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アメリカン航空に学ぶ「捨てる」勇気 - 森山祐樹(中小企業診断士)

 アメリカン航空は、新機種の737MAX機材で個人モニターは時代遅れであるとして導入しないことを発表した。また、ユナイテッド航空も一部の小型機で個人モニターの導入を行わないとしている。顧客ニーズの多様化の中で、短距離路線の機内サービスはどうあるべきなのか、アメリカン航空の選択と日本国内大手の動向を読み解いてみたい。

■個人モニターの効果と影響

 機内の個人モニターでは、映画やニュースの視聴、ゲーム、広告、機内サービスの紹介や機内販売での使用など、様々なコンテンツを利用することができる。しかしながら、個人モニターを搭載することで、シートは厚くなり、シートピッチが狭くなる。また、個人モニターを搭載することで、多くの場合、座席下にボックスが設置され、乗客の足元スペースを圧迫することにもつながっている。

 航空会社への影響としては、配線ケーブルと席数分のモニターを搭載することで、当然ながら重量増により燃油費が増加する。そして、個人モニターを搭載したシートを開発・購入するだけで、ケースによっては搭載していないシート価格の倍に跳ね上がるコスト負担が生じることになる。

■国内の短距離路線に求められるもの


 日本の短距離路線(国内線)に求められる機内サービスを考えてみると、沖縄やその離島路線を除き、ほとんどが1時間から1時間半のフライトである。この短時間の中で、機内エンターテイメントが使用可能な時間は30分から1時間少々である。これでは映画の提供は2倍速で見たとしても困難である。ゲームをやりたければ時代遅れな個人モニター搭載のゲームではなく、自分のスマホにある最新のものを選択するであろうし、機内Wi-Fiがあれば、ニュースや動画の視聴ニーズも満たされるであろう。また、国内線であれば機内販売も免税ではないため、モニターを活用した商品販売もその魅力が薄れる。
 
 そもそも、国内線を利用する顧客が求めている本質とは何か。それは、本来「移動」である。A地点からB地点に安全かつ効率的に移動するために運賃を支払っている。徒歩で行く、自転車で行く、自家用車で行く、バスで行く、電車で行く、飛行機で行く、この中(それ以外の選択肢もあるかもしれないが)で自身の時間と体力、経済力を勘案して移動手段を選択しているだけなのだ。
また、これらの移動手段の中で、かつ1時間程度の移動ケースで、個人モニターを搭載するケースは非常に稀である。1時間以上の利用が想定される新幹線でさえもモニターは搭載されていない。

■機内サービスの価格転嫁

 サービスとは、総花的になんでもあれば良いというものではない。利用者ニーズの本質を捉えたサービスや商品を提供し、その適正なコストのみが利用料金に転嫁されるべきであり、不必要なサービスは利用者コストの増加につながる改悪であることは認識をする必要がある。無料のサービスなど本来は存在しえないものであり、自身が不要と思うサービスや機能が搭載されている商品・サービスは、利用者が無用なコストを負担させられているということであり、その選択肢を検討しなおすことが必要である。

 大手航空会社は通常、様々な顧客の声を吸い上げるスキームを作り上げており、その声に応える仕組みを構築している。そのため、通常大手航空会社は、様々な要求(特に上位顧客のもの)に応え、そのサービスを利用しない顧客にまでそのコスト負担を押し付け、航空運賃の上昇を試みる。世界中にLCCが広がった一因は、提供される旅客サービス水準が利用者の求める本質や必要サービスを超過した過剰なサービスとそのコスト負担にあった。

 一方、日本国内の機内サービスに目を向けると、国内大手では国内線に電動シートを取り入れ、食事を充実させ、Wi-Fiの無料化等、サービスの拡充に余念がない。全日空・日本航空ともに新機材の投入を数年ごとに予定しており、今後、両社の新たなサービスの一手が、利用者の需要に資するものになるのか、それとも一部顧客の声に耳を傾け、他社との競合に目を奪われ、大きなコストを伴う過剰サービスが生み出されるのか。日本の空にも、利用者が求める本質を捉えた商品開発による、「何をやらないのか」を決断する勇気が望まれる。

【参考記事】
■地域航空が国鉄に学ぶべき理由(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49893178-20161031.html
■優秀が故のジレンマ「大企業のイノベーションへの挑戦」(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/50115391-20161130.html
■星野リゾートとリッツカールトンの戦略の違いとは(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49185987-20160729.html
■国内LCCの戦略に潜む思惑とは(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48967732-20160630.html
■フェラーリの戦略にみる企業価値経営(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47203706-20151215.html

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