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製造業をどうやって国内に呼び戻すか? ドナルド・トランプの壮大な実験

先週金曜日、ドナルド・トランプが大統領に就任しました。

トランプは就任演説で「America First」ならびに「Buy America」というスローガンを打ち出しました。

これは製造業をどうやって国内に呼び戻すか? という壮大な実験に他なりません。

日本も、ものづくりにはこだわりのある国民性だから、アメリカがおっぱじめたこの試みは、たいへん興味深いテストケースと言えるでしょう。

トランプの試みは、大成功するかもしれないし、大失敗するかもしれません。つまりバイナリー(=二元的)な状況なのです。

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは「次期大統領が正しい政策を打ち出せば、米国のGDPは4%成長する!」と楽観的です。

その一方でピーターソン国際経済研究所のように「もしそれが貿易戦争を誘発したら、アメリカ経済は悲惨なことになる」と悲観的です。

下はその悲観的なシナリオ(橙色)で、米国のGDP成長率がどうなるか? の予想です。

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同じくそのシナリオでの失業率の予想です。

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つまりアメリカの社会はリスクを取ることで体質改善を試みているわけです。

現在の株式市場は、11月8日の大統領選挙でドナルド・トランプが勝利して以降、ずっとラリーしてきたので、当然、楽観的なシナリオを織り込みに行っています。

株式市場が織り込みつつあるこのシナリオが実現するためには、税制改革が実現する必要があります。

現在、まな板の上に乗っかっているのは1)下院共和党の示した「Better Way」案、2)トランプ案、のふたつです。

この両方とも、製造業をアメリカ国内に戻すためのキョーレツなインセンティブ、ないしは罰則規定が盛り込まれています。

具体的には下院共和党案は国境税調整という、輸入品に対する一律20%の実質的な関税を含んでいます。

またトランプの場合は中国製品に45%、メキシコ製品に35%の関税をかけることを提唱しています。

つまりどちらに転んでも、製造業のアメリカ回帰は、「待った無し」なのです。

しかし、すべての製造業がアメリカに戻ってくるとは考えにくいです。

アメリカで消費されている財のうち、とりわけ輸入比率が高いのはアパレルとコンピュータやスマホなどのエレクトロニック・デバイスです。

このうちアパレルは労務費がコストに占める割合が高いので、アメリカの縫製産業はバングラデシュなどに到底太刀打ちできないでしょう。つまりこの産業がアメリカに戻ってくるとは考えにくいです。

しかしエレクトロニック・デバイスでは手作業よりロボットなどのツールの果たす役割が大きくなっているので、ただ人件費が安いということは、だんだんカンケーなくなってきています。

一例として、半導体は付加価値のかたまりであり、容積当りの商品価値は最も高い部類に入るでしょう。このような部品は、アメリカに製造拠点を戻しやすいと思います。

いま世界の半導体売上シェアをみると、アジアの台頭が著しいです。

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これは台湾、韓国、中国などの伸長によります。

その少なからぬ部分はファウンドリー、つまり製造下請です。

ファウンドリーが競争力を持つためには、もちろん微細加工などの先端技術も重要だけど、雑多な顧客の多岐にわたる注文に応えてゆくために、どれだけテキパキとマスクの交換を行えるか? など、完璧さの追求一本槍とは、また別の、経営的な視点が必要になります。

おなじ「プロセス・テクノロジーへのこだわり」と言ったところで、インテルの「トコロテン方式」の大量なスルー・プットの中での歩留り向上の努力と、TSMCのプロセス・テクノロジーの極め方では、かなり心構え上の差があるわけです。

インテルとTSMCの世界観には、このように大きな隔たりがありますが、今回の製造業をアメリカに回帰させる試みの原点は、「製造業が空洞化したのは、もちろん人件費のようなファクターも影響しているけれど、それ以上に税制が国内生産に不利に働いたという側面があったのではないか?」という素直な反省にあります。

中国が豊かになるにつれて、たんに労働力が安いというのは「漸減する比較優位」です。

今回、アメリカが税体系の大改革に着手したということは、いずれ中国が直面しなければいけない運命にあった、moment of truthが、いきなり到来してしまったことを意味するのではないでしょうか?

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