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変わる企業不祥事対応-第三者委員会設置企業が減少傾向

先週、「企業不祥事対応のトレンド・・・」といった講演についてご紹介しましたが、顕著なトレンドのひとつに不祥事調査の傾向が従来と変わってきたことが挙げられます。10年ほど前、加ト吉さんの架空循環取引に第三者委員会が設置されたあたりから、企業不祥事を発生させた企業がリスク管理(もしくはステイクホルダーへの説明責任の履行)として第三者委員会を設置するケースが増えました。

とりわけ2010年に日弁連が東証さんや金融庁さんの要望に応える形で「企業不祥事発生時における第三者委員会ガイドライン」を策定したことをきっかけとして、会計不祥事が発覚した企業では日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会を設置して、発生事実、その原因究明、そして再発防止策を公表するというパターンが急増しました。しかし第三者委員会の信用性はかなり高まった一方で、その信用性を悪用するような弊害も出てきました。

みなさまご承知のように日弁連ガイドラインに準拠している、とリリースしながらも、その実質は経営者の責任回避のための「隠れ蓑」に使われているケース、いわゆる「なんちゃって第三者委員会問題」への懸念が強まり、民間団体による第三者委員会の格付け機関も動き出すようになりました。

ところで、この第三者委員会制度ですが、最近の傾向が少し変わってきているようです。これまで、会計不正事件を中心に、企業不祥事が発覚するケースにおいては第三者委員会を設置することが多かったのですが、最近になってどうも第三者委員会に代わって社内調査委員会が設置されるケースが増えているようです。

これは私が直接調査したのではなく、上記の格付け機関の事務局を務める東京の法律事務所さんが調査した結果でありますが、2015年1年間に不祥事調査を公表した45件のうち、第三者委員会を設置した企業が25件、社内調査委員会を設置した企業が20件でした。しかし2016年は合計41件のうち、第三者委員会は16件、社内調査委員会は25件と、大きく逆転現象が起きています。

つまり企業不祥事が発生した際に、第三者委員会を設置する企業が減少傾向にあります。その理由として私が考えますのは、ひとつは東証の企業不祥事対応のプリンシプル(2015年3月公表)の影響が挙げられるのではないかと。不祥事発覚時において、できれば第三者委員会の設置が望ましいとされていますが、状況によっては社内調査委員会の設置でも目的を達成することができるケースもあるといったことが浸透しました。

たとえば会計不正事件の第三者委員会の設置は数千万から一億円以上の費用が必要とされますので、企業にとっても「社内調査で済むか否か」は重大課題です。そのあたり「プリンシプル」(原則主義)の解釈には幅があるとみて、社内調査委員会を設置する企業の数が増えているように思えます。

また次の理由としては社外役員の急増による影響が考えられます。社外取締役や社外監査役さんが委員になって不正調査を進めることで、対外的には第三者と同等の公正性、独立性を委員会が確保できるのではないか、といった考え方が企業において浸透しているように思います(ただし、私自身としては社外役員が委員に就任することで、第三者委員会と同等の公正性が確保されるかというと、やや懐疑的です・・・もちろん個別案件にもよりますが)。

そして最後の理由として、社会的に「なんちゃって第三者委員会問題」がかなり浸透してきたことではないかと思います。このブログでも過去に何度か取り上げましたが、最近は会計監査人(監査法人)が、事実解明が緩い委員会報告書にはノーを突きつけることが増えています。また、社会的に話題となった委員会報告書に対しては、第三者委員会格付け機関が厳しい目でチェックして、そのこと自体が話題になりましたし、さらに「委員を選定するに至った過程まで説明せよ」といった社会的風潮も高まってきています。このように経営者が従来のように「不正追及に対する隠れ蓑」として第三者委員会を活用する傾向に歯止めがかかりだした、ということの顕れではないかと推測しています。

第三者委員会ブームが、弁護士の新たなビジネス領域を作出する一方で、せっかくの信用性に世間の疑惑の目が向けられることにもつながりました。上記のような第三者委員会報告書の減少傾向は、これに歯止めをかけるものとして、私は好意的に受け止めています。なによりも、このように厳しい目が向けられる中で、第三者委員会報告書の信用性が(厳しいチェックによって)再び高まることが期待されますし、また企業側においても、経営者自身が社内調査と第三者調査の比較基準を意識し、調査の公正性、独立性をどのように担保するのか自らの責任で判断することにつながるものと思われます。

このあたりは不祥事が発覚した企業に対する東証さんや金融庁さんの指導内容にもよりますし、もう1年ほど傾向をみたほうが良いかもしれませんが、今後も不祥事調査の品質は、社内調査であれ、第三者委員会調査であれ、よりレベルが高まることに期待したいと思います。

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