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「児童福祉法の改正」

今年の12月に養子縁組あっせん法が成立したことは先のブログで紹介したが、それに先だち6月にも、養子縁組に関わる重要な法律の改正があった。児童福祉法の改正である。

署名記者会見.JPG
児童福祉法改正で集まった署名についての記者会見

日本の特別養子縁組は長年300件台で推移してきており、この3年ほどやや増加傾向で2015年は544件である。しかしイギリスの養子縁組の年間の成立件数は約4,700件、アメリカは約11万件となっており、比較すると日本の養子縁組の成立件数は著しく低い。諸外国では養子縁組は子どもにあたたかい家庭を与える重要な福祉とみなされているが、日本では児童相談所の業務として明確に位置づけられてこなかったことが原因と言われる。

日本財団は長年、里親制度の推進につとめてきたが、2013年より高橋恵里子が中心となって特別養子縁組の普及啓発の活動を始めた。2013年5月にキックオフのイベントとして「すべての赤ちゃんに愛情と家庭を」シンポジウムを開催。続いて「社会的養護と特別養子縁組研究会」を実施して現状と課題を整理し、2015年2月には「日本の社会的養護と特別養子縁組制度への提言」をまとめた。その中で、養子縁組を国家が取り組むべき重要な児童福祉政策として位置づけ、民間団体を許可制とし、児童相談所や民間団体が行う養子縁組の実務を定める法律が必要と主張した。

その後、産経新聞「正論」への投稿や、塩崎厚生労働大臣への要望書の提出、4月4日を「養子の日」として定めてシンポジウムを実施するなど積極的な活動を展開してきた。今年の児童福祉法改正にあたっては、特別養子縁組の推進と乳幼児の家庭養護原則を盛り込むよう1万7千の署名を集めて記者会見を行い、改正を後押しした。結果として、改正児童福祉法では、子どもは家庭と同様の養育環境で育てることが原則となった。今までになかった養子縁組の相談支援が、児童相談所の業務として明確に位置づけられたことも大きい。今年の児童福祉法の改正と養子縁組あっせん法の成立により、当財団の主張はほぼ達成され、わが国において特別養子縁組を推進するための法律的な基盤は整ったと言える。

一方で、まだ残された課題もある。

まず専門性をもつ人材の育成と確保が急務である。児童相談所は虐待で手一杯で里親や養子縁組の委託まで手が回らないのが現状である。又、専門性をもたない職員が3年ほどいて異動してしまうことも多いと聞く。子どもの命を預かる児童相談所には、社会福祉士や臨床心理士などの専門性をもつ職員に限定して配置する必要がある。里親委託や養子縁組のソーシャルワークの研修も必須である。

また、厚生労働省は毎年「社会的養護の現状について」を作成し、里親託率の増加を促している。しかし養子縁組については、これまでその統計や県別のグラフなどが資料に含まれることはなかった。養子を育てている親にしてみれば、子育ての苦労は同じなのに里親のように金銭的な手当てはなく、しかも里親委託率にも含まれないということになってしまう。今後は家庭養護の一つの重要な指針として、養子縁組の統計を含む資料の作成と公表をお願いしたい。

普及啓発も重要である。予期しない妊娠で悩む中高生や、不妊治療をしている夫婦に、特別養子縁組という制度の情報を届ける必要がある。産婦人科でも制度の周知などに協力してもらえれば効果的なのではないか。

小さな子どもたちにとって家庭はほとんど全世界であり、そこで適切な愛情をもって育てられることは何よりも大切である。法律ができれば終わりではなく、日本財団はこれからも特別養子縁組や里親など、子どもが家庭で育つ制度の普及に取り組んでいく所存である。

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