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【読書感想】ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか

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ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書)

ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書)

Kindle版もあります。

ネットメディア覇権戦争?偽ニュースはなぜ生まれたか? (光文社新書)

ネットメディア覇権戦争?偽ニュースはなぜ生まれたか? (光文社新書)

内容(「BOOK」データベースより)

不確実な情報、非科学的な情報、デマ=「偽ニュース」。本書では、偽ニュースを生み出す背景や構造を明らかにした上で、ヤフー、LINE、スマートニュース、日本経済新聞、ニューズピックスという5つのニュースメディアを中心に、スマホを舞台にしたニュースを巡る攻防を描く。偽ニュースは2016年に突然生まれたわけではなく、ビジネスとジャーナリズムの間で揺れ動くビジネスパーソンの戦いの歴史であり、現在進行系の物語である。

 ネットメディアの歴史と栄枯盛衰について概観し、まとめられている新書です。

 これを読むと、新聞やテレビに比べて「新しいメディア」だと思っていたネットメディアも、けっこう歴史を積み重ねてきたのだな、と感慨深いものがあります。

 それと同時に、これまで「有料」だったり「CMで稼いでいた」メディアの収益構造がネットによって変化しているのです。

 とはいっても、ネットでも多くは「広告依存」ではあるのですが。

 ニュースは無料で観られるのが当たり前にもかかわらず、「どこよりも早く、たくさん、面白い話題を提供しなければならない」。

 その結果として、そのニュースを取材し、伝えられる形にする人たちへの報酬はきわめて安く買い叩かれているのです。

 だからといって、Yahoo!に記事を配信しなければ、見にきてくれる人の数は劇的に減り、その「安い報酬」すら得ることができない。

 多くブックマークされるのも、「元の記事」じゃなくて、「その記事がYahoo!に転載されたもの」ですしね。

 そういう「ニュースのダンピング」が、ニュースの品質や信頼性を下げたり、「ステマ」にもつながっています。

 モラルだけの問題ではなく、「ステマやパクリでもやらないと、食べていけないほど安く買い叩かれている」という現状を著者は指摘しているのです。

 これは、ネットメディア側だけの問題ではありません。

 大手ネット企業ディー・エヌ・エー(DeNA)は、肩こりの原因が腰痛、といった非科学的な情報を大量に医療系キュレーション(まとめ)サイトのWELQ(ウェルク)に掲載して批判を浴びた。ネットを使いコピペで安価かつ組織的に「製造」された情報がグーグルの検索結果上位に表示されていた。上場企業が偽ニュースづくりに加担していたのだ。

不確実な情報、非科学的な情報、デマ、これらを本書では「偽ニュース」と呼ぶ。

 アクセス数を集めるには偽ニュースは最高のコンテンツだ。Guardian News and Mediaのキャサリン・ヴァイナー編集長は「虚偽のニュースは利益を生み、効率的なビジネスになっている」と指摘している。DeNAは、1本あたり数千円から数百円でかき集めてアクセスを増やし、2016年7〜9月期に15億円を売り上げた。

 偽ニュースが拡大したのは、ニュースの制作と流通の仕方が変わってしまったからだ。かつてニュースといえば、新聞やテレビが担うものだった。だが、ソーシャルメディアの登場で、誰もが簡単にニュースを発信できるようになり、ネットの普及によってパソコンやスマートフォン(スマホ)からニュースを見るようになった。

 この新書は、主戦場がパソコンからスマートフォンとなって以降のネットメディアの覇権争いを中心に書かれています。

 ダウンタウンの松本人志さんもしばしば口にするようになった「ヤフートピックス」とLINE、スマートニュース、ニューズピックスの、それぞれの戦略とネットでの「課金モデル」を粘り強く続けている日本経済新聞の闘い。

 「ネットのニュースは儲からない」とか「ヤフーニュースでは、コソボは独立しなかった」などと言われながらも、ニュースは、ネットでのキラーコンテンツであり続けているのです。

 著者は、ネットでニュースが「タダで読める」ようになった経緯についても説明しています。

 紙のメディアやテレビでは、メディアが「取材してニュースをつくる」のと、それを各家庭に流す、という制作・流通のすべての経路を握っていました。

 ところが、ネットではその流通をプラットフォーム(Yahooなどのポータルサイト)に委ねざるをえなかった。

 そして、ネットでは、そのポータルサイトに集中的に人が集まり、大きな力を持つようになってきたのです。

 そこで、既存のメディアは、ポータルサイトに「タダ同然」でニュースを売るようになりました。最初はとにかく「ネットでの実績をつくる」ことが大事だったし、それが新聞の売り上げに大きく影響することもなかったから。

 ところが、いつのまにか多くの人が「ニュースはネットでタダで見ればいい」と考えるようになってしまいました。

 情報が安くなったことは多くの人にとっては歓迎すべきことなのだけれど、お金と時間をかけて良質の記事を生み出しにくくなったし、「お金のため」の扇情的な見出しや記事もネットに溢れるようになりました。

 でも、いまさら「じゃあ有料にします」と言っても、顧客はなかなかついてこない。

 著者はこの過程を「ヤフーという毒まんじゅう」という言葉を使って説明しています。

 これ、本当に「言い得て妙」なんですよね、既存のメディアにとっては、まさにそんな感じだったんだろうなあ。

 2013年のリニューアル以降のヤフーのニュースの変化について。

 実際のところ、いくらバランスよく記事を配置しても、読まれるのはスポーツやエンターテインメントが半分以上を占める。政治、経済、国際など重要度が高く、既存マスメディアでは一面やトップニュースになるような記事は読まれにくく、スマホではその傾向がより強くなる。アルゴリズムで人気の記事を表示するようにすれば、偽ニュースや過激なニュースも交じるようになる。なにせ、それらはアクセスを稼ぐ。

 ヤフーニュースは、2014年6月にPCとスマホのアクセス数が逆転。2015年には、アクセス数が月間100億PVを超えた。スマホシフトを強力に進めた結果だったが、その陰で「最近のヤフトピは何かおかしい」という声が関係者の間で囁かれるようになる。過激なもの、芸能界のスキャンダル、といった記事が紹介されるケースが増えたのではないか。

 苅田(毎日新聞の記者歴があるヤフートピックス担当者)に聞くと「トピックスのバランスは以前と変わらない。だが、タイムラインに配信社以外の記事を交ぜたことにより、読者のイメージが変化したのかもしれない」と首を傾げた。

 既存マスメディアを中心に扱ってきたヤフーが、スマホシフトの中で扱うニュースが変わったことは確かだった。その象徴的サービスがヤフー個人だ。

 「個人の発信」をトップページに載せるというのは、ライブドアやBLOGOSが以前からやっていたことなのですが、「ヤフー個人」の影響力は大きかったのです。

 その一方で、「ヤフー個人」の発信者からの負の反響も少なからずあって、「ヤフーは個人の発信者をどこまで守ってくれるのか?」という不安の声もあがっています。

 新聞社やテレビ局なら、取材でダメージを受けた企業からの訴訟などへも社として対応するノウハウがあるのですが、個人の発信者は、企業からの「SLAPP(スラップ)訴訟」(大企業が個人や小さなメディア・団体に対して高額の訴訟を起こし、圧力をかける訴訟)から守ってもらえるのか?

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