネコンがアメリカの大手ホテルチェーンを買収後、非常に苦しんだのを目のあたりにしました。私はこの買収は失敗だろうな、と直ぐに気が付きました。理由はアメリカ人を支配できる人がいないのです。言い換えれば日本企業はカネと技術だけがあるのです。アナリストは経営分析データを振りかざし、「消極的経営」だと経営陣を糾弾し、会社は見せかけの成長を理由に海外会社を買収させられます。情けないな、と思います。最近もカナダでそのような事例をお見掛けしましたが、仕組んだのは銀行と系列証券会社がフィービジネスをしたくてはめ込んだようなものでしょう。

日本企業にとって「のれん」はぶよぶよの脂肪ではなく、引き締まって真の意味での企業の資産となってもらわねば困ります。

では今日はこのぐらいで。

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