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働き方改革実現会議の落としどころ

「ほら、いわんこっちゃない」という気分である。まだ最終的な結論が出たわけではないが、「働き方改革」の落としどころが見えてきた。
●<残業>「月80時間」上限、政府調整 19年度導入目標
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170125-00000005-mai-pol
●残業上限、月平均60時間案 繁忙期は100時間 政府調整
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12770778.html?ref=nmail_20170129mo

これでは「働き方改革」とは呼べない。法律の不備を「修正」しただけである。こうなることは、下記記事で指摘したとおり、予測できたことだった。
●「36協定」と「働き方改革」の議論は切り離せ
http://toyokeizai.net/articles/-/139795

「働き方改革実現会議」の論点を「36協定」にしてしまったことが最大の戦略ミス。「36協定」を含む労働基準法の目的は労働者の命および人権を守ることであって、女性活躍推進や少子化対策ではない。「働き方改革」の目的は女性活躍促進や少子化対策だったはずなのに、その時点で目的と手段がかみ合わなくなってしまった。

目的と手段を掛け違うことのリスクは「長時間労働是正のための署名キャンペーン」でも助長されており、そのことも指摘したとおり。ボタンを掛け違えたまま、世間の注目が「36協定」に集まってしまった。
●長時間労働撲滅キャンペーンに七割賛成、三割反対
http://ameblo.jp/toshimasaota/entry-12210666669.html

「36協定」の見直しで実現できるのはあくまでも労働者の命や人権を守ることまで。「36協定」を論点に据えた時点で、過労死ラインを踏まえて今回のような規定が盛り込まれることは極めて妥当な落としどころである。むしろそれ以外に落としどころはなかった。

ただしこれは本来「働き方改革」の文脈で一から議論すべきことではない。担当省庁レベルで即急に対応しなければいけないことであるし、そのための法案も、すでに野党が提出している。審議を見送っているのはほかでもない与党である。

女性の活躍や少子化対策という意味での「働き方改革」を掲げるのなら、「その先」を議論しなければ意味がない。だから、「36協定」の見直しについては「即急に改善が必要」という前提で論点化を避け、「私たちは今後1日何時間労働を基準とする社会を目指すのか」という議論にさっさと進むべきだった。

そのうえで、それを実現するためにどんな方法があるのかについて、タスクフォースを組み、慎重に議論を始めることを、次の段階に設定すべきだった。そこでは一律の法規制ではなく、業界ごと職種ごとの事情にあわせた対策を1つ1つ議論すべき。

たとえば、社員1人当たりの平均労働時間を減らすためには、企業は、(「お前ら仕事を効率化して残業を減らせ」と号令をかけるだけで結局社員の負担感を増すだけの方法を除外するとすれば、)人員を増やすか抜本的なシステム投資による業務改善をする必要が出てくる。いずれにしても企業にとっては一時的にでも利益を減らすことを意味する。

そこで、たとえばそのような具体的施策を打って労働時間を抑制した企業を対象に助成金を支払うとか期間限定で法人税を減税するなどは、検討に値するのではないだろうか。景気対策としてむやみに法人税減税するよりは、賢い方法だろう。このような次元の議論をすることこそが、政府が主導する「働き方改革」推進のあるべき姿ではないだろうか。

そんなことまで議論できるような時間的余裕も座組もなかったというのなら、「働き方改革実現会議」が最初から茶番であったということになる。さっさと野党の労働基準法改正案を審議すれば良かっただけのことを、あえて国民の前で仰々しく執り行ったという意味で、手柄の横取りと言われても仕方がない。特に野党を応援する意図はない。是々非々を言っているだけである。

今回の「これ」で長時間労働抑制の議論が終わることなく、次の次元での議論にすみやかに移行することを強く願う。

<現時点でのき論点について、わかりやすい参照記事>
●残業時間の上限規制<80時間>が検討されていることについての注意点
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sasakiryo/20170125-00066954/
●時間外労働<月100時間>を許容して「働き方」改革と言えるのか?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sasakiryo/20170128-00067086/

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