記事

トランプ大統領が否定する「グローバリズム」のもう1つの顔

■「保護主義」と「TPP」は相容れない

 トランプ氏が口約束していた通り、大統領に就任したと同時にアメリカのTPP離脱が発表された。一切、躊躇することなく大統領令に「永久に離脱する」と署名されたことからも、その本気度が伝わってくるが、「保護主義」を自身のモットーとしていた人物が「TPPに賛成」では筋が通らなくなるので、これはまあ当然の帰結と言うべきだろうか。

 最近では「自国第一主義」という言葉もよく聞かれるようになったが、この言葉に対しても否定的な見解を述べている人がいる。しかし、こんなのはトランプ氏に限った話ではなく、1国の代表としては至極当然の台詞だと言える。「自虐思想」に被れた日本だからこそ「自国第一主義」を否定する向きがあるのかもしれないが、世界中のどこの国でも、基本は「自国第一主義」であり、「自国第二主義」も無ければ、自国を否定するような「自国虐待主義」も無い。

 「自由競争」の名のもと、「グローバリズム」というものが無条件に礼賛され、世界中の市場を1つにさえすれば、全ての人間がハッピーになれるという思想が世界中を覆いかけたかに見えたが、ここにきて、その傾向に待ったをかける人物が出現した。世界広しと言えど、現実的にそういったこと(=世界経済の潮流を変えるようなこと)ができるのはアメリカ大統領をおいて他にいない。そう考えると、トランプ大統領の口から発せられた「保護主義」という言葉の持つ意味は極めて重く深い。
 我々は現在、時代の転換期に存在しているという認識を持ち、悪戯に危機を煽るのではなく、どんな非常識に思える言葉であっても、真摯かつ冷静に受け止めて考えるべきかもしれない。

「世界経済の平準化」のもう1つの意味

 ただ、トランプ大統領は「保護主義」を訴えてはいるものの「グローバリズム」を完全に否定しているわけではないと思う。「行き過ぎたグローバル化」は先進国の富を奪い続けることになるという単純な事実に気が付いたので、このまま「グローバリズム」を野方図に押し進めると自国を破壊しかねないという危機感を抱いたのではないかと思う。
 現在、ジョージ・ソロス氏がトランプ大統領と対立しており、見方によっては「グローバリズム」vs「ナショナリズム」という構図に見えてしまうが、少し誤解が有るように思える。

 経済のグローバル化というものもバランスが重要であり、「行き過ぎたグローバル化」は先進国の富を急激に奪うことになる。その現象は、「世界経済の平準化」という意味では否定するべきものではないのかもしれないが、あまりにも急激な変化というものは時に悪にもなる。「行き過ぎたグローバル化」の強要は、先進国に生きる人間(労働者)にとっては、ある意味で共産主義を強要されるに等しいことでもあるからだ。

 「グローバリズム」とは「世界経済の一体化(平準化)」を意味した言葉だが、その言葉は一歩間違うと「先進国の人間は発展途上国の人間のために犠牲にならなければならない」というような自虐的な思想に化けてしまう。グローバル化というものも、その置かれた環境と進行過程(スピード)によっては、善にも悪にも変化する曖昧な代物だ。

■否定すべきは「早急過ぎるグローバル化」

 物価も人件費も全く違う国々の市場を、ほとんど制御することなく混ぜ合わせることによって、世界経済に如何なる科学反応(経済変化)が生じたか? 先進国の労働者は豊かになったか? 発展途上国の労働者は豊かになったか?
 そのどちらも「イエス」ということであれば、「グローバリズム」は正しいということになるが、実際はどうだろう?

 物価と人件費が高過ぎて発展途上国とまともに競争できない先進国では、金融緩和を行い通貨安競争に明け暮れたが、それでも、どんどん物価の安い国が出現し、二進も三進もいかなくなった。物価と人件費が高い国に生まれた子供の全てが恵まれた境遇にあるわけでもないのに、生まれた時から際限の無い過当競争を強いられる。

 先進国の人間は、発展途上国で生産された安価な商品を購入することができるようになったが、それは消費者に一時的な陶酔を与えただけで、長期的には際限の無いデフレ現象を押し進めることになってしまった。このまま「行き過ぎたグローバル化」を放置しておくと、世界経済が平準化する前に、先進国の経済はその急激な変化に耐え切れず、挙って破綻してしまうかもしれない。
 「金持ちを貧しくしても、貧しい人が金持ちになるわけではない」というサッチャーの言葉通り、先進国が破綻すれば発展途上国も連鎖破綻してしまうかもしれない。そんな危機感を感じ取った人物がアメリカ大統領に就任したということであれば、世界中の人々から大いに注目されて然るべきことだろう。

 「緩やかなグローバリズム」は肯定すべきものだと思うが、「急激なグローバリズム」は否定されるべきかもしれない。トランプ大統領の登場によって、そんな当たり前のことに気付かされたような気がするのは私だけだろうか?

あわせて読みたい

「ドナルド・トランプ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    "保守化"を認められない老人たち

    城繁幸

  2. 2

    蓮舫代表「私の国籍は日本のみ」

    PRESIDENT Online

  3. 3

    注文を"忘れる"店 大反響の裏側

    フォーブス ジャパン

  4. 4

    不祥事続き崩壊に向かう安倍内閣

    大西宏

  5. 5

    室井佑月 新聞は支持政党表明を

    キャリコネニュース

  6. 6

    日本企業復権へ「40代定年制」を

    WEDGE Infinity

  7. 7

    結婚後に1番重要なのは衛生観念?

    キャリコネニュース

  8. 8

    狙われる50代60代小金持ちオヤジ

    山本直人

  9. 9

    SMAP独立組が狙う"ネットと中国"

    渡邉裕二

  10. 10

    北朝鮮が米との交渉で痛恨のミス

    高英起

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。